BOXING
私をリングサイドに連れてって。

驚くべき才能!メイウェザー遺恨試合制す。

「スピード」「パンチの見切り」「フットワーク」「防御」
フロイド・メイウェザーがリングで見せる全てが
やはり驚きであった。
メイウェザーの試合を見るのは2度目であるが、
私がボクシングを現場で見て一番驚いたのは
ヘビー級の迫力や中量級のトータルなものではなく、
意外にも99年にメイウェザーの試合を
初めて見た時だったのである。

相手を置き去りにするようなフットワーク。
ロープをわざと背負い、さらにはコーナーにも下がり
相手に踏み込ませておいて、ひらりと逃げてしまう。
上体を柔らかく使い、相手パンチを空転させる。
スローモーションで見ているかのように
相手の必殺パンチを数センチで避け即座に攻撃する。

これらは「才能」もしくは
「勘」の部類としかいいようがなく、
誰でも練習すればできる、というものではないのである。
もちろん練習していないわけではなく
「才能+練習」の賜物であるのだが。


ライト級最強!メイウェザー(左)

西岡選手が鮮烈な1RKOで見事復帰を飾った
マンダレイベイ・イベンツセンターのリング、
その日のメインイベントは
WBC世界ライト級タイトルマッチ
「フロイド・メイウェザー対ホセ・ルイス・カスティーヨ」である。

黒人独特のスピードと勘を備えたメイウェザーと
典型的メキシカンでプレッシャーと手数で
相手を仕留めるカスティーヨ。
典型的な「ボクサー型」対「ファイター型」である。

4月20日の初戦では、
序盤スピードで圧倒したメイウェザーが
後半カスティーヨのプレッシャーに晒され
打ち込まれたものの
薄氷の判定勝ちを収めている。
あのメイウェザーをそこまで追い込むとは
カスティーヨの攻撃力、
スタミナ、粘りは想像以上のものに違いない。
今回は、因縁の再戦、そして世界ライト級最強を決める
戦いとも言っていい。

ボクシングでの再戦は、より研究した方が勝つという。
今回もその通りであった。
しかし勝敗もさることながら
改めて両選手のレベルの高さ、
技術の高さに圧倒されてしまった。

初戦、試合後半に打ち合いに持ち込まれ
苦戦したメイウェザーは徹底して打ち合いを避ける。
ライト級随一のプレッシャーと連打を誇るカスティーヨも
メイウェザーを追い続ける。
しかし今回優ったのはメイウェザーであった。

持ち味の「スピード」「パンチの見切り」「フットワーク」
「防御」をフルに活かし、見事に逃げ切った。

圧巻だったのはパンチの見切りだ。
カスティーヨ渾身のパンチを続々と外す。
あたかも某ビールの山崎努&豊川悦司CMの
スローモーション映像を見ているかのように
見事に正確にそれも僅差ではずす。

輪をかけて凄かったのが、ロープ際を使った動きだ。
ボクシングでロープ際、コーナーは危険とされる。
理由は簡単で動く範囲が狭くなるからである。
通常だと後、左、右と3方向に回避できるが
ロープを背負うと左右方向にしか逃げることができない。
さらにコーナーに入ってしまうと左右とも45度と角度が
さらに浅くなるので逃げることは難しくなり、
ブロッキングやクリンチしかない、
いわば地獄の一丁目なのである。

序盤3Rまでは足を使って至近距離を避け、
鋭いジャブと左リードブローで試合のペースを取る。
息が上がってきた4Rからはロープにもたれ、
一発を全て避け、微妙に距離を調整し
強いパンチは全く受けなかった。
コーナーに入っても相手のパンチを見て
急所をガードしピンチを招かなかった。

カスティーヨ相手にロープやコーナーを背負うのは
自殺行為なのだが、それを逆手にとり
見事に試合を制した。
後半勝負なはずのカスティーヨも
素晴らしいスタミナと手数だったが、
パンチはことごとく空転し、
ロープやコーナーに詰めても手数だけで
効果的なクリーンヒットは産み出せなかった。
詰めたというよりもむしろ
前に出さされたといった方が良いだろう。
いらだち始め、ローブローや頭などの加撃も繰り出した。
10Rからはさすがにスタミナとスピードも落ち
狙い撃ちされた。


カスティーヨは鼻血を出しながらも
攻撃を続けた


それでも最後まで慎重だったメイウェザーの完勝だった。
攻撃もほとんどが2発までで、すぐ動き、
正面で打ち合う場面を作らなかった。
しかしながらアメリカの観衆は打ち合いを好むため、
メイウェザーほどの才能があっても、
計算されただけの試合運びは
あまり好きにはなれないらしい。

それでもメイウェザーのこの試合の報酬は
2.4ミリオン(約2億9千万円)。
リングサイドのチケットが$300(約3万8千円)。
アメリカという国はやはり奥が深い。

なおこの試合の模様はWOWOWで1月に放送予定です。


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2002-12-11-WED

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