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私をリングサイドに連れてって。

鮮烈1RKO!西岡ベガスで復帰飾る!

ボクシングのメッカ、ラスベガス、
マンダレイベイ・イベンツセンターのリング。
フロイド・メイウェザーやウラジミール・クリチコといった
名だたる強豪を目当てにきた本場の観衆は
「まさか」というどよめきで
そのスローシーンを場内モニターで見ていた。

パナマのペレス選手の右ストレートを
上体を若干スウェーさせて避け、
即座に左ストレート一閃。
ペレス選手は一瞬止まり、足をもつれさせ
リングロープにもたれるように倒れた。
軽くみえるが、ダメージが100%残る切れの鋭いパンチ。
相手のパンチを一発も喰っておらず、
オープニングヒットで相手を沈めた。
1R 1:32見事なKO勝ちだった。


得意の左で見事KOを飾った西岡選手

日本バンタム級が世界に誇る西岡利晃選手が
アキレス腱を痛め、全てを白紙にしてから約1年。
本当に見事すぎるほどに復帰の試合を飾った。

ウィラポンを苦しめた西岡選手とはいえ、
怪我とブランクを抱え、
この試合に対する不安要素は相当あった。
痛めたアキレス腱の状態、1年3ヶ月ぶりの試合という、
肉体的そして試合勘という
実戦以外では測れない部分。

そしてラスベガスという舞台である。
良い面ばかり浮かぶかもしれないが、
そこに潜む危険要素はかなり大きい。
が、得るものも大きい、両刃の剣なのだ。
まずは、海外での初試合というコンディションの問題。
そして大舞台というメンタル的な要素。
まして今回は西岡選手の試合が
世界への国際映像のオープニングマッチ。
つまり、アメリカでも価値を認められた大事な試合であり、
従って相手も決して簡単に倒せる訳などなく、
苦戦は当然、しかし勝てば倍のものを得るという
実は大きな賭けでもある。

怪我やブランクが無くても簡単なことではない。
相手はパナマのベテラン、ペレス選手。
世界レベルとも何度も手合わせし、勝利はないものの
KO負けはほとんどない、手数の多い、
イヤなタイプのボクサーである。
25勝12敗21KO、25勝のうち21KOと
パンチ力も警戒が必要だ。

リング入場後は普通の様子だったが
日本で見せていた自信満々の表情はどこにもない、
ただ目の前に集中している、
そんな静けさを感じることができた。
しかしゴング直前、西岡選手はジャブの軌道を
ゆっくりと確かめるように何度か繰り出した。
この動きはタイソンがルイスと戦うゴング直前に
行ったものと同じである。
やはり実戦から遠ざかっていた不安なのか?
でなければ、何かを払拭するような
まじないのようにも見える。
世界レベルのボクサーでもリングで感じる
「恐怖感」なのだろう。

しかしゴングが鳴った後は冷静だった。
お互い軽く足を使い、フェイントの掛け合いで様子を伺う。
非常にゆったりとした出だしである。
お互いのパンチ交換が全くないと思った瞬間の
完璧な左ストレートで試合が終わってしまった。

試合後本人は
「ああ終わっちゃったなという感じ。
 もうちょっとやりたかった。
 ラスベガスのリングは
 楽しみと不安が一緒で何ともいえなかった」
と冷静に分析していた。
敗れたペレス選手は
「体が温まる前に左ストレートを
 もろに喰って効いてしまった。
 西岡のパンチは強烈だった」


試合後も笑顔は見せたが終始冷静

両刃の剣ともいえる大舞台で最大の戦利を上げたが、
欲を言えば、試合後半までのスタミナや踏み込み、
南米系独特のリズムと手数にどう対処するか
試合の流れが見て見たかった。
しかし後半勝負というシナリオを描いていた
歴戦のベテラン、ペレスに
全く試合をさせなかったということは、
非常に評価できる内容でもある。

見事な勝利を飾った西岡選手だが、
早ければ来年3月頃、3度目の世界挑戦を予定している。
標的はもちろん対戦成績1敗1分のタイ最強の
ウィラポン・ナコンルワンプロモーションである。
辰吉丈一郎から奪ったタイトルをいまだに持っている、
日本には因縁の深いチャンピオンでもある。
西岡選手の世界への挑戦が
ラスベガスのリングから再び始まった。


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2002-12-10-TUE

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