BOXING
私をリングサイドに連れてって。

デラ・ホーヤ見事に復活!
宿敵バルガスにTKO勝ち!



凄い試合でした。
会場の雰囲気といい、試合内容といい
歴史的なものといってもいいと思います。
「WBA・WBC世界S.ウェルター級タイトルマッチ
 フェルナンド.バルガス×オスカー・デラ・ホーヤ戦」

は9月14日(土)、
超満員のマンダレイ・ベイ・イベンツセンターで行われ、
ゴールデン.ボーイ、デラホーヤが
見事な復活を遂げました。

デラ・ホーヤのファイトマネーが
推定14millon(約17億円)、
バルガスが推定6millon(約7億円)という
考えられない規模のビックマッチは、
その60%が$1200(約14万円)というチケットで入場した
観客を裏切らない、素晴らしく高度な、
間違いなく今年世界で一番の
ボクシングの魅力を満載した試合になりました。

ラスベガスの下馬評はデラ・ホーヤ圧倒的有利。
特にスピードと大試合の経験で
バルガスは及ばないというものでした。
前予想不利のバルガスは野性味のある強打とパワーで
いかにデラ・ホーヤを捕まえるかにかかっていました。

試合はこの内容よりも
さらに高度なレベルで展開されました。

入場は両者とも表情は硬く、緊張感が伝わってきます。
メキシコ国旗色で彩られたガウン、メキシコ音楽で入場の
バルガスに対し
デラ・ホーヤはメキシコ国旗色にアメリカ色、
そして星を纏ったガウンで登場、
音楽はクィーンで始まり、メキシコ音楽に変化しました。
ここでも「メキシコ対アメリカ」という図式が
明確になります。
9月16日のメキシコ独立記念日を前に
ヒスパニック系の観衆を中心に
ブーイングと大歓声を送ります。

バルガスサイドは伝説のメキシカン、
フリオ・セザール・チャベスも同行し、
会場はいやがうえでも盛り上がります。

そしてボクシング史でも非常にレベルの高い、
素晴らしい戦いのゴングが鳴りました。

◆試合はやはり「闘牛場」そのままだった。


「執念」といってもいい強引さで
デラ・ホーヤを捕まえにかかるバルガス。
一方デラ・ホーヤは
ジャブのスピードと切れで相手を威嚇し、
隙を見て右ストレート、必殺の左フックを繰り出し、
なお且つ足と防御を使いペースを作ってゆく。

両者の高い能力が正面から激突する。

1R デラ・ホーヤのジャブが冴える。
しかし拍子でバランスを崩しバルガスの連打を許す。
ただしガードとロープと上体を動かし
最低限のダメージにとどめている。


デラ・ホーヤ(右)の左がバルガスを捕らえる

2R デラ・ホーヤのジャブが素晴らしい。早く的確。
瞬時に2発繰り出されるジャブの素晴らしさは
世界でもトップだろう。
バルガスも必死に策を練るが
どうしても喰ってしまう、それほど完璧な左ジャブだ。

3R ジャブに対し距離を縮め、
ラフながら打ち込むバルガス。
右ストレートがデラ・ホーヤに襲いかかる。

4R デラ・ホーヤが再び距離をとり
左ジャブと右ストレートを中心に
バルガスを的確に捕らえる。

5R 今度はバルガスが右ストレート中心に組み立て、
クリーンヒットを奪う。

ここまで全てのラウンドで主導権が変わっている。
お互い最高の攻め、防御を試み、
相手の繰り出すパンチや動きに合わせ、
毎ラウンド微調整をしてペースを変えている。
一流同士の戦いで
こんなに目まぐるしく支配が変わる試合を
近年見た事がない。

「デラ・ホーヤの左」対「バルガスの右」だ。

6R デラ・ホーヤが軽快な動きで
力を抜いたジャブで主導権を握る。
バルガスが右目周辺をカットする。

7R デラ・ホーヤの左ジャブは止まらない。
そこに右ストレートも放ち、
バルガスの頭が揺れるほどの
クリーンヒットが産みだされる。
このラウンドでバルガスのダメージが徐々に溜り、
動きに影響しているのでは、と印象が残った。

8R バルガスが鈍くなる。
ダメージの蓄積か、強引な攻めでスタミナが切れてきたか。
どうしたバルガス!
そこに面白いように
左ジャブと右ストレート当てるデラ・ホーヤ。

9R バルガスがボディ攻撃に切り替え前進する。
今度はデラ・ホーヤの動きがガクリと落ちる。
足を使い逃げるが、手打ちのパンチだけでは
バルガスを止める事ができない。


バルガス(奥)はボディで反撃

そして運命の決着へ向けて時間はゆっくりと進んでいく。

ボディ攻撃を嫌がり、足を使い避けるため
軽いパンチしか出せないデラ・ホーヤ。
有利だった形勢がバルガスへと傾いてゆく。
しかし距離が詰まった一瞬、
デラ・ホーヤの鋭い左アッパー気味のフックが
バルガスの顎を直撃。
バルガスが脱力し、一瞬のうちに揺れた。
足もと膝がガクガクとなり10R終了。

バルガスが60秒でどれだけ回復するか?
しかしデラ・ホーヤは余力充分のように見える。

そして運命の11R。
デラ・ホーヤ必殺の左フックがバルガスを遂に捕らえた。
バルガスたまらずダウン。
そこからが圧巻だった。
立ち上がったバルガスに対し、嵐の15連打。
無酸素ラッシュで棒立ちになるバルガス、
コルテスレフリーが大きく手を振り試合終了を告げた。
11R 1:48、
宿敵バルガスを最高の形で葬り去り、
デラ・ホーヤは復活を遂げた。

予想はしていたものの、デラ・ホーヤに対し
正面から向かっていくことは非常に危険だった。
試合前バルガスは「やるか、やられるか」と
戦術を無視した暴力的な言葉で試合を語った。
世界トップレベルで
そこまで無謀な突っかかりでデラ・ホーヤに挑む
バルガスに無類の魅力を感じるファンは多数いたはずだ。
残念ながら結果は悪い方になったが、
バルガスの戦闘性を充分堪能することが出来た。
「顎」の打たれ弱さを露呈してしまったのが残念だが。

デラ・ホーヤは凄かった。
前に出てくる相手にジャブで出鼻を挫き、
隙を見ての右ストレート、近距離でのアッパー、
そして必殺の左フック。
試合中の調整も完璧に行い、
デイフェンスも高い集中力を守りきった。
1年3ヶ月のブランク、29歳という年齢、
トレーナーの変更など様々な壁を乗り越えての完勝だった。

聞くところによるとデラ・ホーヤの口座には
120millon(140億円)の預金があるといいます。

ボクシングはハングリースポーツといいますが
デラ・ホーヤには無縁なのでしょう。
ならばデラ・ホーヤという選手は一体何者なのでしょう。
生まれもっての天才なのかでしょうか?
私はこう思いました。
現代のボクシングの神に最も近い存在だと。
神話的な遺伝子が宿っていると。
私が見てきた中で、それほど何をとっても
素晴らしいものでした。

今後は6階級制覇、そして負けたままの
モズリー戦を見据えての路線となるでしょう。
ゴールデンボーイは一体どこまで進化してゆくのか
非常に楽しみです。


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2002-09-17-TUE

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