BOXING
私をリングサイドに連れてって。

UFC現地初体験!まさに本物だ。

UFCを現地ラスベガスで初体験しました。
その印象は「まさに本物」です。

今回は出発が梅雨直前だったためか、
サンフランシスコが寒かったのか、
ラスベガスが異常に熱く感じました。
30度を超える気温と熱風(暖房の強風!)が
頬を吹き抜ける感覚は異常なものです。
その反面、カジノ内でも短パンにTシャツという
非常にラフな感じもまた、ベガスらしいのです。

今回のUFCは本大会ではなく、ミニ大会という
急遽組まれたイベントでしたが、
アメリカ発祥のリアル格闘技エンターテインメントとして
その魅力を充分堪能することができました。

メインの選手は、ビクター・ベウフォート。
ミドル級王者のブスタマンテや
プライド王者ノゲイラと同門であり
日本のマットでもお馴染みの
ブラジリアン柔術の強豪です。
実は彼は99年10月のブラジルでの大会で
プライドのミドル級を席巻している
ヴァンダレイ・シウバを
44秒驚愕パンチKOで屠っている、
知名度以上の実力者なのです。

対戦相手はチャック・リデル。
日本マットに上がったこともあり、この所調子を上げている
打撃系中心のアメリカ人選手です。

会場はベラージオ。
コモ湖畔をイメージした
イタリアイタリアした雰囲気を持つ、
格闘技イメージとは程遠い
ベガスでも最高級のホテルです。
こんなギャップもラスベガスならではなのでしょう。

ボールルームと呼ばれる後楽園ホールを倍にした位の部屋に
あの八角形、オクタゴンと呼ばれるリングがありました。
TVで見るよりも小ぶりで、
リングというよりはTVセットのようで、
幾多のハードな試合が行われたとは思えず、
ここでもギャップを感じます。
3000人くらいのキャパでしょう、非常に見やすい会場です。
チケットも$25〜$150と
エンターテインメント・ベガスとしては
安めといっていいでしょう。

しかしイベントが開始されると雰囲気が一変します。
口笛、指笛が会場を響き渡り、レーザービームとスモークが
どこまでも明るい乾いた感じに会場を演出します。
この日の予定は全7試合。
勉強不足のため大半の選手の情報がなく、
そのため客観的に見ていました。


金網の迫力は圧倒的でした

ここからがUFCの本領発揮でした。
試合が始まると、客の騒ぎ方が半端ではないのです。
特に打ち合い、タックル、そして馬乗りの
マウントポジションになった時に絶頂を迎えるのですが、
この時の雰囲気、迫力が
日本とは全く違ったものだったのです。
私もプロレスを含む日本格闘技のイベントを
現場で多数見てきましたが、
UFCというのは明らかに異質です。
日本でも大歓声や地鳴りのような
突き上げるものはありますが、
もっと急に叫びが上がるような
甲高いボリューム感があるのです。

それはTKこと高阪選手が以前語ってくれた、
「乾いている」という言葉に言い尽くされています。
そういう意味では日本は「湿っている」という
表現があてはまります。

この日はセミまでの5試合に関しては
観客はどの選手が勝っても良かったのだと思います。
彼らに必要だったのは単純にKO勝ち、
そのKOに繋がる残酷なまでの顔面攻撃であり、
顔面攻撃につながるタックルやポジションのみなのです。
もちろん関節技の妙技にも歓声は起こりますが、
圧倒的支持を得ているのは顔面攻撃です。
それを限りなく明るく叫ぶ観衆。
もちろん中には両手で頭を覆い、
しかめっ面をしている女性もいましたした。
しかしその逆に拳を振り上げ叫んでいる女性もいました。

そんな雰囲気に圧倒されているうちに
あっというまにメインイベントです。
ライト・ヘビー級挑戦者決定戦と銘打たれたこの試合、
ベウフォートの楽勝と思われました。
しかしリデル選手もさすがに実力者で
試合はそれまでのものと違い、
実力者同士の緊張した空気が
ひしひしと伝わってきました。
そして誰もが目を疑う場面が3Rにやってきました。
それまで試合を支配していたベウフォートに
リデルの必殺の右フック一発が当たり
あのベウフォートが思わず尻餅をついたのです。
結局、その後を支配したリデルが
逆転の判定勝ちを収めました。

まさかシウバをKOしたベウフォートが
なじみの薄いリデルに負けるとは!!
しかしこれがUFCなのでしょう。
たった一発で実力者も転落するのです。
全試合に渡ってリングから伝わってくる緊張は
これまでの私の体験にないものです。
同時にリアルファイト、闘志剥き出しで
ゴングとともにラッシュしてくることを厭わない
体力で優る外国人に比べ、
受けやペース配分が得意な日本人が勝つには
非常に難しいという印象もあります。

しかし日本人には技術があります。
敗れはしましたが、5月の大会でTKが見せた返し技や
TKシザースといった高度な技を使う選手は見当たらず、
パワー、スタミナ、体力面の強化を重ねれば、
頂点を極めるのも可能と思います。

そして機会があればぜひ本場での観戦をお薦めします。
ただしリアルファイトです。
非常に厳しい残酷すれすれの場面もありますが
それがUFCであり、
客のパワーもアメリカそのものなのです。
真剣勝負の中にある、過剰なほどの明るさとドライさ、
砂漠の不夜城ラスベガスと完全にマッチした
究極経験ができるはずです。


ミドル級チャンピオン、マット・ヒューズ。
この気軽さもUFCの魅力のひとつ


WOWOWではこのラスベガス大会をダイジェストで
7月7日午後3時からの無料放送で、
7月14日にはイギリス大会の模様
午後10時30分から放送いたします。


ご意見はこちらまで Boxnight@aol.com

2002-07-03-WED

BOXING
戻る