BOXING
私をリングサイドに連れてって。

おだ奮闘リポート(その4:いよいよタイソン復帰戦!)


10月23日(土)

いよいよ本番当日です。
打ち合わせも終え、MGMに入ると会場入り口は
前日とうってかわって人でごった返していました。
セキュリティも厳しい。
やはりくさってもタイソン!を痛感させられました。

会場は1万4千人収容に設定されました。
横浜アリーナ満員で1万8千人ですので、
この短期間で立ち上げたイベントとしては
異例の集客でしょう。
不人気説、凋落説いろいろありますが、
基準がハイパーなので
そういう物差しになってしまいます。
悪目のニュアンス方がセンセーショナルなので、
記事になりやすいこともあるためです。
ということでここでもやはり、タイソンおそるべし。

私たちWOWOW放送部隊は
ホスト局アメリカケーブルテレビである
「Show Time」
(イーッツ ショー タイムというリングアナウンスの
あれです)
のすぐ後ろに、
つまり前から2列目に陣取り世紀の実況をするべく、
タイソンの試合を待ちました。

いざ試合です。
やはり観客はタイソンを待っているのです。
(もちろんいろいろな意味がありますが・・・・・)

いやいやタイソンはやはりただものではありません。
またまたやってくれました。
「見逃した」という人にために念のため説明します。

1R終了ゴングが3回鳴ったところで、
もみ合い中のタイソンが左フックを放ち、
ノリスはダウン。
その後コーナーに戻りました。
レフリー、リチャード・スティールは
タイソンに2ポイント減点を指示。
試合続行かと思った矢先にノリス陣営のアピールがあり、
コミッションを交えて審議の結果
「1R終了ノーコンテスト」
という裁定になりました。

私たちはリングで起こった事、決まった裁定について
どうこうという立場ではありません。
放送席で動向を見守っていた限り
1R終了直前から以下の事が目の前で起こりました。

・タイソンはゴングが鳴った後に左フックを出した
・ノリスはあるいてコーナーまで帰った
・ノリスはコーナーに帰った直後は、
 特にセコンドに何のアピールもしていなかった
・その直後、ノリスのマネージャーがリング下で
 激しく「止めさせろ」と叫び始めた
・ノリスセコンドがレフリーにクレームをつけに行った
・タイソンはニュートラルコーナーで
 セコンドからコンビネーションの指示を受けていた
 1、2から左フックのコンビネーションです
・レフリーがコミッションを呼んで協議し始めた
・ノリスは右ひざを痛めたと言った
・ノーコンテスト裁定がアナウンスされた

ということです。あくまでも事実だけですが、
私にはノリスのセコンドが
ダメージをアピールさせ「止めさせた」ように見えました。
もちろんゴング後に打ったのはタイソンですので
その行為を肯定しようとは思いません。
またノリスが「本当」にひざをひねったならば
仕方のないこととも思います。

この件は米時間、月曜日に
コミッションがテープを見て判断し
扱いを決定する予定です。
話によればノリスのファイトマネー80万ドル
(およそ8800万円)
は支払われる予定ですが、
タイソンの10ミリオン(およそ11億円)は
その決定がでるまで凍結する、ということでした。

しかしKOを心待ちにしていた私たちは
正直「またか!」と思いましたが、
冷静に試合を見直してみると、
タイソンの動きがさらにシャープになってきている方に
今後を見出します。
確かにバランスは今一つの面があります。
しかし体や頭のふり、そして必殺の左フック、
そして相手を倒そうとする強い意志は
やはり「動物的」です。
それゆえに行動に衝動的な要素が
多々あるのも事実ですが・・・。
こういう事象でまた一般的に有名になってゆく
この皮肉・・・。
これも星としかいいようがないでしょう。

今後は今回の正式は裁定が出てからの話になりますが、
ノリスとの再戦、ホープ ブリッグスとの試合、
またヨーロッパの破壊王
ビタリ・クリチコからもラブコール、
そして11月の統一王者への挑戦など
ビックマッチの噂が絶ちません。
トラブルはそれとして、
選手としてはそれほど魅力があり価値があるのです。
今後もWOWOWは
やはりタイソンを見守っていきたいと思います。
それにしても常識では考えられない男、
それがマイク・タイソンなのです。

昨日(米時間、金曜日)のハメド戦は
さながら「ハメド!プロレス戦を制す」
とこっちの新聞に載るほど、荒れた試合でした。
特にクリンチがひどく、試合としては
「つまらん」「卑怯だ!ハメド」と
感じた人もいるのではないでしょうか?

これは逆にソトがハメドを研究した証拠です。
ガードをあげての攻撃を徹底防御し、
試合を組みたてる作戦を使ったのです。
ただしガードを上げたため、
本来の手数が減ってしまい
ポイントとしてはハメドの優勢が
評価されたということでしょう。
しかし2回も減点されるのはちょっといただけません。
また相手を担ぎ上げ、投げたことも
誉められる事ではありません。
反則負けという場合もあります。

解説のジョー小泉さんは、
ソトは「ガードを上げすぎたため
パンチがスムーズにでなかった」、
ハメドは「師匠であるブレンダン・イングルの教えである
トリッキーボクシングの実践練習が
彼と別れたことで足りなくなった事。
そしてオーソドックススタイルに傾きつつあるためだ」
といわれました。
(もちろんテレビ画面を通しての所見ですが)

浜田さんは
ソトは「ハメドのいやがることはマスターしたが、
勝つ方法まではマスターできなかった」ということでした。

今回のハメドは出来も悪く、
良いところもあまり見られませんでした。
ただし元々持つ運動能力やスピードは
人並はずれたところがあります。
やはり「勝つ」には
非常に能力の高い選手でなければ難しいでしょう。

ただしもっとクリーンな
ファンの喜ぶ打ち合いを見たいというのが
みんなの共通意見でしょう。
それが格闘技の原点です。

ただし入場は引き付けますねぇ。本当に。
デトロイト、モーターシティとモータウンのコンセプトを
見事に感じさせる演出でした。
今後は試合これまでのようにスリリングなハメドを
見せてくれることを期待したいと思います。

ボクシングはやはり何があるかわかりません。
だから面白いものなのです。

ということで2日連続のビックマッチのレポートは
本日でひとまず終了します。

といっても来月、11月14日(日)
WBA・WBC・IBF世界ヘビー級王座統一戦
イベンダー・ホリフィールド対レノックス・ルイスが
再びラスベガスで行なわれます。
次回もレポートを現地から行なおうと思います。

WOWOWスポーツ部
小田真幹

1999-10-25-MON

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