冒険王、 横尾忠則。   横尾さんの展覧会で、横尾さんにお会いしました。 「‥‥あなたという人は!」と 何度も叫びそうになりました。すごいです。 さぁ、みなさん。ご本人といっしょに 横尾忠則さんのすばらしい冒険の記録を 見て回りましょう。
006 ま、古いセンスですよ。
 
糸井 これは、雑誌「話の特集」の
カバーデザインですね。
あの平野威馬雄(ひらの いまお)さんの表紙は
記憶にあるなぁ。
平野威馬雄さんというのは、
平野レミさんのお父さんです。

横尾 フランス文学者ですね。
こうやって並べてみるとわかるけど、
この雑誌は毎月、
タイトルの書体を変えたために、
毎回始末書を書いて
取次店に謝りに行ってました。
「次は守ります」と言いながら、
またやっちゃうわけだからさ。
糸井 たしかに毎回、タイトルのデザインが
ずいぶん違いますね。
なるほど、そういう苦労があったんですか。

横尾 あ、いや、
ぼくは苦労してない。
社長が謝りに行くわけ。
一同 (笑)
糸井 それはいいですね(笑)。
これは、タイトルを
よその雑誌から引き継いだんでしたっけ?
横尾 違う違う。
あのね、これはもともと、
カストリ雑誌として出してたものを
新しく矢崎(泰久)さんが編集長で
出すことになって、
このタイトルではダメだと言ったわけ。
いまはどうかわかんないけど、
当時はこのタイトルだけ見ても、
カストリ雑誌とわかるようなものだったんです。
だけど、表紙を頼まれたときに、
このタイトルでないと
ぼくは描かないって、がんばったの。
糸井 それは、横尾さんが、
無理やりに?
横尾 無理やり。
いかにもカストリ雑誌風に描きたかった。
糸井 そのおかげでここまでできた、というところが
絶対にありますよね。
そういうセンスがねぇ、
横尾さんにあったということですよ。
横尾 ま、古いセンスですよ。

糸井 ‥‥‥‥「センスがねぇ」で
止めればいいものを、
いちいちついてきちゃいますね(笑)。
横尾 これはね、三島(由紀夫)さんだよ。

糸井 薔薇が乗ってますね。
横尾 もっと近くに寄って見てよ。

糸井 これは、薔薇が‥‥貼ってあるんですか?
横尾 そう。絵の上から、
薔薇の花を貼っつけてんだよ。
だけど「ここ」はね、ちゃんと実際に、
薔薇の下に描いてるわけ。
それを、上で隠しました。
糸井 一旦、描いたんですね。
横尾 そうしないと、気分が出ないもんね?
糸井 つまり、絵のつながりが
違っちゃいますよね?
横尾 ここで「気分」という言葉は
あんまりよくなかったかもしれない。
「ほぼ日」のまじめな読者の人は、
気になるだろうから、
「つながりが悪いです」にしといてよ。

糸井 ああ、よくなかったですね。
「そうしないとダメだもんね」と(笑)。
横尾 そういうことにしといてよ。
ほぼ日 そうしておきます。
  (続きます!)
 
2008-06-03-TUE
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