坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

最終回(第231回)    ありがとう。


こんにちは。
四国の坊さん、ミッセイです。

2001年の12月から、
長きにわたってかわいがって頂いた、
この「坊さん」の連載、
今回でめでたく、
大団円を迎えることになりました。

今まで、
本当にありがとうございました!!

お礼の言葉を続ける前に、
まずは、最近の僕のうれしかったことを。

* **

わりと前の話ですが、
活版印刷で綺麗な名刺を作ってもらいました。

デザインしてくれたのは、
僕と同世代の二人組グラフィックデザインチーム、

「agasuke」(アガスケ)

今回、担当してくれた田代さんが、
音楽関係の出版社ロッキング・オン出身の、
デザイナーということもあり、
彼らのデザインは上品な中にも、
音楽が聞こえてくるようなデザインで、
気に入っています。

彼らとは、お寺のロゴデザイン、
Tシャツ、ウェブサイト関連の話も、
少しずつ始めているので、
ちょっとわくわくしますね。

* **

前回お話しした、
栄福寺の新しい計画「演仏堂」(えんぶつどう)
の計画を僕が進めようと決意してすぐに、
お寺を共に、
支えてくれている総代(そうだい)さんに、
説明に行きました。
(ほぼ日で紹介したずっと前です。)

僕の中では、実は恐さもあったんです。

「あまり、
 変わった事しなくていいよ。」

そんな風に言われてしまう事が。

でも、
農家のおじいさん、
大工のおじいんさん達が口を揃えて、

「やってみたらいい。」

と言ってくれました。

「まぁ、夢みたいな話なんですけど・・・。」

照れ隠しのような僕の言葉に、

「いや、どうせやるなら、
 徹底的にがんばってみたらいいよー。」

そんな言葉をかけてくれました。

至らないところも、ずいぶん多いけれど、
今まで僕なりに、がんばってよかったな。

なんとか今ある問題をクリアして、
前に進めればと思っています。

* **

そんな感じで、
僕と栄福寺の物語は、
少しずつではあるけれど、
じっくりと前を向いています。

24歳でお寺の住職になった時、
それは本当にめずらしい事だったので、
僕には同じ立場で、
相談できる人がいませんでした。

その時、
学生時代からファンだった、
この「ほぼ日刊イトイ新聞」が、
僕の中で「違う存在」になっていたんです。

そこで、
展開されている「言葉」「企画」に、
僕ははっきりと
「助けられた」
と感じました。

それから僕は、
まるで親しい友達に、
大切な相談をするように、
「ほぼ日」を読むようになりました。

相談する内容はいつも決まって、

「今よりもっと、
 おもしろい事があってもいいよね?」

そんな話から、
もっとうち解けた馬鹿話まで。

そして、
その感謝の気持ちを伝えた、
1通の糸井さん宛のファンメールから、
この「坊さん」は、始まりました。

そこで、
僕は心から素直な気持ちで、
坊さんやお寺の事について、
話す事ができ、
皆さんから頂いた何千通ものメールは、
僕の宝物です。

そして、
そのお便りのほとんどが、
皆さんの多くが、
宗教や仏教にたくさんの期待を持っている、
という事でした。

そのことは、
これからの僕を、
本当に強く支えてくれると思っています。

***

もう何年か前の話ですが、

ものすごい夕焼けの空に見とれながら、
お寺の近くを散歩していました。

そして、ふと、思ったんです。

「あの夕焼けのほうが、
 もっと“僕”じゃないか。」

自分でもうまく説明できない感覚ですが、
その時、ふと、
そういう風に感じたんです。

考えてみると、
当たり前の事なのですが、
僕たちの身体は宇宙の物質ですよね。
ということは、
僕たちが持っている意識や心も、
宇宙のひとつだと思います。

そんな事を、
考えながら、
あの日の夕日を思い浮かべると、
「私」という単位が、
普段よりも曖昧になるなんです。
あるいは違う存在に。

普段考える「私」という存在は、
本当に大切で、
それを大事に生きていくのは、
当たり前の事だけれども、

「あいまいな私」
のほうにも注目をして、
もう少し生きてみる。

そうする事によって、
いつかは死んで、
自分自身や誰かとお別れするであろう、
僕たちを、
心の底からはげましてくれる、
「何か」が起こるんじゃないかな。

正直に言うと、
そういう事を、
仏教の力を借りながら、
これからじっくりと考えたり、
感じたりしたいと思っています。

* **

それでは、皆さん、本当にありがとう。

24歳で歩(あゆむ)という、
大橋歩さんのファンだった母親が付けてくれた名前から、
「ミッセイ」という
自分でも聞き慣れない名前に変わって、
慣れるものなのか心配していましたが、

読者の皆さんが、
親しみを込めて「ミッセイさん」と、
何度も呼んでくださったおかげで、
今では自分をしっかりと、
「ミッセイ」だと感じています。

これからも、
ひとりの読者として、
「ほぼ日」を楽しみに訪れますので、
全然、お別れではありませんよね。

まぁ、
生まれてきただけで、
相当にラッキーな話なのですから、
お互いぼちぼち楽しみながら、
生きていきましょう。

あー、おもしろかった!

ミッセイ




・ ブログを書き始めました。
   他愛のない話ばかりになると思いますが
 よろしければどうぞ。
 「ミッセイ57」


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2008-07-13-SUN
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