坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第229回 宮大工さんのお礼参り。


こんにちは。
四国の坊さん、ミッセイです。

みなさん、
お元気でしょうか。

お坊さんは、
他の仕事に比べて、

「モノをもらう」

ことが、
結構、多い仕事だと思います。

特に、
僕が住職をしている栄福寺は、
四国88ヶ所遍路のお寺なので、
全国の御参りの方から、
時々、おもしろいものを頂くんです。

その中でも、
ほぼ毎年頂く、
大阪の韓国焼き肉屋さんのおばさんの作る、
「チジミ」(韓国のお好み焼き?)と、
特製のタレは、
個人的に好物にしています。
(唐辛子の葉が入っていて、
 薄くぱりっと焼いている。)

その中でも、
今日頂いた物は、
とても印象的でした。

「下駄」なんです。



寄進くださった方は、
88ヶ所すべての札所の住職に、
下駄を奉納しながら遍路をしていると、
挨拶状が付いていました。

まだ境内で、
本堂の写真を撮っておられたので、

「住職でございます。
 ありがとうございます。」

とご挨拶をさせて頂きました。

お話を聞いていると、
この方は、
福井の宮大工(寺社仏閣に関わる大工さん)
を引退された方でした。

「修行中に、
 師匠に連れられて、
 お四国に見学に来た事があったんです。
 それで、
 お礼参りと思って、
 桐(きり)で作った下駄を持って、
 御参りさせて頂いています。」

四国遍路には、
亡くなった人の冥福を祈願したり、
お願い事があって御参りする方も多いですが、
こんな風に、
「うれしい事」があったお礼に、
「お礼参り」をする方もとても多いんです。

この宮大工さんの場合は、
無事に宮大工として、
現役を全うできたことを、
仏さんにお礼を伝えて、
まわっているのでしょうね。

「御参りをしようと思っていたら、
 40年ぶりに倉庫から、
 下駄を作る道具が出てきました。
 これは、
 下駄を作れという事だと思って、
 下駄を作って奉納して御参りしているんです。」

「ありがとうございます・・。
 宮大工はとても大変な仕事なんしょうね。」

「話せば長くなりますが・・・。
 師匠は厳しかったですね。

 でも、素直にやればいいんです。
 他の人がやったことがないことを、
 やるんではないんですから、
 素直にやるんです。
 誰かがやった事をやるんですから、素直に。」

という話を聞かせてくださいました。
僕はこの言葉のことを、
何日か考えていたのですが、
僕が素直にありたいのは、
心に対して素直にありたいと思いました。

* **

僕の方も、
今治の大島の「島四国遍路」に、
お礼参りに行ってきました。

昨年、
この島四国で、
ダライ・ラマ14世を招いた、
宮島の大聖院さんのご住職と知り合い、
宮島での、
僕にとって大きな体験に繋がりました。
その「お礼参り」です。

今回も、
大聖院さん達や、
信者さん達と団体で御参りをしました。



ポカポカ陽気の中で
海をみて山に入りながら、
お経をみんなで唱えていると、
すごく気持ちよかったです。



一緒に御参りをした人達は、
お年寄りの女性の方が、
とても多かったのですが、
息子や孫ぐらいの年齢の僕に、
歩きながら、
色々な話をしてくださいました。

「男の人って気が強いよねー。」

「そうですねー。
 んっ?でも女の人も気が強くないですか?
 ケンカは男のほうが多いですけれど・・・。」

「そうじゃなくってね。
 男の人がいると、
 気が強くなるの。安心なの。

 私は今でも、
 すごく恐がりなんだけど、
 風がすごく強い日とかにね、

 “こわいよー”

 なんて言うと、
 
 “なに言ってんだよ。
  家がつぶれるわけじゃあるまいし。
  とっとと寝なよ。“

 とかって言ってくれるじゃない?
 そういうのが安心なの。
 
 でもね、
 女は知っているのよ、
 男もこわいのを。

 不安な時に恐いのを。
 お金の事なんか特にね。

 でもね、
 女の人は、
 それを知っていて、
 大丈夫って言って欲しいのよ。
 恐いのに大丈夫って言えるか見てるのよ。

 わかる?」

「わかりませんけれど、
 なぜ僕がモテないかは、
 よーくわかりました。
 はははは。」

「ははははは。
 でも今わかってよかったじゃない。
 今わかった、あなたは偉い!
 そしてラッキー!」

なんていう、
老女(失礼っ!)の、
含蓄に満ちた身につまされる話を、
聞かせてもらいながら、
楽しい島四国でした。



でも80歳近い女の人が、
一日中歩き回るのだから、
皆さん、お元気ですよね。

途中、
お寺で拝む時が、
いい休憩になるから、
ずっと歩いていられるんだと思います。


ミッセイ


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2007-05-24-THU
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