坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第206回 
ラダックへ!
(へミスのフェスティバル)


ほぼにちは。

ミッセイです。
(旅シリーズ、続きます。)

アルチ地方を後にした僕達は、
ラダックの中心都市、
レーのホテルに滞在して、
(ちなみに
 このホテルも、
 電気、お湯とも時間制限がある。
 なぜか僕の部屋だけ湯船があったので、
 先生を部屋に招待したこともあった。)

様々なゴンパ(お寺)を訪問します。

このあたりで、
住んだり商売をしている人達は、
チベット系の人達ばかりじゃなくて、
いろいろな人種や宗教の人達がいます。
(むしろ商売をしているのは、
 イスラム系の人達の方が、
 ずっと多いように感じました。)

僕達の、
ホテルの前の路地は、
野菜市場通りで、
新鮮な野菜が、
所狭しと並んでいました。



同じような、
店構えの店がずらっと並んでいるのですが、

ほとんどの店主の前に、
豆腐のようなものが置いてあります。

「へー、豆腐食べるんだ。」

と思ったので、
ひとりで散策している時に、

「これ、豆腐ですか?」

と思わず日本語で聞いたら、

「ノー、チーズだ。」

ということでした。

食べてみたかったけれど、
タンパク質系は、
あたると怖いので、やめときました。
(僕は日本でも食あたりになりやすい。)

さて、
僕達はラダック最大規模のお寺であり、
300人の僧侶が生活する、
へミス寺で、
チェチェというお祭りを観に行きました。
年に一回、
大きな祭りが開催されているんです。

僕達も、
このフェスティバルに合わせて、
ラダックにやって来たということもあるので、
現地はすごい盛り上がりだし、
なんだかワクワクしてきました。


祭りが行われるへミス寺の中庭

お寺に掛けられた
宗教画であるタンカが開けられるのを、
観衆は心待ちにしています。



「バオー、バオー、バオー」

という楽器の低い音が、
乾いたこの地に、
お祭りが来たことを告げます。



この音と、
お経を読む声、
それと僕達も使うような
鉢(はち)という、
シンバルのような宗教楽器という、
シンプルな構成が、
驚くほど豊かで、
エモーショナルなメロディーを奏でます。

そして、
遂にタンカが開きました!



ここは、
ワールドカップか?
フジロックか?

というような、
観衆のうなり声のような歓声に、
仏教にかかわる
ちっぽけなひとりとして、
鳥肌が立ち、
背中が何度もジーンとしました。

タンカに描かれ、
掲げられているのは、
チベット密教のヒーロー、

“パドマサンバヴァ”

強力な呪術力で、
チベット土着の悪魔を退散したとされ、
圧倒的な人気を誇ります。

この祭り自体も、
その活躍のストーリーが
下敷きとなっていると思われるので、

まずは、
地元の悪魔さん達が踊りを披露します。
(たぶん、そうだと思うんだけど。)



悪魔の人達は、
ドクロを胸の前に付けています。
(「ガT」じゃないよ。)



祭りが始まると、
ぞくぞくとお寺の中からも、
お坊さん達が集まり始めます。



踊りが行われている間、
お面を付けた子供が白い布を、
聴衆の首に巻き付けて(お清めしてくれてるのかな?)
寄付をもらいに回っています。



この時の反応の
国民性の違いは、
けっこうおもしろかったな。

ヨーロッパの人って、
結構、怒る人が多いんです。
(びっくりしたんでしょうね。)
日本人はあたふたするか、うれしそうにする。

中庭では、
悪魔の人達に続いて、

見るからに、
よさそうな人達が(曖昧だけど。)
金のお面をかぶって柔らかく踊ります。



そして
その場所が、
静寂な雰囲気を取り戻した時、

遂に、
グル・リンポチェ(パドマサンバヴァの別名)の登場!



そして、
グルリンポチェに様々な、
踊りや演奏が捧げられ、
午前の部は終了です。

午後も、
様々なストーリーの中で、

変な人達や、
聖なる人達が、
踊り続けます。



ピンクの骸骨は、
激しい踊りを披露しながら、
勢い余って観衆の中に飛び込んだり、

お坊さんを煽るようなダンスを披露します。



そして、
また、ダンス、ダンス、ダンス。

黄レンジャー、赤レンジャー達も、
(あっ、違うか。金剛会の五仏かな?)

魔を払うように、ダンス。



でも
この祭り、
朝の9時頃から、
夕方の4時ぐらいまで、
この調子でずっと続いているわけで、

正直、
ちょっと飽きてきた僕達は、
へミス寺の中に入ってみました。

すると、
そこは祭りに参加している、
お坊さん達のバックステージになっていて、
踊っていたお坊さんがお面を脱いで、
一休みをしていました。



長い長いお祭りだったけれども、
この長さでしか表現できない、
受け取ることのできない、
時間軸みたいなのを感じた気もするな。

それは、
僕が持っている時間軸とは違うのだけど、
それでこそ、なんか、うれしくて。

世界中から来ている、
お祭りを見守る人達や、



この祭りを、
心から楽しみにしている、
現地の人達に囲まれながら、



僕の心は、
どんなものを受け取ったのかな。

それは、
僕にも
よくわからないことなのだけど。


ホテルへの帰り道、
のどがいがらっぽく感じていたので、
すっきりしたいと思って、
夕食の時、
インドのビールを初めて頼んでみる。

「キングフィッシャー」

僕が飲んでいると、

「あっ、白川さん、いいものがあるよ。」

と免税店で買った、

「日本未発売の焼酎」
(誰が飲むんだろう?
 ジャパニーズレストラン??)

やらブランデーやら、
色々なものが出てくる。

「あっ、いいものあるじゃないですか。」

と少しだけ飲んでみたのですが、
これが、よくなかったのかな。

忘れてた。
油断してた。

高山病の初期症状は、
驚くほど風邪と一緒であり、
天敵はお酒らしいのだ。
(酸素吸入量が減るかららしい。)

もう、
何日もたってたから、
大丈夫だと思っていたのだけど。


ミッセイ
(続きます。)

お知らせ。
講談社から刊行中の雑誌、
『週刊 四国88カ所 遍路の旅』で、
栄福寺掲載号の20号が発売になっています。



55番の南光坊さん、
56番の泰山寺さんと共に、
57番、栄福寺の境内や仏様、
咲いている花なんかを写真でも、
見ることができますよ!

僕も、
「月を見ていると、
 照らされた光も光だと思う。」
というような、
短い文章を寄せています。

なお、
この号の巻頭インタビューは、
建築家の安藤忠雄さんです。

夕日に照らされた、
瀬戸内海としまなみ海道の、
表紙が目印なので、
興味がある方は、
のぞいてみてくださいね。
四国88カ所のお寺が88枚の切手になります。
原画の撮影は「坊さん」の文章の中でも、
何度か登場した三好和義さんです。

栄福寺は11月5日発売の第一集、
20ヶ寺の中に収録されます。
(紅葉が綺麗な秋の風景)

全国の郵便局でも、
通信販売の申し込みが出来るようですよ。

詳しくは、こちらまで。


このページへの激励や感想などは、
メールの表題に「ミッセイさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2005-07-31-SUN
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