坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第183回 ミッセイ、これからの仕事。

ほぼにちは。

ミッセイです。

河原にサクラ(犬)と散歩に行った時、
気に入った石をすこし拾ってきたのですが、
その石がなんかいいので、
栄福寺のかねつき堂に並べてみました。



なんとなく
“いわくつき”の石に見えるらしく、

この前は、若い女の子のお遍路さん二人が、
ぱんぱんと、神様にするように、
手をたたいていました。

でも、5回ぐらい連続でたたいていたので、

「不思議なたたき方だなぁ。」

と思っていたのですが、
考えてみると、
石の数だけ全部、
たたいていたんですね。

意外と100年ぐらい後に、
“伝説の石”になってたりして。

「平成の昔、当山に密成和尚あり、
 石拾いを趣味とし、
 村人から、奇人扱いを受ける。」

なんて。
やっぱり、のけておこうかな・・・。
(ちなみに石拾いは、趣味ではなく、
 僕のライフワークです。

 というのは冗談で、
 趣味でもなんでもないです。)

***

僕はお坊さんになってから、

「坊さんとしての
 新しい自分の仕事を、
 作っていかないとなー。」

ということを、
ずっと、
考えてきたと思います。

もちろん、
今でも考えています。

それは、
今、自分がやっている仕事だけでは、

また、
役割として求められている仕事だけでは、

「僕に何ができるだろう?」

と、自分に問いかけた時に、

「自分ができることの、
 ベストを出し尽くせていて、
 うれしい、おもしろい。」

とは、言えないからです。

いや、ベストを尽くせてないことよりも、
ベストを尽くすための方向さえも、
向けていないと感じています。

そこで、
何ヶ月か前に、

「自分にはこれが、できるんじゃないか。」

ということに、
キャッチフレーズをつけてみました。

それは、

「アホでバカな紹介者」(ソウルフル)

でした。
ちなみに馬鹿(莫迦)って、
サンスクリット語からきてて、
昔は坊さん達の隠語だったんだね。
知らなかった。

仏教のことを眺めていると、
昔の人でも、今の人でもそうですが、

「ものを知っている人」

の学習量や知識量には、
本当にあ然とします。

そして、自分をかえりみると、
彼らに近づくのは、
相当に難しいし、
それは、たぶん自分の役割でも得意技でもない、
と思うんです。

そういう人から見れば、
僕は知識量ではアホでバカです。

でも、数少ない得意技を、
考えぬいて、
(よーく探さないとないんだ、残念なことに。)

「人よりもうまいもの、できて楽しいもの。」

を探してみると、
それって、
「紹介者」と言えるんじゃないかと、
思ったんです。

僕は、アホでバカなだけでなく、
「理解力」というのも相当にあやしくて、
多くの人がわかったことでも、

「えっ、意味わからない。」

ってことが少なくないです。
でも、自分がわかった事については、
それを、いろんな人が、

「あー、なるほどな。
 そういうことなのかなぁ。
 私にも関係あるかもな。」

と“紹介”するのは、
苦手でないし、

それは、
「自分を含めて考える。」
という手法を使っているからだと思います。

これは多くの人が、
自分と仏教とか宗教が、
関係ないと考えている世の中で、
わりと使える技かな、と思えたんです。

そして、うまくいった何度かは、
その場面にとてもエモーショナルな雰囲気が、
あったと確信しています。
それが、とっても大切なカッコの
(ソウルフル)です。

もちろん、紹介者としての自信は、
ほぼ日とその読者達がくれた勇気でもあります。

僕の住職としての最初の仕事のひとつは、
じいちゃんのお葬式の時に配る、

「住職としての経歴」

を書くことでした。

「薬師堂の建立」

「庫裡(くり)の新築」

それは何行にも渡る作業だったんだけど、

もし、明日、縁起に逆らえず、
僕が死んじゃったとしても、
僕は、

「白川密成 “ほぼ日刊イトイ新聞”で
  多くの読者に話しかけた。」

のひと言だけで、
ひとりの僧侶として(いや、人として)
ちょっと胸を張ります。
もちろん、やりたいことは、
まだまだ、いっぱいあるし、
努力も楽しみもなにもかも、全然たりないけれど。

***

そして、最近では、

「紹介者だけじゃ、いやだな。」

と思っています。
わりと、欲深いんです。

それは、

「心は、わりと、はだかだな。」

と気付いた所に、
僕の仕事が見えた気がしたんです。

僕らは寒ければ、
ヒーターをつけたり、
痛ければ、痛み止めを飲んだり、
あったまるために、
風呂にはいったり、
いろんな事ができます。

そんな、
ヒーターや薬や風呂みたいなものが、
(時には、
 自分の中の何かをやっつける、
 武器のようなものが。)

ひとりひとりの心の中で、
自分やなにかの力を借りて持てることを、

アシストしたり、
可能性を提示したり、
喚起することができれば、
かっこいいし、
おもしろいだろうな、と思います。

そして、いつか、
仕事にもなると思う。
(根拠のない直感ですけれど。)

時には、

「風呂そのもの」

みたいなものも、
歌ってみたい。

どんな方法があるかなぁ。

「仏教」と、
近い所にいるだけで、
すごいラッキーなんだろうな。

なにか自分の事ばっかり、
書いてしまった気がしますが、
読者の方の中には、
僕よりもずっと、
実際の動きに結びつけるのがうまい人が、
多いと想像しているので、

みんなの生活とか仕事にも、

「紹介者であることは、すごいこと。」

「こころが、わりと裸であること。」
 (寒い思いを直に受けている。)

なんかが、
なにかの役に立つとしたら、
僕としては、うれしいです。

それから、

「坊さんやミッセイが、
 こんな仕事してくれたら、
 うれしいよー。」

ってアイデアとか期待があったら、
メールいただければ、うれしいです。

年も暮れてきましたので、
センエツながら早めの歳末企画として、
ほぼ全員にお返事を書きたいと思います。
(内容によっては書かない場合があると思いますが。)

意外とどんな人が読んくださっているか、
わからなくもあるので、

「実は読んでます。」

「こんな感じで読んでます。」

みたいな、
メールもよかったら待ってますね。


ミッセイ

お知らせ。
四国88カ所のお寺が88枚の切手になります。
原画の撮影は「坊さん」の文章の中でも、
何度か登場した三好和義さんです。

栄福寺は11月5日発売の第一集、
20ヶ寺の中に収録されます。
(紅葉が綺麗な秋の風景)

全国の郵便局でも、
通信販売の申し込みが出来るようですよ。

詳しくは、こちらまで。
シンメディアという出版社刊行の
『季刊 巡礼マガジン』
というシブイ名前の雑誌で、
「おもいだす空海」という連載を、
最新号の31号から始めました。
(ほぼ日を読んだ編集者の方から、
 お話を頂きました。)

空海の著作の言葉に、
僕が短いコメントと、
写真を添えるという、
見開き2ページでの連載です。

手に取られる機会があれば、
ちらっと覗いてみてください。


このページへの激励や感想などは、
メールの表題に「ミッセイさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2004-12-09-THU

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