坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第180回 うさんくさいっ!

ほぼにちは。

ミッセイです。

今日、お遍路さん納経帳に、
納経を書いていたら、

なんだか、
あきらかに、
普通の紙と書き味が違いました。

サラッと筆が走るのに、
キレイにかすれるっていう感じです。
(僕は字がうまくないので、
 あまり偉そうなことは言えないんだけど。)

「これは、なにか、特別な紙なんですか?」

と聞くと、

「はい、(愛媛の)川之江の和紙なんです。」

ということだったので、
栄福寺にも置きたいなと思いました。

「どこで、買われたんですか?」

「実は20年前に、
 病院で買ったんです。」

「えっ、病院ですか?」

「はい、入院患者を相手に、
 昔は行商の人が来てたんですよ。」

「悩みを持った人が多いので、
 よく売れるかもしれないですけどねぇ・・・。」

「でも、暇つぶしには、
 ちょうど、よかったですよ。」

なんていう会話を交わしました。

ほぼ日が今治(地元なんです)のタオルを、
いろんな人に紹介してくれたみたいに、

和紙なんかは、
お寺がよさを紹介しやすいものかもしれないな。

***

ふっと昔のことを、
思い出すことが、
僕はよくあるのだけど、

最近、小学生の頃、遭遇した、
ある山伏さんのことを、
ふっと思い出しました。

僕は今でもそうなのですが、
非常に忘れ物が多いんです。

その日は家庭科の調理実習で使う、
アイスクリームを
学校に持っていくのを、
忘れてしまいました。

「コラッ!また白川くんですか。
 あなたの班だけ、作れないでしょう。
 今すぐ、農協で買ってきなさい!!」

と先生に怒られた僕は、
農協まで、アイスを買いに走りました。
農協は田舎に住む僕達にとって、
コンビニのような存在でした。

学校に来てるのにアイスを買いに行ける!

その非日常的な開放感に、
僕はすごく、わくわくしていました。

店内に入って、
冷凍庫の中のアイスを物色していると、

「山伏さん」

が入ってきたんです。

僕はその時はじめて、山伏の人を見ました。

彼は、店の女の人に、

「おいっ、ペーパーはあるか?」

と乱暴な口調で聞きました。
うさんくさいなぁ、と僕は思いました。

「ティッシュペーパーですか?
 トイレットペーパーですか?」

と、その女の人が聞くと、
(すごくまっとうな質問だと思う。)

「サウンドペーパーじゃぁぁぁ!!」

と山伏は、
天地がひっくり返りそうな大声で怒鳴って、

農協批判の演説をし始めました。

ヤバイ、ヤバイ、と思った僕は、
とっととレジを済まし、
他の班より少し遅れて、
フルーツパフェを堪能し、
家路につきました。

家に帰ったら、
いかに今日自分が、
おぞましい恐怖体験をしたか、
みんなに語って聞かせようと、
すこしワクワクしていました。
わりにワクワクしやすいタイプの子供でした。

そして、栄福寺の境内に着くと、
その山伏がいたんです。

まさに恐怖体験でした。

しかも境内の松の鉢植えを、
放り投げたりして、
大暴れしている!

なんなんだ!!マジかよ?

と逃げるように庫裡(くり、寺の住まい)
に入って家族から事情を聞くと、

山伏は住職のじいちゃんに、

「寺のためにご祈祷するから、
 祈祷料をお受けしたくやって来ました。」

と言って、
明らかにお酒が入っていたのに、
気付いたじいちゃんから、

「お酒に消えるような、
 お金はお渡ししません。」

と一蹴され、
暴れ出したということでした。

あれは、本当に、
うさんくさい人だったなぁ、
と思い出しました。

***

そして、何を隠そう、
お坊さん、しかも住職をしていると、
いろんなタイプの
“うさんくさい”人と、
接する機会があります。

そして、
カタカナの“ミッセイさん”としての、
僕に話を聞きに来る人達の多くが、

「うさんくさい」

人が嫌いなようです。

僕だって好きじゃないです。

ただ、何年か、
とても近くで、
宗教に接していると、

ある種のうさんくささが、
保存してきたり、動かしてきたものって、
ずいぶん多いだろうなぁ。

って感じないわけには、いかないんです。

それだけでなく、
バランスをとってきたという
言い方だってできるかもしれない。

だから、
人を傷つけたり、
いちじるしく迷惑をかけている時意外は、
(上記の山伏さんは完全に不合格ですね。)

大きな声で、

「おい、おまえ、うさんくさいぞ!」

と攻撃するよりは、

「うさんくさいなぁ。
 いやだなぁ、早く帰って欲しいものだ。
 
 でも、
 このエネルギーが運んでるものも、
 ずいぶん多いのだろうなぁ。」

ぐらいに思っていたので、
ちょうどいい気がします。

これは、宗教意外でも、
そうじゃないかと感じていて、
(例えばあなたの、
 会社や近所のうさんくさい人とか。)

うさんくさい人は、
わりと多くの必然に応えて、
社会に出てきているので、
むやみに自分の正当性を
主張しつつ排除しようとすると、
不自然なことになって、
意外と絶妙だったバランスが崩れることがある
っていうのが、僕の最近の私感です。

ひと言で言うと、

「ほっといた方が、いい時がある。」

って思ってます。

考えてみると、
ある面では自分だって相当に、
うさんくさいもんなぁ。

ほんとに。


ミッセイ

お知らせ。
四国88カ所のお寺が88枚の切手になります。
原画の撮影は「坊さん」の文章の中でも、
何度か登場した三好和義さんです。

栄福寺は11月5日発売の第一集、
20ヶ寺の中に収録されます。
(紅葉が綺麗な秋の風景)

全国の郵便局でも、
通信販売の申し込みが出来るようですよ。

詳しくは、こちらまで。
シンメディアという出版社刊行の
『季刊 巡礼マガジン』
というシブイ名前の雑誌で、
「おもいだす空海」という連載を、
最新号の31号から始めました。
(ほぼ日を読んだ編集者の方から、
 お話を頂きました。)

空海の著作の言葉に、
僕が短いコメントと、
写真を添えるという、
見開き2ページでの連載です。

手に取られる機会があれば、
ちらっと覗いてみてください。


このページへの激励や感想などは、
メールの表題に「ミッセイさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2004-12-03-FRI

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