坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第120回 森に留まるつもりはない。

ほぼにちは。

ミッセイです。

今、これを書いているのは、
「梅雨」の季節なのですが、
(原稿が掲載される時には、
 明けているかもしれない。)

梅雨の天候というのは、
なんだか特別に感じる時があります。

何日も何日も、
続いた雨の空から、
小さな、そして確かな
光が射してきたので、
家の回りを散歩しました。

そこを歩いていると、
豊かな光を体いっぱいに、
あびながら、
それと同時に、
風がどこかから運んできた、
細かい粒子の雨の水を体に受けました。

そんな時、
犬塚池に続く路の雑草は、
激しく光を放射します。

僕は、その事を、
たぶん、誰かに伝えたくて、
家までカメラを取りに帰って、
シャッターを押し、
自分で本を作ります。










この本に、僕は、

『オーハースーハー』

という“名前”をつけました。

僕にとって、この音の響きが、
言葉にならない、
声だという気がしたからです。

何語でもないんだけど、
言葉にならない、声。

伝えたい声。

オーハースーハー!!


最近、あるお坊さんの、
本を読み終えて、
(外国人のお坊さん)

すごく、特別な感情を受け取りました。

そして、
うまく言えないんだけど、
正直に書きますが、

「自分が、今、
 僧侶という立場でいられるのは、
 本当に、
 “特別なこと”なのかもしれない。」

と思いました。

すごい“段階”に“到っている”
というよりは、
受け難き、ある“局面”に立っている。

という感覚。

それは、もちろん、
どちらかと言えば、

“うれしい”

と思うんだけど、
同時に、

「わりかし、困ったことになったな。
 ややっこしい、ことになったなぁ。」

と、ポリポリと、
頭を掻くような感覚もあったりします。

基本的には、
うれしいんだよ。

だから、今、坊さんをやっています。

そこで、
ここ最近、
普段は読まないタイプの本を、
読んでみたり、
(そもそも本自体を、
 そんなにたくさんは読みませんが。)

いろんな人との、
出会いがあったりしたのですが、

仏教の僧侶としての、
“局面”に、
すこし真剣に向き合いたいな、
と思っています。

もちろん、
今までも真剣だったのですが、

ちょっとタイプが違う意味の話なんです。

たぶん、
もっと精神的に、
テクニカル(技術的)な意味です。

“宗教”をやる上で、
恐らく自分の持つ、
コア(核)の一部分に触れる、

という作業が大切になってくると思います。

あるいは、
今まで
触れられることのなかった場所に触れる。

そして、
僕は、歴史やいくつの事柄から、
推測するんですが、

その「コア」や「部分」の
“住人”になることは、
あまり正しいことではない、
少なくても、僕にとっては。

と思っています。

そのコアの一部分は、
時に、
通常、人が入るべきでない、
触れるべきでない、
つまり、耐えきることのできない、

極端に美しかったり、
苦しかったり、
醜かったりする、

記憶や感情が、
整然と、
時に無造作に放置されている、
と思っています。

そこは、まるで、
子供が(あるいは人間が)
入ることが禁じられた、
森の中の図書館や発電所のような
場所なのかな?

とも思います。


その場所から、
あらゆる肯定性で原理的な、
存在を見出して、
そこの住人になろうとするのが、
今までの宗教の目的や理想の、
“一部”でもあった、と僕は感じています。

それを、
僕は、見たことがないし、
否定する気もないし、
尊敬さえ感じるんだけど、

僕は、その森に、
留まるつもりはない。

僕は、
ここに帰ってきたほうがいい。

と、感じています。

はっきり言って、
全然、わからない事の方が多いし、
心の中の、
シューティングゲームのような中で、
なんとなく得た感覚を、
不確かに伝えているだけなのですが。

ただの恐怖心かもしれないしね。

ただ、僕は、今、

「触れて、感じて、帰ってくる。
 また、触れる、“入ってゆく”
 再び帰る。」

それが、許されることならば。

そんな風に感じています。

そして、
“帰ってくる”
ということは、

「どうしても、
 うまくいないことが、
 あること。」

の存在や所有を、
認め、抱えることでもあると思います。

それは、時に、
人であったり、自分であったり、
生活であったり、家族であったり、
するんだろうか?

なんてことを、
考えています。


まぁ、
深呼吸しながら、
気楽に考えてみます。

それも、とても、
大切な事なんだろうね。

でも、耳をすませることは、
たぶん、大切なことだし、
おもしろそうなので、
やめないつもりです。

オーハースーハー!!!

そこから、きこえるかい?

ミッセイ


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2003-07-10-THU

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