坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第70回 死んだ人を思い出す。


ほぼにちは。

ミッセイです。

お盆の季節になりました。

この時期になると、
車とかバイクとかで、
同業者(坊さん)とすれ違うことも、
多いです。

軽く会釈したりします。

時々、無視されますが。

「そろそろ、お盆の準備もしないとなぁ。」

と思ってたら、
高知のお坊さんからメールが。

「お盆やっと終わりましたね。もうクタクタ。
 そっちはどんな調子?」

そう。地方によって
お盆が7月のところもあるんです。

僕が知ってるのは、
この高知と関東圏です。
だから、これ読んでる人は、
お盆が終わってる人も多いですね。

なんでだろう?
現行の“太陽暦”を採用した
明治政府の指導力が行き渡りやすい、
地方だったのかな?

じゃあ、鹿児島はどうだろう?

情報、お待ちしていますね。

お盆というのはね、

釈尊(しゃくそん)のお弟子さんに
目蓮尊者(もくれんそんじゃ)
という人がいました。

その人が、
供養できずに、もがき苦しんでいた
自分の母親を、釈尊の進言により
夏安居の修行期間があける7月15日に
多くの僧と共に、供養しました。

という言い伝えがあって
日本でも、
お盆には先祖の霊が家に帰ってくると
考えられてきました。

で、8月(7月)になったら
精霊棚を作って、
ごちそうで、もてなそうと。

でも、注意しないといけないのは、
先祖“だけ”を供養してるんではなくて、
そのへんをウロウロしている、
お腹を減らした霊も一緒に供養してるんです。

霊が存在するって考えない宗派は、
精霊棚を作らなかったと思います。

そして、今年の栄福寺みたいに、
新しく亡くなった人が
いる場合(新盆、あらぼん)は
提灯(ちょうちん)を飾ります。
この提灯に、じいちゃんの名前を書いて、

「ここですよー。」

と存在をアッピールするわけです。
こんな感じのを買いました。


仏壇屋さんで買えますよ。

8月盆の場合
7月31日の夕方から
8月31日の夕方まで飾ります。

2年目、3年目は
8月13日の夕方から
8月16日の夕方までが一般的です。

13日には
自宅の前とか、お墓や、浜辺で、
「オガラ」(アサの皮を剥いだ茎)
を燃やして、精霊を迎え入れます。
(仏迎え)

オガラは時期になると、
八百屋さんとか仏壇屋に置いてます。



そして15日の夕方、
同じように、オガラを燃やして、
仏送りをするのです。

16日の午後にはお墓参りに行きます。

僕は、
お盆とか、法事とかを考える時、
いつも、ある小説家の言葉を思い出します。
それは、

「死んだ人に対して、
 僕達ができる、唯一のことは、
 その人のことを
 少しでも“憶えている”ことだ。」

という言葉です。
記憶なので正確ではありません。

この言葉の伝えようとする、
本当に大切な意味は、
僕には、なかなか伝えられないけれど、
法話で何度も引用して話しています。

「みなさんの中で、
 もしかしたら
 特別な信仰を持たない人も、
 いるかもしれません。

 そうだとしたら、
 私が読経している間、
 その人のことを
 “思い出して”
 あげてくれませんか?

 結構、長いので。」

実家を遠く離れて、
都会とかで暮らす人達は、
お盆にお坊さんが来ない人も、
多いんじゃないかと、
想像します。

そんな人達も、
休みの日に、
気持ちのいい河原に出かけて、
お気に入りのシャツを着て、

オガラを焼きながら、
煙を見つめて、

死んだ人を思い出す。

それは、それで、
素敵なお盆なんじゃないかと思います。

僕は伝統的なスタイルのお盆に、
敬意を持っていますし、
その物語の重要な登場人物ですが、

そういうお盆が、
あっても、いいって考えてます。

ミッセイ

2002-08-19-MON

BACK
戻る