坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第62回 音楽を好きでよかった。

ほぼにちは。

僕は法事とかの、
お寺の仕事で移動する時は、
たいがい小回りのきく、マーチを運転します。

ネイビーブルーの旧式マーチ。

僕はこの車が、結構好きなんだ。

だけど、問題があって。

このマーチは、カセットテープ・プレイヤーしか
装備されていないんです。

僕は車に乗る時の、
ほぼ100パーセント
音楽を聴きながら運転します。

でもCDとMDでしか、
ほとんど音楽を持っていないので、
困っていました。

だから、お寺で働き始めた頃、
高校の時に作ったカセットテープを
押入から発掘して、聞いていみることにしました。

「高校時代の僕は、どんな音楽を
 聴いてたんだろう?」

ラベルには「YES “CLASSIC YES”」

って書いてある。

YES!!

そう、僕は、
“プログレッシブ・ロック”とかいう、
音楽に夢中だった時期があった。

でも、今となっては
“アクロバティックなサーカス音楽”
みたいなイメージしかない。

再生ボタンを押してみる。

これが、いいんだ。とっても。
びっくりした。

たぶんこの人達は、音楽が好きだ。
とっても。

頭を激しく振りながら、
雄叫びをあげている、
笑顔の坊さんを信号待ちで見かけたら、
それは、ミッセイです。

このカセットのB面には、
ボブ・マリーの奥さんと、彼のバックコーラスが、
ボブ・マリーをカバーした、
トリビュート・アルバムが入っていた。

この組み合わせは、なかなか飽きなくて、
マーチに乗るたびに、聴き続けて、
まもなく1年です。
たまーに、コーネリアスに変えるけどね。

今日は音楽の話をしようか。

最近買った
はっぴいえんどのトリビュート・アルバム、
「HAPPY END PARADE」
に収められた、ある1曲で、
僕は、とっても特別な体験をしたんだ。

僕は、そもそもトリビュート・アルバムってのが
大好きで。

特に好きなのは、
ベック、シェリル クロウ、エルヴィス コステロ、
なんかが参加している
グラム パーソンズのトリュビート・アルバム。
とても素敵な音楽です。
(「RETURN OF THE GRIEVOUS ANGEL」)

その“特別な体験”をさせてくれた曲は、
キセル(meet 細野晴臣)っていう、
初めて聴いたグループが演奏している
「しんしんしん」っていう曲です。

僕は、この曲から響いてくる感情、
とぎれとぎれに飛び込んでくるコトバ、
まとわりつくように、
抱きしめてくれるメロディーに
本当に色んな事を想った。

言葉にしてみようか。
たぶんうまく言えないけど。

「ああ。そうだった。

 僕が大事にしたいのは、
 この感覚、感情だった。

 僕は、エラクなりたいんじゃない。
 いばりたいんじゃない。

 そういう話じゃ、なかった。

 大事にしたいのはコレだった。

 うん。 僕は、この調子でいい。

 それと少しの努力。

 生きてて、よかった。

 たまらなく寂しいけれど、

 叫びだしたいぐらい、うれしい。」

僕はこの曲からこんなことを、思った。

すごいな、音楽って。

田舎の坊さんにまで
魔法を運んでくれる。

僕は、たぶん
音楽を作る事なんて、
一生ないけれど、

できることならば、
坊さんって仕事でも、
みんなとそんな気分に、
なれたらなって思うんだ。

自分勝手で、飽きっぽくて、実行力のない

僕だけど、
毎日、毎日、名曲達を聴きながら、

“僕に、なにか、できるかもしれない”

って思うんだ。

ミッセイ

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2002-06-23-SUN

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