坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第51回 府頭山・栄福寺に晋山する

ほぼにちは。

ミッセイです。

僕が府頭山・栄福寺の住職なったことを
御本尊、同じ地域のお坊さん、檀家さん、信者さんに
報告する「晋山式」(しんざんしき)が
準備を進めていた
「常楽会」(じょうらくえ)と同じ日に行われました。

あまりに若い年齢での、晋山なので
なかなか、実感がわかなかったんですが
前日になって、御世話になっているお坊さんから
今まで僕が見た事もないような、
大きな“樽酒”(たるざけ)が届いたりしだすと
「なんだか、すごいことになってきたな。」
と、ふつふつと実感がしてきました。

用意しておいた、大きなトウバを
大工さんと総代さんに本堂に立ててもらって
御本尊の手に置いた、五色(ごしき)のひもと結びつけます。

五色は密教の法会・修法では、
たびたび出てくる色で
青・黄・赤・白・黒です。
儀軌(ぎき、密教の様々な事に対する規則。
   またそれらが記載された経典。)
によれば紅・緑を加えます。

そして法会の一番始めに
僧侶のみなさんが
般若心経をお唱えしている間に
僕が秘仏である御本尊を開帳しました。

そして本山からの辞令を伝達されたり
柄香炉(えごうろ)という
仏器を授受されて

「奉告文」(ほうこくもん)という文を
僕が立ち上がって読み上げます。

この文章は
過去の晋山式で
名文とされる奉告文を参考としたり
(そういうのが載った、本がある。)
用語集から言葉を選んで作ります。

たぶん、細かい文法などは
誤りだらけだし、
そのまま引用した部分も、かなり多い。
お坊さんの目に触れて失笑されるのを
覚悟して、ここに載せます。

晋山までの間、ほぼ日読者からの
たくさんのメールは本当に底の方から
僕を暖めてくれたからね。
あえて解説は、あまりしませんので
雰囲気だけでも掴んで下さい。

  晋山式奉告之文

 敬って真言教主大日如来、
両部界会諸尊聖衆、殊には本尊阿弥陀如来、
別しては当山開基、宗祖弘法大師を始め
歴代先師尊霊・中興密幢和尚・密勝上人に白して言さく。
 夫れ以るに府頭山栄福寺は
瀬戸内海の安穏を願い弘法大師自ら護摩法を修し、
寺基を此所に創めてより師資累代相承して千有余年、
法灯愈々(ほうとう いよいよ)輝きを増し日々に新たなり。
 爰に末資の沙門密成、弱冠にして、
先師密幢権大僧正の遷化の後を承けて
この阿蘭若(あらんにゃ、修行に適した閑静な場所)を薫し、
法灯を継ぐと雖も、その任重く、その力乏しきを念い、
恐懼慚惶(きょうくざんこう、恐れおののく)に堪えず、
また省みて、戒徳信行未だ至らず。
恰も羝羊(ていよう、おすのひつじ)の
荒野に彷徨(ほうこう)するに等しきを思い、
明師の提撕(ていせい)を願うこと切なりき。

 しかるに、密成ここに誓う。

 永えに香華供養(こうげくよう)の浄業を積み、
 日夕に四恩酬答の一念を磨き、
 以て宗祖垂訓の万一に教えを請い、
 先師の恩命に酬いんことを期す。

 また、ここに言う。

 某(それがし、自分のこと)

 解らぬを、解したとせず

 常に、想う

 法界(ほうかい、世界の万物)の不思議と心を

 細心の注意で

 常に想う
  
 笑顔と共に
  
 伏して乞うらくは満界の諸尊聖衆、
敬慕尊信の諸阿闍梨、
愚弟が丹心を哀愍納受せられ、
至願を成就せしめ給わんことを。

  平成十四年四月七日 
        沙門密成敬白

という文を読みました。

「また、ここに言う。」以下は
どうしても、自分の入れたかった言葉を
いくつか、入れておきました。
回りの文章と“笑顔と共に”という言葉
が違和感がありますか?

でも、入れました。

晋山式の後は
初めて「山主」(さんしゅ)という立場で
常楽会の法会を行いました。

本来、この法会は
四座講式(しざこうしき)というスタイルで
夜を徹して、唱誦されるんです。

これは鎌倉時代の明恵(みょうえ)上人
(この方は自分の夢を克明に記録した
 『夢記』という著作もあります。)
が創作された、あらゆる日本の古典音楽の
ルーツミュージックと言われています。

でも、僕の住む地方では
一般の方も、この法会に参加されるので
一時間半ぐらいにコンパクトにして
行われます。

一時間半でも、一般の方は
相当長く感じられるようです。

その法会も無事終わって、
後は晋山の祝宴会です。

僕の挨拶では
「ほぼ日」の事も話しました。
トイレの回でアイデアメールが
何百件も来たことに
みなさん、相当、驚いていたようです。

樽酒があけられ、乾杯!

老僧もお酒が入って
口も滑らかです。

「ミッセイさん!
 今日から私は、
 あなたを“栄福寺さん”と呼べます。

 マタシャー、ウレシー!!。」

「でも、なんか一個、忘れてないかね?」

「?」

「じいちゃんの写真に、樽酒がないじゃないか!」

あわてて、樽酒をお供えする。

「やっときたか!って言うてるで。グワハハハハッ。」 

何時間にもわたる祝宴会も終わり
僕は一人になりたくて、
近くの池まで散歩しました。

うちに住んでいた犬の伝説が残る
「犬塚池」(いぬづかいけ)

少し高台になった所から観る
僕の住む地方は
笑ってしまうぐらい、
何もないようで、
全てがあるようで。

僕に、これから、なにができるだろう?

いままでどうも、ありがとう。

これからも、どうか、よろしく。

ミッセイ

2002-04-21-SUN

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