坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第40回 法衣屋がやってきた。

ほぼにちは。

ミッセイです。

今日は京都の法衣(ほうえ、お坊さんの着る服)屋さんが
来られていました。

この法衣屋さんは、お父さんの代から
四国に来られているらしく
母親の話によるとお父様は
フェリーで来て自転車で行商されていたそうです。

僕は今まで全部じいちゃんの
おさがりを着ていたので
自分用の法衣をいくつか
買いました。

オーダーメイドですよ。

法衣屋さんの話によると
“長さ”の寸法が合っていても
どこで「帯」をしめるか、とか
体型によって、色んな寸法は
ぜんぜん違ってくるらしいです。

一番下に着る「白衣」(はくえ)の既製品と
“あつらえ”が3千円の差額なので
僕の感覚では“お得”だと思いました。

スーツとかだとオーダーメイドって
すごい値段なんでしょ?
知らないけど。

また僕の僧階(そうかい、僧侶の位)は
「権大僧都」(ごんだいそうず)
という位なんですが
その僧階に被着が許されている
色衣(しきえ、色の付いた法衣)の色は
鳶色(とびいろ)なんです。
(紫と茶色が混ざったような色)
その色の素絹(そけん、法要の時によく用います。)
も作ってもらうことにしました。

お坊さんの世界では時に“地方の慣習”を重んじます。
(お葬式とかは地方によって、全然違う場合がある。)
僕の住んでいる地方では
僧階に関係なく、紫を付けることが多いんだけど
なんとなく、僧階に応じた色も
持っておくべきだと思ったのです。

けっこう仏教は“色”に関する規定が多いんだよ。
もっと本質的な話をすると
「袈裟」(けさ)というのも
サンスクリット語が語源で漢訳すると
「壊色」「不正色」「濁色」「濁染色」
みたいな意味になります。

これは、古代インドの人が好んだ
青・黄・赤・黒・白
のいわゆる五正色を避けた
混じった色・くずれた色
を使わなければならないからです。

つまり一般常識の“無価値”から“最上の価値”を
見出す“思想的決意表明”なんです。

じゃあ日本の
「この色を“許可する”」ってのは、
おかしいんじゃない!
って思いますか?
(日本でも、袈裟の色は僧階に関係ありませんが。)

中国や日本では僧侶は
国家公務員みたいな存在だったから
そんな“慣習”になっていったんだろうね。
思想的内容と同じで、その土地の価値観なんかで
宗教ってのは、色んな形に変化する一つの例だよね。

他のおすすめ商品は「なんとかミックス」(忘れた)
という素材の「改良服」(かいりょうふく)です。
(なんで“改良”かというと
 明治時代になって坊さんの平常用として
 考案された服だからです。
 みんなが、街で見かける坊さんは
 たいがいこの服を着ています。)

この素材は絹なんかの、
高価な服の隣に座ると“ちょっと安く”見えて
化繊(かせん、“化学繊維”の略です。)の
ポリエステル製とかの隣に座ると
“ちょっと高価”に見えて
「嫌みじゃない」素材らしいです。

なかなか大変でしょ?坊さんも。
でもまぁ、
重要な商談で派手なネクタイもなんだし
あんまり安物でも困るんだよぉ、君ィー!
ってノリでしょうか?

坊さん用のものは
何でも結構、高価で(需要が少ないからだろうね。)
お葬式に着るキンピカの「衲衣」(のうえ)なんかは
100万円を超えます!(安いのもある。)

これなんかは、もちろん手が出ないので
おさがりで十分です。

でも、ひそかに計画してるのは
じいちゃんの持っていた
すんごい古い衲衣を直してもらうことです。

僕たちの世代でも
古い着物の切れ端なんか見て
「新しいのより、素敵だな」
って思うことあるじゃないですか。
あの感覚。
他の人と“かぶらない”のもうれしい。

お坊さんが派手な服を着るのを
違和感のある人も多いと思います。

僕も、元々シンプルな感じが
好きではあります。(宗教には関係なく)

でも特に密教の場合
その儀式はインドの“王位継承”の儀式から
強く影響を受けてたりします。
(頭に水をたらしたりね。)

難しい所ではあるけど
「なんで、これを大事にしてきたのかな?」
というフラットで公平な視線は、持っていたいです。

ところでお坊さんは
法衣を付けたり、たたんだりするのが
すごく速くて、丁寧です。

いいお婿さんになれそうですよね。
マメな人が多いですし。

ちなみに僕は着替えは遅くて、
たたむのもヘタです。

おすすめできません。

ミッセイ

2002-03-20-WED

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