坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第35回 叫ぶ坊さん

ほぼにちは

ミッセイです。

結構、前の話になりますが

なんとか「大般若」(だいはんにゃ)という
行事が終わりました。

これは僕が住職になってから
一番プレッシャーのかかっていた行事なので
ほっと一息です。

どうして、そんなにプレッシャーなのかというと
30分弱の「ソロ」があるんです。

つまり僕(当番寺の住職)が一人だけで
お唱えする部分があるんです。

お唱えするのは
たぶん、みんなが普段聴くような
お経とはだいぶ違います。

「節」(ふし)とうメロディーがあって
大きめの声を出すところもあれば
「スカシ」といって“裏声”を出す所もあります。

たくさんのお坊さん、信者さん、地元の人の前でするので
これは、緊張するでしょ?

だから本番の何ヶ月も前から
近くのお坊さんに習いに行ったり
テープを聴いたりして練習しました。

でも、なかなか、うまくなりませんでした。

“義務感”が強すぎて集中できないんだよね。
“音楽”は僕にとって本当に大切なものだから。

そこで、僕はテープをMDにおとして
車で遠くに行く時はずっと聴き続けました。

そのメロディー、声、調子、メッセージの
“大好きな部分”を探そうと思ったんです。

僕は他の人が大好きな音楽を聴くのって好きなんです。

だから今回も“新しい音楽との出会い”だと
考えるようにしました。
(不謹慎だと思いますか?でも僕は、そうしました。)

先入観をすてて、聴いてみると、
好きな部分てケッコウあるんだよね?
「この部分、しびれるなぁ。」
なんて思いながら。

それで、なんとか波をつかんで
大般若の本番を無事迎えることができました。

しかし、びっくりしたよ!

大般若経というのは
600巻もあって文字数で言うと500万字ぐらい
(仏教経典では桁違いで最大スケール!)
あるので、とても行事の時間内では全部読めません。

そこで参加しているお坊さんが
一巻、一巻、経典をパラパラと
真言を唱えながら上から下に広げます。
(転読“てんどく”と言います。)

その前に逐一「だいはんにゃー」と大きい声で言います。

しかし声の大きさは常識の範囲内だと思ってたんですね。

でも、普段はおとなしいお坊さんも
かなり高齢の老僧も
もう、びびってしまうほどの大声で

「だぁーーーい、はんにゃゃーー!!」

と叫びまくるんです。

これは、かなりのインパクトでした。

坊さんて割と何をやってもインパクトがありますよね。

「ダルマさんが転んだ。」

と言う変わりに僕が子供の頃は、みんな

「坊さんが屁をこいだ。」

と言っていました。

僕は「坊さんが屁をこいだ」場面には
何度も遭遇したことがありますが

「叫ぶ坊さん」はこの衝撃を
遙かに越えるものでした。

初めて来られた信者の方は
とっても感動して、他のお寺でもあるのなら
ぜひ紹介して欲しいと言っておられました。

リピーターが多いのもこの行事の特徴です。

みんなも機会があればぜひ。

僕もじいちゃんのお骨の前で
「どうよ!じいちゃん。」という気持ちで
堂々と唱えることができました。

「まだ、まだぁ!」って言ってるだろうなぁ。

ミッセイ

2002-03-01-FRI

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