坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第34回 まずパンツ

すごい題名ですね。
ワクワクしますか?
そうでもないですか。
そうですか。

ミッセイです。
ほぼにちは。

今日、じいちゃんの本棚の中から
昭和30年代に出版された
「遍路日記」が三種類出てきました。

一つは坊さんが書いたもの。
もう一つは俳人が書いたもの。
それから「寮長」が書いた本です。

寮長の本は作者について詳しい記述がないので
よくわかりませんが

「女子学生を観て、昔世話をした寮長だ、
 と言おうと思ったが、やめておいた。」

みたいな記述がありましたので
寮長さんだったようです。
で、どれが面白かったというと
ダントツで寮長です。
とにかく「見たこと、思ったこと」
全部書いてるんですね。

遍路日記だから普通だったら
「何月何日(例えば)善通寺に向かう」とかから
始まると思うでしょ?

でもこの人の場合

「着物を着かえてパンツをはく」(抜粋、原文ママ!)
から書いちゃうんですね。

すごいね。

その他にも
「昨日の宿はひどかった。布団は敷かない、
 お茶は出ない、蚊帳は吊らない。
 でも、まぁ、千円、2千円が相場なのに
 3、4百円しか払ってないから
 しょうがないよ。
 修行者たるものこの待遇で十分っす。」

みたいな感じで書いてて
すごい当時の事がカラフルに見えてきます。

そうかと思えば
兄弟が公園で模型飛行機を飛ばしているところ
を細かく描写したりもして

「そして着陸の滑走までよい。」

と批評までしてしまいます。
いいね。

ところで
この三冊にはすべて
僕のじいちゃんが登場します。

どの人も
「若い青年僧」というイメージを
持ったみたいです。

そして「無類のしゃべり好き。」

“底抜けに明るい上に
 気難しい”

というのは
僕とじいちゃんの共通の性格です。

その内のひとりは
じいちゃんが、あまりに率直に
困窮している寺の経営状態について語るものだから
はっきり言って、引いてます。

ははは。

じいちゃんも、いいなぁ。

でも、多くのお寺も状況は同じらしいのが
読んでいるうちに、わかってきます。

そういう時代はまた、来るだろうね。

歴史ってこういう時、便利です。

「坊さん」しか“職業”を持ってない僕にとって
この事は、時々、すごい恐怖でもあります。

以前「食えない」時代を経験してないから
僕たちの世代のモチベーションが低いのかも。

ということを書いたけど
逆に言えば(逆なのかな?)
経験がないだけに(しかも想像はできる。)
よけい恐怖感が募るとも言えるんだね。

ネガティブなチラリズムです。

でも、そんな恐怖感なんてそこら中溢れてて
お金の話に不案内な人は
お金に対して恐怖感があるし
異性に対して
「だからオトコ(オンナ)って奴は、わかんねぇー」
というのも似たタイプの恐怖感だよね。

全部、解ろうとして脅えるのは、
人間の限界に対する
ポジティブなあきらめと謙虚さが足りなかったみたい。
悩んでいてもしょうがないので(悩んでいませんが)
とにかく「どうなるのか?」っていう批評家じみた予測より
「どういう状況を求めているのか?」
というイメージをできるだけ、たくさん持ちたいです。

そう考えると「どうなるか?」も
“結果的”に考える要素になるんだろうね。

でも

さっき

ガラスに映った「山の緑色」がとんでもなく
キレイにみえて
「これがキレイにみえてるだけで、いいや。
 ややこしい話は、なし。」
と思ったり。

生きてるっておもしろいね。

居心地いいような
悪いような。

ワクワクするような
めんどくさいような。

ヘンだね。

まぁ、ボチボチ、行こうか。

ミッセイ

2002-02-27-WED

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