坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第28回 “秘仏”について考え中

今日
檀家さんに手紙を書いてたんですが
「ほぼにちは」と思わず打ってしまって
あわてて消しました。

ほぼにちは!

ミッセイです。

昨年から今年にかけて
四国遍路はたくさんの写真家の方
が来られました。

いろんな目的、コンセプト、思い、があるんだろうね。

これからも、
“四国遍路”がいろんな人が集まる
“場所”にしていきたいな。

僕は
写真家の人に限らず
「クリエイティブ」に対して
“魅せられて”“敬意”
(「生活の大切な部分と感じている」という意味です。)
を感じている人が大好きなので
基本的にオープンな態度です。

でも「何でもあり」じゃないよ。もちろん。

でも、その中で僕が悩んでいる事があって
それは“秘仏”(ひぶつ)についてです。

秘仏というのはね

仏像を「厨子」(ずし)という
仏像安置のための仏具の中に入れて扉を閉めて
外からは見えないようにしていることです。

栄福寺の本尊は秘仏です。

特別な時や周期的に公開することもあって
それを「開帳」(かいちょう)と言います。

なんで隠すの?

と思う人も多いでしょうね。

“特別な崇拝”であることを
共同認識として確認するため、とか

外気に触れさせないための
環境的な問題であったり

セクシャルな表現形態の
仏像(けっこうある)なんかを観て
一般の人が誤解しないように
という説もあります。

そして
たいがいの写真家の人、テレビの人は
特別に開帳してほしい、と言われます。

“秘仏を撮影する”ということ自体が
コンセプトの写真集を予定している
写真家の方も来られました。

これは、難しい問題だね。

お寺さんによって
それぞれ考えが違います。

「ぜったいダメ!」
「NHKだけ許可する」
「人による」

色々です。

ちなみに今日
“秘仏を撮影するコンセプト”の
写真家の方から再度
丁寧な依頼が電話でありました。

結論的に言うと

「今回は見送ります」

ってお返事をしました。

四国88ヶ所霊場の中で
撮れていないのは、5ヶ寺だけという事だから
まぁ、ちょっとした
“スタンド プレー”なのかな?
わかりません。

見送った理由は
「秘仏」に対する僕のスタンスが、
まだ明確でないこと。
が大きいです。

でも
「解らないことは、すべきでない。」
って僕が考えてるかというと、そうでもなくて
部分的に曖昧な部分があったとしても
(場合によっては、ほとんど全部わかんなくても)
やってみなくては、見えてこないことも多い
と感じています。

でも今回は

「これは、予想以上に繊細な問題だな。」

って予感というか、直感がしました。

住職である以上、開帳の判断は僕がします。

僕はこういうことを、あまり言ってきませんでした。
それは、住職という立場は
僕が実力で頂いたものではないからです。

正直に言うと、その事に対する
“ひけめ”というか“居心地の悪さ”
もあります。

密教というのがすごく強烈に
“偶然”という言葉を重要視していることを
頭では理解していても、ね。

でも、僕が「私が決めます。」
って最終的には言わなければ
話が進まないことが多すぎることに
最近気付きました。

ばあちゃんも原則的に
「ミッセイさんが、決めなさい。」
というスタンスです。

そうは言っても「秘仏」は難しい問題ですね。

もちろん
写真集として
発売されることに“良い側面”も
あると思います。

でも、
写真として定着することが
100パーセント正しいかと問われると

「う〜ん」と考えてしまうので、
今回は撮りませんでした。

「これは神聖なものだから」
といってベールに包んでしまうことを
批判することは、
あるいは、たやすいかも知れない。

また“神聖なものと感じさせる”ための
「宗教体験の装置」が「秘仏」であるという
ありがちな話にも、僕は
「そうかも、しんないね。」と答えます。

でも、これだけは言いますが
今回の僕の態度は、僕なりの“宗教観”の
静かな提示でもあります。

“わからない”だけじゃない。

“もったいぶってる”わけでもない。

それは空(くう)という仏教思想とも関係した話だし
“視覚化”された存在に対する
仏教の根本的な疑いの視線と「秘仏」という装置とは
無関係でないと感じているからです。

ビジュアライズを否定してるわけではないよ。

むしろ大好きです。

ただ
“疑いの視線”を適用するのにぴったりな
“場所”“装置”があると感じているわけです。

僕のスタンスは、どんどん変化していくでしょう。

それでいいと思います。

僕が次に考えている
「開帳」は今年の4月7日です。
(今から色々な人に“相談”しますが)

この日は僕が住職になったのを
御本尊に報告する法会があります。

その記念にお葬式で着る衲衣(のうえ)を
新調したりすることが多いそうですが
僕は御本尊の修繕を考えています。

じいちゃんが痛んでいるところも
あると言っていたので。

実は、僕も、
「御本尊」を拝見したことがないんです。

その日、僕は
開帳を考えています。

お参りされた人も
直接観て参拝することが出来ると思います。

これが僕の今のスタンスです。

みんなの正直な感想を聞きたいな。

メール待ってます。

ミッセイ

2002-02-12-TUE

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