坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第16回 じいちゃんのお墓

ほぼにちは

密成です。

じいちゃんが亡くなってしまったので
お墓を作らなければなりません。

ちなみにじいちゃんは火葬でした。

ひいじいちゃん(坊さん)は遺言により土葬です。

僕は、坊さんですが
お墓については素人なので一から勉強です。

まず大きな墓地を持っている
先輩のお坊さんに相談しに行きました。

そこで
一般の方が最近作ったお墓を見せてもらって
産地による石の雰囲気の違いを
レクチャーしてもらいました。

そう言われると
結構、違う気がします。

そして、そこのお寺の歴代住職のお墓が
並んでいる所にも案内して頂きました。

そこで二人の意見が一致したのは

「“磨き”よりも“たたき”のほうが好き。」

って事でした。

“磨き”というのは文字通り石を磨いて
ピカピカにしています。

最近の普通のお墓はほとんど、磨いてますよね。

お坊さんのお墓も近い時代の物は
磨いている物も多いです。

でも、僕は石のそのままの表情が出た優しい感じが
じいちゃんに、ぴったりのような気がしたし

個人的にも
たたいた石の方が好きでした。

これは個人の趣味の問題です。

しかし、この判断が、なかなか
波乱を呼びました。

つまり、“磨き”に対して
「高級感」を持っている世代の人達は
“たたき”に対して反対のイメージを持ってることが
多いんです。

僕なんかは完全にフラットに好みの問題だと
捉えてますが。

というわけで
「なぜ、わざわざ“たたき”に?」
とずいぶん言われました。

しかも、この辺りで
“いい石”といえば「大島石」なんですが
この石は磨いたときが特に美しいとされてるんですね。

でも両方のサンプルを持って来てもらって
チェックした結果“たたき”がいいと
やっぱり思いました。

そして形ですが
真言宗の僧侶は「五輪塔」(ごりんとう)
というスタイルのお墓を作ることが多いので
形に関しては、それでいこうと思いました。

問題はその5個の部分に書く梵字です。

ここに、上から
「キャ」「カ」「ラ」「バ」「ア」という文字を
梵字(昔のインドの文字)で入れるんです。

これは下から
「地」「水」「火」「風」「空」
という意味があります。

「一切の存在物は
 地面があって水があり火があって風が吹く
 そしてその上には、空がある」

という感じに僕はイメージしています。

つまりお墓に「世界」を作るんです。

この文字を彫るための元となる字は
じいちゃんのお兄さんが徳島で健在なので
(お坊さんです。僕の親戚は坊さんがすごく多い。)
電話してお願いして、
法事の時に持ってきてもらいました。

じいちゃんも喜んでいると思います。

しかし、以前、お話した例の
「友引」と「とり」の重なった日
(レジャー日和でしたね。)
その先輩のお坊さんが寺に来てくださって

「ミッセイさん、実は、前々から、
 気になっているお墓があってね。

 連れてってあげるから、今から行かない?」

ということで、とあるお寺のお墓を見に行きました。

そのお墓の加工法はちょっと変わっていて
ちょうど“たたき”と“磨き”の中間のような
素材感でマットな感じです。

つや消しっぽい感じ。

「これなら、自然な感じが残ってるし、
 荘厳な感じもある。
 今残ってる昔のお墓って
 時代を経て、荒々しい風合いになってるけど、
 元々こんな感じだったのかもね」

「そうですね。うん、うん、これは、いい!」

というわけで、早速、石屋さんに
このお墓の事を話して相談してみました。

「あのテの、やり方は石を選びます。
 目が凄く細かい石じゃないと。
 そうだなぁ。
 庵治石(あじいし)とか
 ポルトガルでも出ます。

 あとインドですね。」

インド! 閃きましたよ、 弟子 ミッセイくん!

インドで生まれた仏教が遙か日本に伝わり
その法を受けた僧侶が
再びインドの石に還ってゆく。

そんなイメージが頭を駆けめぐりました。

「インドで!」

「大島石と同じ値段ですよ。」

(ミッセイ、ばあちゃんを見る。)

(ばあちゃん、深く、頷く)

「(せーのっ)インドで!!」

この他にも場所の問題とか、大きさとか
色々決めないけない事が、いっぱいです。

インドの石に関してもサンプルを見るまで
わからない部分もあります。

でもじいちゃんのお墓に
“感情”を込めるために
僕はがんばりますよ!

以前、兄とお寺の存在意義について
話していた時、彼は

「“思いで”の記憶・再生装置としてのお寺」

という言葉を使いました。

「メディアとしてのお寺」
の重要な一部分だよね。

その意味でも
じいちゃんのお墓にはありったけの
感情を込めます。

みんなも

「自分のお墓はこうしたい!」

っていう視点でお墓を観てみてくださいね。
(“お墓”の有無も
 個人の問題になってくるかもね、これから)

けっこう楽しいですよ。

ミッセイ

2002-01-16-WED

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