本屋さんがひしめく街・神保町のなかでも、
つねにたくさんのお客さんでにぎわう
三省堂書店 神田本店さん。

このお店の「顔」である1階を担当され、
『三位一体モデル』をはじめ、
「ほぼ日ブックス」を強くプッシュして下さっている
秋山弘毅さんに、お話をお聞きしてきました。







── 今回、「ほぼ日ブックス」フェアとして
大きく展開して下さっているのは、
いったい、どうしてなんでしょう?
秋山 まず、発売前から
本に対してたくさんのかたが
応援してくださっていたようですよね。
── はい、本を編集しているようすを
リアルタイムにお伝えしていたときから、
たくさんのみなさんに
はげましのメールをいただきました。
秋山 ですから、そういったお客さまの存在を
あるていどイメージできたんです。

そして、もちろん、
本そのものの「ちから」もありますよ。

よしもとばななさん、
中沢新一さんというおふたりの新刊に、
「ほぼ日」のクロニクル本が出版されると聞いて、
これはフェアで展開しよう、と決めました。

── なかでも『三位一体モデル』に
力を入れて下さったのは?
秋山 そうですね‥‥。

第一に、この神田本店では、
中沢先生の著書が、かなり人気だということ。

『アースダイバー』なんかは
全国でも売れ行きベスト5くらいに
入っていたと思います。
── 来店されるお客さまのなかでは
とくに40〜50代の男性が多いんですよね。
秋山 もちろん、あらゆる年代のお客さまが
ご来店くださいますけれど、
その世代のお客さまの割合が高いですね。
── お買い求め下さっているのは
ビジネスマン風のかたが多いんでしょうか?
秋山 パーセンテージでいえば
高いと言えるかもしれませんが、
他の中沢先生の著書とくらべると、
比較的、若いお客さまも多いと思います。

男女比も、それほど感じませんし。
── それ以外に『三位一体モデル』を
応援して下さっている理由として
何かございますか?
秋山 現在の出版業界でいいますと、
「新書」という形態が
いちばん売れ行きのいいジャンルなんです。

なかでも、
いままでは「人文書」の分野で
活躍されていた作家さんが、
「新書」というスタイルで
本来はむずかしい内容を
分かりやすく伝える本が出てきました。
── 養老孟司さんの『バカの壁』に
代表されるような?
秋山 ええ、ええ。

去年のベストセラーである
藤原正彦さんの『国家の品格』なんかも
そうですし。
── 新書ではないですが、
この『三位一体モデル』も、
そんな位置づけの本ですよね。
秋山 ですから、お客さまから
そういった本を求められている、
という環境があったこと。

そして、中沢先生のお名前が
爆笑問題の太田光さんとの共著の
『憲法九条を世界遺産に』で、
一般の人々のあいだにも
メジャーな存在になってきていた、
というのも、ひとつの大きな要因でした。
── とても話題になった本ですよね。
秋山 これまで中沢先生は
いわゆる「人文書」のカテゴリーに
相当していたかただと思うんですよ。

ですので、新書とはいえ、
そういう作家さんの書いた本が
これだけ売れるというのは、
めずらしいというか、最近の現象だと思います。
── 『三位一体モデル』の
受け止められかたに関しては、
どんなご感想をお持ちですか?
秋山 旬のビジネス書や実用書の
ベストセラーと同じレベルか、
あるいはそれ以上の売れ行きですね。

でも、だいたい読みどおりです。
── おお! 読みどおり! すごい!!
秋山 『アースダイバー』、
『憲法九条を世界遺産に』という流れから、
いままさに中沢先生の機が熟しているなぁ、
という感じを受けていたんです。

そういうタイミングのときに
『三位一体モデル』が、
一般の人にも手にとりやすい
思考モデルを描いた本として出版された、
ということが大きいんじゃないでしょうか。
── なるほど!
秋山 そういった意味では、
中沢新一先生というのは
養老さん、藤原さんに続いて、
2007年の代表的な論客と
なる人なんじゃないかな、と思っています。

── ベストセラーが生まれるときって
なにか「気配」のようなものがあるんですか?
秋山 うーん、難しいんですけれど‥‥。

さきほども話に出た
養老孟司さんの『バカの壁』のときは
よく覚えていますよ。

この本はたしか、新潮新書の
新刊10点のなかの1冊として出版されたんです。
── 3年くらいまえですね。
秋山 本の内容としては
すらすら読めてしまう本ですし、
タイトルのつけかたも、斬新でした。

でも、当時の養老孟司さんは
解剖学の分野では第一線のかたでしたけれど、
一般のかたがたには、それほど
知られてはいなかったように思うんですよ。
── ええ、そうかも知れません。
秋山 でも、初日からもう、売れていた。

10点のラインナップのなかでは
だいたい3番めくらいの売れ行きかなって
予想していたんですけれど、
初日から、いちばんでした。

これには、いわゆる
「本そのもののちから」を
あらためて、感じさせられましたね。
── こんなにたくさんの本が
並んでいるなかから
ベストセラーがうまれていくって、
ほんとうにすごいことですよね!
秋山 なにか考えるヒントになるような本や、
ビジネスに関する思考法の本を
お探しになっているお客さまって、
つねに、たくさんいらっしゃるんです。

世のなかのしくみについて
なにかが知りたい、とか‥‥。

ですから、『三位一体モデル』も
一般に応用の効きそうな
思考のモデルを扱っている本なので、
今後の動きを楽しみに見守りたいですね。
── ありがとうございました!

<終わります>

2006-12-07-THU