この「言いまつがい」はなぜ起こるのか? ケース17「地名なのか、人名なのか」  昔、上司に「金沢さん」という人がいて、 彼は名前を名乗るとき 「福井支社、武生(たけふ)営業所の金沢です」 と言うので、相手の人は、彼がどこの誰か 理解できなくなってしまう事がありました。 その度、「ややこしくて、すみません」と なぜか謝ってしまう、とても真面目な人でした。 (福井っ子)





これは、厳密にいえば、
「言いまつがい」とは違うのでしょうが、
たいへん興味深い事例ですね。

人がことばを受け取るときに
いかに頭を働かせているかというのがわかります。
つまり、聞く人の頭にある知識が、
正しい理解をさまたげているわけですね。

「金沢」というのは、
地名と人名の両方が存在する固有名詞です。
「福井」もそうですね。
「武生」というのも人名にあります。
つまり、そのことばを聞いたときに、
それが人名か地名かというのを
過去の記憶に照らし合わせて理解しようとするので、
人名だか地名だかわからなくなって
聞いた人が混乱してしまうわけです。

たとえば、日本の地名をまったく知らない人であれば、
「福井支社の武生営業所の金沢さん」というのは
「福井支社の武生営業所の金沢さん」でしかないわけで、
混乱もなく、理解できてしまうはずです。

もっというと、
「福井県」に「武生」があって、
「福井県」の隣の石川県に「金沢」がある。
近い場所にある複数の地名が
ひとつのことばの連なりの中に登場するので、
いっそう、混乱を招くのでしょうね。
つまり、言語と地理の知識が、
この混乱を生んでいるわけです。
いや、これは高度ですね。


・ことばを理解しようとするとき、  人は瞬時に過去の知識に照らし合わせて考える。 ・知識が理解を助けるときもあるし、  知識が理解のさまたげとなるときもある。


2007-05-01-TUE



(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN