『せいくらべ』という歌があります。

歌いはじめが「柱のきずは、おととしの」ですね。
こどもが、背の高さのところにきずをつけた柱をみて、
いろいろのことを思っているんですね。
「柱のきず」そのものは、ただのナイフの跡なのに、
その柱のきずは、見る人にいろんなことを思わせる。

きっと、空に浮かんだ雲でも、
道端に落ちている軍手でも、野良猫の昼寝でも、
同じようなことがあるでしょう。

そいつは、もともと、
たくさんのことを語るつもりじゃなかったのに、
眺めている読んでいる人との間に、
いろんな思いを生み出してしまう。

いや、世界ってものは、
そんなことばかりなのかもしれません。

こんどのこの本は、2007年という年に刻んだ、
ぼくの「柱のきず」を集めたものです。
ここに集められたことばも、写真も、
もうちょっと消えてしまうところだった、
危ういところで拾われたなにかです。
目にとめてもらえたら、きっとよろこぶなにかです。
なにかは、なにか思ってもらえるだけで、
あなたに、とても感謝します。

2008-02-13-WED





(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN