自転車思想。
チャリンコは、未来そのものの顔をしている。

ブレーキ問題


こんにちは。

以下のようなメールが、
ほぼ日の読者さんから届きました。
僕の担当であるシェフ武井さんも、

> そ、そうだったのか!
> これぜひページで答えてほしいです!

とおっしゃってるので、
ズバリと答えちゃいましょう。
では、そのメールから。

> 現在、アメリカはカリフォルニア州に留学中の身ですが、
> 自転車に関して素朴な疑問があります。
>
> 日本では一般に自転車のブレーキは右手が前、
> 左手が後ろを
> 駆動するようになっていますが、アメリカでは逆に
> 左手が前、右手が後ろを駆動します。何故なのでしょうか。
>
> 自動二輪に関しては
> 日米共通で右手が前を駆動するようです。
> 世界の他の地域では
> どういうことになっているか知りませんが、
> アメリカの自転車が例外ということになるのでしょうか。
> 何か歴史的な背景や理由があるのでしょうか。
>
> 私の身近に答を知っている人がいません。
> 自転車の専門家で、
> かつ国際派でもあられるエノモトさんの知識をぜひとも
> 拝借したいと思い、メイルを差し上げました。
> 何か知っておられたら、教えていただけないでしょうか。

以上、Daisuke Aoyagiさんからのメールでした。

これを理解するためには、
まず3つのことを頭に入れておいて下さい。

1、自転車にはオートバイのようにウィンカーがない。
2、自転車は車やオートバイと比べると、基本的に遅い。
3、自転車は、軽い。

この3つです。

まず、自転車にはウィンカーがありません。
ま、中には付けてる人もいらっしゃいますけどね。
普通は、ない。
っていうことは、
自転車に乗ってる人が後ろの人や自転車や車なりに、

「おいらは止まりたいんだよぉ。」
「左(右)に曲がりたいんだよぉ。」

などと伝えたい時には、
後ろを向いて大声で叫ぶ・・・、じゃなかった、
手を使って意思を伝える必要が出てきます。
皆さん、昔学校で習いませんでしたか?
そう、いわゆる手信号です。
恥ずかしがってやってない人も多いけど、
あれはやった方がいいよ〜、オススメ。

次に、自転車は基本的に遅い。
(もちろん、体力とか自転車の種類によっては、
 車より速い時もありますけどね。)
だから、自転車が車道を走る場合、
スピードの異なる車やバイクと一緒に走るよりも、
車道の端っこを走ることが多くなります。
ま、法律でも端を走行しなさい、
って書かれてるんですけど。

最後に、自転車は軽い。
だから、下手にブレーキをかけると転んでしまいます。
特に危ないのが、前輪だけ強くブレーキをかけた時に、
後輪が跳ね上がってしまう状態です。
これも昔学校で習ったんじゃないかな?
ちなみに、このことを専門用語でジャックナイフと呼びます。

ではでは、
この3つを合わせて考えてみましょう。
法律上では、自転車は手信号をしなくてはいけません。
そして、車道の端を自転車が走る場合、
その手信号を伝える相手(車とか)は、
大抵車道中央側の後方にいるはずです。
日本だったら左車線ですから、
右後方に対して手信号を出すことになります。
で、片手だけで前ブレーキをかけると、
ジャックナイフの危険性があります。

ということは・・・。
右後方の相手に対して手信号を出すためには、
当然右手を出した方がわかりやすくって、
その時は左手だけでブレーキをかけることになります。
だから、左側に後ろブレーキがついていないと、危ない。

そういうわけで、左車線の日本では
右が前輪、左が後輪のブレーキになっているんです。
アメリカは、日本と逆に右側通行ですから、
自転車のブレーキも逆、
右が後輪で、左が前輪ブレーキになります。
スゴーク合理的でしょ?

オートバイの場合は、
車と一緒に走るし、ウィンカーも付いてますから、
ここまで考える必要もないんですね。

ちなみに、僕がシカゴにいた時、
ホームステイをしていたジェームス君は、



僕の自転車見て、

「ブレーキが前後逆だ、おかしい!」

とおせっかいにも忠告してくれました。
だから、僕は上に書いたような事情を説明したら、

「あ、そうか。納得したよ。」

と言ってましたね。

アメリカ人が全部そう、と言うつもりはないんですが、
相手の国事情とかを知らないまま、
他人を教育しようとしたり、
自分たちの正しいことを押し付けようとするのかなぁ?
ふと、そんなことを思っちゃいました。

自転車のブレーキからだって、
お国柄とか、国民性が見える時だってありますよね。

Ride safe!

2001-11-16-FRI

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