自転車思想。
チャリンコは、未来そのものの顔をしている。

第48回  自転車思想・京都版外伝

こんにちは。
東京は、ここのところ涼しい日が続いています。
雨も、ときたま思い出したように降っています。
クルマも自転車も、
降り始めが一番スリップしやすいですよね。
お気をつけください。

旅行中というのは、開放感のせいか、
友達同士でも普段だったら話さないような、
突っ込んだ会話をしたりしますよね。
このチャンスを生かさない手はない、
と思って、友達の自転車乗りにインタビューしてみました。
その人と自転車のつながり、その歴史を、です。
まずは、東京のamiさん、という人です。
本人の希望で、本名・写真は非公開なんですが、
インタビューしてる僕も、とても楽しく話を聞けました。
文体がいつもの違ってますけど、
それは会話文との違いを出すためです。
それでは、どうぞ。

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amiさんは、謎めいた人。
東京のクリティカルマスや、
さまざまなお楽しみライドにも積極的に参加している。
今回、バイクサマーで京都にも来た。
でも、amiさんは自分のことをあまり語らない。
僕らの、時には口角泡飛ばす会話を、
ニコニコして聞いている。

そして、お洒落な人でもある。
160センチ弱の小柄な体に、ツンツン立った短髪、
自転車に乗る時は、シンプルなサングラスを愛用している。
普段の服装はモノトーンを基調にしていて、
最近は、マンハッタンポーテージの、
これまた黒いメッセンジャーバッグを背負っている。
以前は、マーチンのメッセンジャーバッグを使ってたけど、

「最近、これ使ってるメッセンジャーが多いんで、
 新人メッセンジャーと思われちゃうから…。」

なーんて、ちょっと毒のある発言をしたりもする。
つい最近も、老舗のオーダー自転車屋さんで、
マットグリーンのロードレーサーを注文。
(ちなみに、タイヤは前後24インチ!))
世界に一台だけの自転車を手に入れた。
悔しいけど、これまたカッコイイ。
だから、みんなに興味を持たれ、
時にはからかわれたり、オモチャにされたりするけど、
余裕たっぷりの笑顔で、動じない。

そんなamiさんから、改めて話を聞いてみた。
そしたら、驚くべき街を楽しむ達人だった。

京都生まれだけど、すぐに東京へ。
そのまま東京育ちで、現在34歳。
職業はコンピュータのシステムエンジニア、
勤続11年、ずっと今の会社にいる。

自転車に初めて乗ったのは、小学校2年か、3年の時で、
中学校くらいまで乗っていて、
その後は、しばらく自転車から離れていた。

高校くらいから、ラーメンの食べ歩きにハマル。
情報誌やグルメ誌、
懐かしい『東京味のグランプリ』なんかを片手に、
東京のいろんな街を散策するようになった。
大学〜社会人となるに連れて、
食べ歩きの守備範囲は、
ソバ・紅茶・中国茶・パン・ケーキなどにも広がる。

さまざまな食べ歩きの経験を積むことによって、
雑誌などに頼らなくても、街を歩いているだけで、
美味しそうなお店を発見できるようになってきた。
こうなると、街歩きはやめられない。

「就職活動中も、面接の1時間くらい前に到着して、
 その会社のある街を歩いてたりしてましたよ。」

散歩していて、気がつくと渋谷から新宿まで歩いていた、
そんなことも決して珍しくなくなっていた。
この頃から、amiさんの中で自転車に対する興味が、
ジワジワと沸き起こってきたようだ。

「代官山とかで、自転車に乗っていたら、
 地元の人っぽく見えるじゃないですか。」

けっこう、見栄っ張りでもあるらしい……。

それから1年くらいたった頃、
映画『メッセンジャー』のことを知る。
ここで、フォーカスは完全に自転車に定まった。

「やっぱり自転車が面白そうだな、って思って、
 東急ハンズで赤いプジョーのMTBを買ったんです。
 39、800円くらいだったかな?」

自転車から離れて10年以上、
久々に自転車に乗った感想は、

「気持ちいい!」

の一言に尽きた。

自宅のある西東京から、新宿まで移動するとして、
バスと電車を乗り継ぎながらの所要時間と、
直接自転車で新宿に行くのにかかる時間が、
実はほとんど変わらないことにも気がついた。
都心部で、自転車の持つ移動能力の高さを、
体で実感した、ということだろう。

その事実は、趣味である食べ歩きにも大きな影響を及ぼす。
徒歩だったら、新宿〜渋谷間がせいぜいだったのに、
自由が丘〜代官山・恵比寿〜渋谷〜青山〜新宿、
こんな広範囲の移動が可能になった。

「お店をたくさん回れるのはいいんですけど、
 今度は食べきれなくなっちゃいましたね。」

と、笑いながら語ってくれた。

こんな風に、amiさんは改めて自転車と出会った。
今は都会の裏道や、路地を自転車で散策するのが楽しい。

「裏道を知ってるのって、カッコイイですよね。
 風情のあるいい感じの裏道があって、
 そこにいいお店がたくさんあるような
 そんな街が好きなんです。」

裏道があって、食べ物・飲み物のおいしい街、
amiさんは、こんな風に断言した。

「海外旅行するんだったら、パリで、
 国内だったら東京と京都にしか興味がないんです。」

東京育ちのamiさんにとっては、
普段自身が東京でやっている街の楽しみ方、
それができる所でないとダメということらしい。
これもまた、スタイリストならでは、という気がする。

amiさん、今度京都行ったら、
南禅寺『瓢亭』で朝粥食べましょうね!

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Ride safe!

2001-09-11-TUE

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