自転車思想。
チャリンコは、未来そのものの顔をしている。

第45回 8/25、午後1時に京都市役所前。

サンフランシスコの夏は涼しくって、
夜ともなれば、フリースが欠かせないくらい肌寒い。
でも、自転車で走るには、ホント気持ちのいい温度です。
時刻は午後10時くらい、
場所はゴールデンゲートパーク。
造成された公園としては、全米一の大きさです。
日本の公園と違って、街灯も少ないので、
心細いことハナハダシイ空間です。
人の気配は全くありません。
どこからともなく、異臭がプ〜ンと…。
それは、スカンクの発する臭い。

細長い公園を、2/3ほど走った頃でしょうか?
前方の道路脇のくさむらに、クルマが停まっていました。
正確には、窪みにはまってスタックした状態です。
モノスゴイ勢いで、タイヤが空転していました。
ドライバーは、一体どれだけの時間そうし続けてたのか、
タイヤの摩擦熱から、きな臭い臭いがたちこめていました。
そのうち、草にも熱が伝わり炎がチラチラ見えてきました。
近寄ってドライバーに呼びかけたものの、
酒か、ドラッグのせいで、ドライバーは意識混濁状態、
こちらの存在など、気がつかないようです。

炎は、だんだん大きくなってきます。
クルマの底の部分にも、炎が当たるようになってきました。
ハッキリ言って、危険です。
僕たちは、クルマから離れ、
ひとりは、公衆電話を探しに行きました。
残された僕らは、決して多くはない、
その道路を通る他の自動車のドライバーに呼びかけ、
携帯電話から、消防署と警察に連絡してもらいました。

どうやら、クルマの床からも煙が出てきたようです。
このままでは、ガソリンタンクが加熱され、
クルマ全体が爆発するかもしれません。
僕たちは、クルマからかなり距離を置いて、
消防車の到着を待ちました。
怖い、と思うと同時に、
自分はとんでもないところで、
とんでもない事態に遭遇してるんだなぁ、
なんて、妙に冷静で不謹慎な考えの自分もいましたね。

そんな僕の心を見透かしたかのように、
カナダ人のケビンが、突然自動車にダッシュしました。
見るからに神経質そうな銀縁メガネで、
環境問題と、大企業の悪行を早口でまくし立てるのが得意。
正直に言って、僕が苦手とするタイプです。
そんな彼が、クルマに近づき、ドアを強引に開けて、
泥酔状態のようなドライバーを、
無理矢理運転席から引きずり出しました。
そして、1分もしないうちに、消防車とパトカーが到着。
火は消し止められました。

発見者、通報者としての、簡単な取調べの後、
僕たちは警察から開放されました。
なんでも、そのドライバーは街の中心部で、
事故を起こして逃走中だったそうです。
だから、僕たちの呼びかけを無視したんですね。

数十分後、僕たちは海岸通りに面したバーで、
盛大にビールを飲んでいました。
バーベキューをもじって、
「カーベキュー」
なんて言いながら笑っていると、ケビンが言いました。

「あのクルマのボディーに、
 "One Less Car"ステッカーを貼っておけば良かったな。」
(クルマを減らそう、っていう意味ですね)

それでまた大爆笑。
ウ〜ン、今思い返しても強烈な体験だなぁ。

それにしても、怖気づいて動けず、
心のどこかで爆発を待ち望んでいたような僕と比べて、
危険を冒してまでドライバーの救出に向かった、
ケビン君の勇気と正義感はすごかったです。
自分の小心さと、
器の小ささを思い知らされるような気がしました。

これが、「タイムズアップ!」の夜に起きたことの全て。
こんなことは、まず間違い無く京都では起きないので、
今週末京都に行ってみようかなぁ、という人ご安心を。
……たぶん、ないですから。

バイクサマーは、僕が最初想像したものとは違って、
いい意味でジミな、草の根的なものでした。
それは、翌年のシカゴバイクサマーで、
よりいっそうハッキリと認識できたと思います。
輪をかけてジミでしたからね。
それでも、今年もまたバンクーバーで、京都で、
バイクサマーの名のもとに、人が集まります。

バイクサマーという、コンセプトが現れてまだ3年。
まだわからないよ、どうなるか。
とりあえず、8/25、午後1時に京都市役所前。

Bikesummer
Vancouver 2001


今年は短期間ですけど、京都でもやりますよ!

BikeSummer KYOTO 2001

もちろん、僕は行きます!

Ride safe!

2001-08-24-FRI

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