YOSUI
井上陽水・
ゴールデンバッド対談。

井上陽水のB面は、一筋縄ではいかないぞ。

第16回 ブイブイなものって、なんなんでしょうね?



糸井 憧れの人に会って、アガるというのは、
相手が自分をどう見てるかにもよりますよね。
武満徹さんと会うのは平気だったんですか?
井上 武満さんは、そうねぇ……、
平気だったねえ。
糸井 おかしいなぁ。
僕から見たら、吉行さんよりも
武満さんの方がむずかしそうに見えますよ。
井上 武満さんは……なんか、
「わからない」同志で……。
糸井 ああ、そうか(笑)。
井上 ……武満さんもすごい顔してるねぇ。
「すごい顔」っていうのは、つまり、
なんて言うんだろうねぇ……。
糸井 キャラそのものですよねえ、あれが。
井上さんがアガる人って、他にはいないの?
吉行さんと阿佐田さんの2人が
やっぱり飛び抜けてるの?
井上 でも、あれよ、それこそ、パフィーとかさ、
ああいう人がパッと来ると……アガる。
むかし、玉置浩二が
安全地帯でブイブイいわせてたときに、
彼に会っても……アガってた。
「まいったなぁ」みたいな(笑)。
糸井 “ブイブイいわせてる時期”って、
みんなありますね。
あのブイブイなものって、なんなんでしょうね?
「ブイブイパワー」……ある!(笑)
パフィーがデビューする前に、
僕、彼女たちに紹介されてるんですよ。
そのときは「顔、似てるねー」なんて
普通にしゃべってたんだよ。
で、そのずっと後、奥田民生くんの楽屋で
パフィーが“鞠つき”してたことがあって、
前に話したことあるはずなんだけど、
なんか、ちょっと遠くを歩いたもん、俺。
もう、そのときは“ブイブイ”だったんですよ、
「黒のパンダ」とか言いながら……、
あっ「白のパンダ」か(笑)。
井上 「今、すごく派手に世の中に出てる」という人だと、
ま、ちょっと敬遠したい、って感じはあるのね。
糸井 「冷めるのを待ってから」みたい気持ちあるよね。
「今は、熱いから」って。
井上 ……病気なんだから、って。
「今、アナタは熱に冒されてるから、
 ちょっと冷まして」と(笑)。
糸井 木村拓哉くんがそうですよ。
彼の楽屋に行った歴史があったとして、
1回ずつ全部ちがいますよね。
階段の上にいますよね。
井上 あの人……なーんか、
ブイブイ状態の時間が長いけどさ、
たまたま、8チャンネルの27時間テレビで、
奥田民生と唄ってるのを見てね、
この人もずいぶん長い間さ、
ブイブイ状態が続いてるわけだよね。
ま、なんて言うんだろ、
本人もそれなりに、まっとうなものもあるだろう……、
けども、こう長い間ブイブイが続いてるとさ、
そのまっとうなところを無くさないように、というか、
必死に歯をくいしばって、まっとうでいよう、というか、
……なんとも言えない顔になってる、
なんとも言えないというのが
本当にぴったりなんだけど……。
糸井 すごく意識的に
「よいしょ!」ってスイッチ替えないと、
戻るのむずかしそうに見えますよね。
ただ、あの子はブイブイの時に、
「自分はブイブイではない」と思ってたんですよ。
「自分はブイブイじゃないっスから」の状態で、
けっこう長く暮らしてたんですよ。
で、あそこで積んだ練習みたいなものが、
今になって活きてますよね。
井上 けっこう、タフになってるのかな?
糸井 タフですよ。
僕が鼠穴に引っ越しする寸前くらいの時だから、
十分ブイブイのときに、
前の青山の事務所にフラっと遊びにくるときに、
近くのハンバーガー屋で、10コくらいさ、
「みんなも食うと思って」みたいな買い物して、
そのまま僕の事務所に寄る、みたいなことを
してましたから。
そういうことをやった方がいいという
イデオロギーがあるんですよ、あの人。
でも、しんどいだろうねえ、
耐えるの辛いだろうねえ、本当は。
そのタフさを持ってるだけで、
さっき話がでた、花礼二じゃないけど、
一本すごい鋼があるよねえ。
井上 うん、すごい。
糸井 できないよ。
で、やっぱり、波はあるんでしょうね、きっと。
でも、カメラ回ったら、
そっちのモードにカチーン!と行けるところが、
やっぱり才能でしょう。
本当にすごい才能だと思うよ。
でも、奥田民生くんもすごいじゃないの。
井上 うん。すごい。
彼はもう、天然系だから。
糸井 奥田民生くんが井上さんと一緒に音楽やってたときは、
ただ一人の後輩としていたでしょ?

(つづく)

2000-08-23-WED

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