夢か馬鹿か。
水中考古学って、知ってますか?

第4回 アゾレス諸島へのクロスロード

ポルトガルと北アメリカ大陸の間の大西洋上に
アゾレスという名の小さな島々があります。
このポルトガル領アゾレス諸島のひとつに
テルセイラ島があります。

1996年から1997年にかけて、
このテルセイラ島の南東部にあるアングラ湾を舞台に、
アメリカ・ポルトガル・アゾレスの考古学者らが
協力しあって、難破船の調査をおこないました。

歴史的にみても、そのアングラ湾には、
それこそ物凄い数の、しかも色んな国の、
色んな種類やかたちをした船が
眠っているというのです。

そうなんです。ここは知る人ぞ知る
難破船の宝庫ともいうべき場所なのです。
なぜって、ここはあのコロンブスが夢にみた、
黄金の国「ジパング」をめざし西へと旅立っていらい、
ヨーロッパの船ぶねの寄港地となったところです。

そのアングラ湾の波止場は、
食料や飲み水の補給、船の修理などで立ち寄る
各国の貿易船で常にひしめきあっていました。
でも、そこは必ずしも安全な避難場所とは
限らなかったのです。

たとえば、風がシフトして風向きが南東に変わると、
それこそしばしばメチャ猛威をふるって、
港にアンカーリングしている船々をワナに陥れるのです。

地元住民は、その猛烈な南東からの風を、
「大工の風」と呼んでいます。
難破して浜辺に流されてきた船の木材が、
建物を建てたり家具をつくる材料として
テルセイラ島の大工に珍重されたからなのです。
まさに、「風が吹けばオケヤがもうかる」
といったところでしょうか?

さてさて、アゾレス諸島が発見されたのは、
ポルトガルの偉大な大航海時代のはじまり、
つまり1420〜1430年代の頃でした。
その当時、アフリカ沿岸の探検を終えて、
家路につくポルトガルの船乗りたちの目に映ったのは、
重たく垂れこめた霧のなかに
かすんでみえる無人の島、
アゾレスだったのです。

アゾレスとは、ポルトガル語で
その山に昔から住む「オオタカ」という意味だそうです。
発見されてから間もなく島は、
森林や農園をきりひらく
ポルトガルからの移住者によって、
植民地化されていったのです。

さて、この続きはまたあとで!
つぎはいよいよ沈没船さがしです。

井上たかひこ



「水中考古学への招待」
井上たかひこ著 成山堂書店
2000円(税別)
ISBN4-425-91101-6

2000-05-18-THU

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