〈ほぼ日関西版〉 明るい家族相談室 たのしきかな、家族。続編

相談5 ひきこもりの妹。

はじめまして。
私には2歳年下の妹がいます。
妹は10年間、筋金入りの
「ひきこもり」をやっています。

高校2年生から、26歳のいままで、
家の外には一歩も出ずに、
父と母としか口をきかず、
自分の存在がなかったかのように
ひっそりと暮らしています。

なにもしないのは申し訳ないのか、
外に出なくてよい家事の手伝いをやっています。

絵を描いたり、ものを作るのは好きで、
一時は消しゴムハンコを作り、
この冬は、かぎ針編みにハマったのか、
ブランケットやマフラー、玄関マットや
モチーフのついた飾りものを編んでいました。

エンジンはあるんです。
何かきっかけがあれば
社会に出られると思うのです。

10代後半から20代の楽しい時期を
ひっそり家の中で過ごす妹を見ていると
なんとも言えない気持ちになります。

順当にいけば、先に父と母がいなくなります。
私が妹を養っていけるのか、
それも不安です。

すぐに自立を望んでいるわけではないけれど、
また笑って、
兄妹で遊びたいなと思うのです。

何かいいきっかけはないでしょうか?

(相談者:もじゃもじゃ)


答え
ほぼ日 ひきこもりの妹さんがいる、との相談です。
かおり これは、お姉ちゃんが、
妹の心配をして投稿してくださったのでしょうか?
ほぼ日 いや、ちがうようです。
「兄妹」と書いておられますので、
お兄さんですね。

かおり やさしいお兄さんですね。
ほぼ日 26歳の妹さんで、28歳のお兄さん。
かおり 私がそのぐらいの歳のとき、
妹のことをそんなふうには思わなかったですよ。
しかも「兄妹で遊びたいなと思うのです」って‥‥
たいがいの兄は妹に「ブス」とか言うてますよ。
ほぼ日 ほぼ、兄という生きものはそうですね。
かおり この、妹さんが編む毛糸やかぎ針などは、
誰が買ってきてくれるんでしょうか。
ほぼ日 ネットショッピングでしょう。
ネットというものが
人をひきこもらせる一因になっていますね。

かおり そうやねぇ、パソコンで
好きな毛糸を好きな時間かけて
選べる時代ですもんね。
外に出るのが、なぜいやになるんやろう?
ほぼ日 うーん。
それはやっぱり、対人ストレスが
あるんじゃないでしょうか。

かおり 人に少しずつ慣れていけばいい、
ということなんでしょうけど‥‥

こういう人は、わりと
ものを作るのがうまかったりするんですよ。
細かい作業も得意だったりする。
「ふつう、ここまで手をかけないでしょう」
というところまでできる才能のある人が
もしかしたら多いんじゃないかなぁ。

一時期、うちの服屋に、
同級生の友達が
「バッグ置いて」と言って、
ビーズがものすごい勢いでブワーッとついた、
重た〜いバッグを持ってきました。
「お姉ちゃんがひきこもりで、
 リハビリで、ちょっとバッグ作らせてるねん」
と、その子は言ってました。
私は「いいよ」と応えて自分の店に並べました。
そんなにいっぱいビーズのついたバッグって
めったにないし、よく売れました。
そのオリジナリティはアートの域でしたから。

「バッグが売れてる」と伝えると
うれしがってくれて、
売れて嬉しいという手紙をつけて、
さらにバリエーション展開して
納品してくれました。

ある日、
「バッグがたくさん売れたし」「うれしいし」
ということで、あるとき
その子の家に泊まりに行ったんです。

それまで「遊びに行っていい?」と
聞いたことはあったんですが、
お姉ちゃんは、人に家に来られるのが
嫌だったようで、断られていました。
でも、バッグが売れたことによって
すこしは心を許してくれたのでしょうか。

遊びに行っても、家族や友達はいるのに、
お姉ちゃんの姿は見えませんでした。
そして「絶対に入ったらあかん部屋」が
ありました。開かずの間です。
何日か泊めてもらってるうちに、
その部屋をちょっと覗いてしまうことがあって。
ま、つねに覗こうとはしてたんですけど‥‥。

中にいる女の人と目が合いました。

「ごめん、ごめん!」
と言いましたが、目が合ったあとは、
お姉ちゃんはあきらめたようすでした。
私は「姉妹」をはじめて見たものだったから、
思わず「妹さんと似てますね」と
とっさに口走っていました。

外に出るのは勇気がいるけど、
自分のテリトリーに来られて覗かれると
あきらめがつくのかもしれません。
それからは、お料理が好きなお姉ちゃんは
私にごはんを出してくれたり
するようになりました。

次にその家に行くとき、私は
自分の妹をいっしょに連れて行きました。
余談ですが、夜中真っ暗な台所で
めっちゃ小さいおばあちゃんが
『私大きいでっしゃろ』と言って
通り過ぎて行ったのが忘れられません。
それを一緒に目撃した妹と
『あれはシックスセンスやろ』と
言ってたのですが、
正体は身長120センチのおばあちゃんでした。
おばあちゃん冗談きついわ。
すみません。やや話はそれましたが
そうやって徐々に
ふれていく人が増えていって‥‥
とうとう、そのお姉ちゃん、
外に出たんですよ。

長いあいだ家を出てなかったお姉ちゃんは、
外に出るためにまずは
靴を買うとこからはじめました。

そのお姉ちゃんは、
とてもいかしたプラダの靴を買って
さっそうと外に出ていきました。
ほぼ日 ひえー! すごい。
かおり でしょう?
でね、長いあいだ家から出なかった人って
外の紫外線を10年とか浴びてないから、
髪とか肌とか、すごくきれいなんです。
外へ出るようになって間もなく結婚しましたよ。
ほぼ日 わーーーーー!!
かおり 今では二児の母です。
ほぼ日 はぁぁぁぁ(ため息)。
外に出ないでいると、
髪と肌がきれいになるんですね。

かおり きれいでしたよ。
あの髪質見てヘヴィメタル級のダメージヘアの私は
「私もひきこもりたい」といました。
でも働かなあかんしなぁ‥‥。
あのお姉ちゃんはあれだけ凝縮した美を、
1日にして世にさらして‥‥。
ほぼ日 結婚かぁ‥‥。
外に出られてよかったですね。

かおり まずは、バッグが売れたことがうれしかった。
そして、ふだん聞こえないはずの
知らない人の声が少しずつ聞こえはじめた。
そのうち誰かが‥‥まぁ私やけど‥‥、
結界を越えてしまって、
お姉ちゃんは出てきたんです。
これがすべての人に
当てはまるかはわからないけれど。
まず第一歩は「役に立ってる」と
思ってもらうことなのかもしれません。

ですから、お兄さんが、
たとえば、いまならフェイスブックで
「妹が作ったんです」と
編みものを紹介するのも
ひとつの方法かもしれません。
ほぼ日 そしたらみんな「いいね」って言ってくれますね。
かおり そこですこし世間との接点が作れます。
ひきこもりの人も、そうじゃない人も、
誰かにほめてもらったり、役に立ったりすると、
やる気がでますよね。
この妹さんは、申し訳ない気持ちがあって
家事を手伝ってる。
不甲斐ないと思ってるんじゃないでしょうか?
何かをする意志はある。
「そのかぎ編みマフラー、
 友だちのぶん、編んでよ」
そういうニーズがあったら
すごく士気が高まるのではないでしょうか。
そのうち「次は私も」「私も編んで」と
なると思います。

でも、外に出るだけがいいとは限りません。
「どう生きる」っていうことは正解がない。
でもお兄ちゃんのことがあるからね。
やっぱり、お兄ちゃんを悲しませてるから。
また遊びたい、って言うてくれてる
優しいお兄ちゃんをね。
ほぼ日 どうしてひきこもるのかな?
なにもかもめんどくさくなるのかな‥‥。

かおり これは当人にしか分からないですよね。
でも、たしかに、
外に出るのはめんどくさいです。
私の場合、やっぱり「家は最高」ですから。
もし外に出る用事がなくて、
家の中で事足りてたら、私も出たくないですね。
できれば誰にも会いたくないし。
ほぼ日 そうですね。
私も約束がなかったら
家から出ないと思います。
家大好き。みんな、基本そうなんですね。

かおり 予定がないかぎり、出ない。
たぶん妹さんは、その
「予定がない時間」が長いだけでしょう。

先日、私は3日ぐらい
家で寝たきりになっていました。
私はだらしがないから、
ただゴロゴロしてただけです。
4日目に予定が入って外に出るとき、
ちょっと勇気がいりました。
ずっと布団で過ごしてたから、
マットレスが人型にへっこんでいました。
本やおやつやケイタイなど
必要なものを手元に置いて、
太った2匹の猫を仰向けになった体にのせて。
うち1匹は私の呼吸でおなかが上下するたびに
『うう〜』とうなる神経質な猫なので
あまり息もしないように心がけていました。
ほぼ日 トイレは‥‥?
かおり 我慢しすぎて膀胱炎になりました。
私はそのくらい猫に振り回されてて。アホです。
そういうとき、4日目にまず
「歩けるか」が不安になります。
案の定、膝がきしみました。
階段をよろめきながら
手すりにつかまってやっとの思いで降りました。
ほぼ日 かおりさんは予定があったから
外に出られましたけど、
相談者の妹さんには、
なんの予定を作ったらいいのでしょう。
「お父さん誕生日やし、ごはん行こか‥‥」とか。

かおり それは無理そうですね。
「火事や!」とかいって勢いで出ない限り、
考える余裕があったら出ないんじゃないかと。
ほぼ日 「泥棒や!」とか。
かおり そうそう、反射的に動かないと。
理屈で考えたらだめです。
迷いが入ると怖くなる。
私も以前だと地震がきたら反射的に猫を
ケージに入れて脱出する準備してたけど、
最近では私も猫もいずれ死ぬしという考えが
頭をかすめるから、
目を閉じて揺れに身を任せてるし。
『みんなで一緒に死のうや!』と叫びながら。
ほぼ日 非常事態で外に出すか、
かおりさんのような人が結界を突破するかですね。
そしてあとは、
人の役に立つことをわかってもらう。

かおり なんだかみんな、
誰かに必要とされてみたいんですよね。
かぎ針のマフラーは、
ほんとうは売れるといいなぁ。
タダにするといろんな人が
「欲しい」と言うんですけど、
それに値段がついて
実際に「買うかどうか」という問題が
じつは大きいんです。
「大事なお金をはたいてくれた!」
その事実は自信になります。
立派なお店じゃなくてもいいんです。
フリマでもいいと思う。
ほぼ日 お兄ちゃんが
ネットショップを作ってあげるといいですね。
かおり いいと思う。ぜひ。
ほぼ日 バッグを作ったお姉ちゃんも
「売れた」という
世間との接点が見えて、変わるわけですもん。
それでプラダ履いて外出たら、すぐ結婚。
かおり そうですよ。ほんまに。
まぁ結婚だけがすべてじゃないんですけど。
これを言い出すと複雑になるので
これはまたいつか。
ほぼ日 うまくいきますように。
今回もありがとうございました。
かおり ありがとうございました。
ほぼ日 それでは、今日のまとめをお願いいたします。
かおり はい、わかりました。





関西に生まれたサガです、 あらがうのは無理と悟るべし。

2013-02-17-SUN
 
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