みんなで行った、 阿寒きのこの森。

4 いろいろな生き物。

当たり前の話ですが、
森の中にはきのこ以外の生物も、いろいろいます。
そんな当たり前のことを、
「きのこで頭がいっぱい」だったわれわれは、
スッポリと忘れていたようです。

北の厳しい森に棲む、いくつかの生き物をご紹介。
「粘菌」っていうのが、すごかったー。

 




きのこのために。  

狩ったきのこを入れるためにと、
は東京から
こんなかごを持ってきました。
ほんとうに背負える大きなやつも
(なぜか)持っている彼女ですが、
さすがに荷物なので、
ちいさいやつを、ひとつ。

でも結局、
この日は「きのこ狩り」はせず、
観察オンリーになりました。
きのこのほかにも、
いろんな生き物が
目に飛び込んできますからねー。

そうなの。
これ。

大きいの持ってるんですけど(なぜか)
実際、家に帰ってカバンに入れようとしたら
入るカバンがない!
カゴなので、小さくすることも出来ず。
それに、旅行用品を入れていく。
となると、
「誰やねん?」
なビジュアルになってしまうので、
泣く泣くあきらめた出発直前の
早朝なのでした。
小さいのも、かわいいでしょ?




食べてみたいけど、
食べちゃダメよ。
 

森の奥へどんどんとすすんでいくと、
きのこ以外の植物なんかも
目に入ってきます。

なんでしょ。
このブルーベリー色の実は。
こういうときにまずは、
「うまそうだなあ」と考えます。
しょうがありません、
ワタクシとて動物。

でも、それが食べられるかどうかは、
その植物を良く知っている人に
聞いてからにしないと、
いけないのでした。

多くの植物が「食べると危険」
という毒をもっていたりするのです。

で、新井さんこれは??
「やめておいてください。」

残念!


ツバメオモトの実  

ツバメオモトの名前は、そのまま、
ツバメと
万年青(おもと)からきています。

そう、葉っぱが、
ユリ科の万年青(おもと)
に似ているらしいのです。
らしい、と言うのも、すみません、
ぼくは、
万年青そのものを
よく知らないもので……。

そして、ツバメ。
ツバメオモトの、何がツバメなのか。
実なんですね、これが。
ツバメオモトの実は、
正面から見たツバメの顔に
そっくりなんです。

ツバメの顔を正面から見る機会は、
そう多くないでしょうが、
もし、見ることがあったら、
ツバメオモトの実を
思い出してみてください。

(写真/新井文彦)


毒草。  

なんだかきれいで、
不思議な形の花が
ひっそりと咲いている。

新井さんにきいてみると、
「エゾトリカブト」の花だという。

こ、これが!
トリカブト!
話にはきいていたけど、
猛毒の!

想像のトリカブトは、
もうちょっとグロテスクなやつだった。

そのわりに。

かわいい顔してやるよなぁ、
トリカブトちゃん。

食いつきがすごい

「毒のある生き物」の話になると、
さんの
食いつきが、すごい。
理由なんかなく、好きなんだそうな。
目の色が変わるものなぁ。
トリカブトを見つけたときは、
有名人に出くわしたみたいに
よろこんでおられました。
‥‥好きなものはしょうがない。


エゾトリカブト  

トリカブトを見たことがない人でも、
名前だけは
聞いたことがあるかと思います。
おそらく、
世界一有名な毒草ですね。
ありましたねえ
「トリカブト殺人事件」。

トリカブトの名前は、
秋に咲く紫色の花が、
古来の衣装、
鳥兜や烏帽子に似ていることから、
また、鶏のトサカに
似ていることからつけられたとか。
英名は「monks hood」
僧侶のかぶりもの、です。

葉っぱにも茎にも全体に毒成分があり、
特に根っこの毒性が強いのだとか。
即効性の毒で、最悪、
食べたら数十分で死亡……。
実に、恐ろしい……。
ぶるぶる。

とはいえ、トリカブトは、
阿寒の秋を代表する花。
森のいたるところで、
紫色の綺麗な花が見られます。
花は見るに限りますね。

(写真/新井文彦)


イトイの視線。  

この写真はさん撮影。
つまりこれはさんの視線。

なにかをみつけて、それを
さんにみせているところです。
興味深いのは、
撮られている意識が完全にない、
さんの表情。
しっかりレンズを向けられているのに、
「はあ〜、なんっすか、それ?」

口、口を閉じる!

かまっていられない。

えー、社長はたしかに
カメラを構えていたはずなのに、
ほんとうに、
カメラのことは
念頭にありませんでした。
森では、人々が
ゆったりとした
「なりふりかまわず」という
状態になっていったとおもいます。


粘菌!?  

これもイトイさんの撮影。

倒木にばらまかれた
イクラのようにもみえますが、
これは「粘菌」なんだそうです。
‥‥粘菌。
ことばとしては知ってたけど、
粘菌って、なんなんでしょう?
よくわからないまでも、
「ねんきん」
という、そのことばの響きで、
森がもう一段階、
深くなった気がしました。


ホソエノヌカホコリ
(子実体)
 

お待たせ、の粘菌(変形菌)です。

公立はこだて未来大学の
中垣俊之教授らは、
2008年に続き、2010年にも、
ユーモアあふれた
科学研究などに贈られる、
「イグ・ノーベル賞」を受賞しました。
研究の主役は、
そう、粘菌、です。

で、その、粘菌とはなんぞや?

アメーバのように動いて
微生物などを食べるという、
動物的性質を持つ「変形体」と、
胞子で繁殖する
きのこのような性質を持つ「子実体」、
まったく異なる姿を持つことから
「変形菌」とも言われてます。

それだけじゃ、ワケわからん?
はい、実は、
ぼくもよくワケがわかりません。
これから、だんだん、
学んでいきたいと存じます。

粘菌は、ものすごく小さいけど、
いわゆるきのこのような形をした、
子実体と呼ばれている状態の、
色や形の多様性ときたら……。
もう、たまりません。

例えば、森を歩いていて、
この、ホソエノヌカホコリのような、
宝石のようにきれいな
オレンジ色を見つけたら、
間違いなく感動しちゃうと思うんです。

(写真/新井文彦)
きのこに真剣なきのこ  

脇目もふらずに、
きのこの写真を撮り続ける
きのこ頭の

見たり、さわったり、においをかいだり、
五感をフル活用してきのこに挑む姿勢は
さすがと言わざるを得ません。
よっ、マッシュルームっ!

気になるなぁ

背中のリュックから飛び出してる
あの棒はなんなんだろう?




ひゃあ!  

「粘菌」というものの
名前もきいたことがあったし、
絵や写真でみたこともありましたが、
実物を実際に見たのははじめてでした。

粘菌は成長(?)の様々な段階で
姿をかえるそうで、
新井さん曰く、
こちらは、
「ヘビヌカホコリ」という粘菌の
「子実体」の状態だということです。
正直いうと、「ひゃあ!」
となるビジュアルです。
だからといって、
目を背けるというわけではなくて
じっくり凝視してしまうのですが。

自然が作る形は、
時として「ひゃあ!」となる
気持ちの悪いものがあるなあと
思うのですが、
この粘菌も
そういうもののうちの一つでした。

ひゃああ!

これはほんとに、ぞくぞくしたー。
「ヘビヌカホコリ」
っていう名前がまた‥‥。
そういえばヘビっぽい。
‥‥ううっ(ぶるぶる)。
いま写真をみてるだけで
またぞくぞくしてきた!


ヘビヌカホコリ(子実体)  

粘菌(変形菌)はすごく小さいので、
出合う機会が少ない、と思われがちですが、
森へ行って、倒木とか、木の穴とかを丹念に探すと、
けっこう頻繁に見ることができます。

中でも、ヘビヌカホコリは、
阿寒の森で頻繁に出合う
粘菌ベスト5には入るでしょう。
写真では、白い方が若い個体です。

自然が好きで、よく森を歩く人でさえ、
粘菌を知らなかったり
知っていても興味がなければ、
それは、存在していないのと同じこと。
なかなか目につかないかも知れません。
でも、逆に、粘菌に興味を持ったならば、
森はもちろん、家の庭や、近所の公園などなど、
いろいろな場所で粘菌の姿を
見かけるようになるはず。
粘菌は、それほど、
ありふれた? 生物なんですよ。

(写真/新井文彦)


ちょっと焦る。  

きのこや粘菌って、
ちいさかったり、
暗いところに生えてたりするので
写真に撮りづらいんですよね。

「あ、ブレた」とか
「アングルをもうちょっと・・」
とかやってると、
すぐこういうような状況に
なりますのでご注意ください。

ま、待って!

迷彩柄だから。

夢中で写真を撮るは、
ときどき森と一体化。
迷彩柄だから
みえなくなっちゃうんだもん。
ついつい、
おいてけぼりにしてしまいます。






出合いたくない
生き物。
 

きのこ以外の
いろいろな生き物とも
出合っているわけですが、
出合ってはいけない生き物も
阿寒の森にはいるのです。
1枚目の写真で、おわかりですよね。
新井さんの腰にぶらさがっているのは
「熊よけの鈴」。
北海道にはヒグマがいます。

新井さんが話してくれた
クマのことを、下に。
===================
新井 
「いますよ、熊は。
 鈴は基本ですね。
 それと僕は、熊の撃退スプレーという
 唐辛子の粉を圧縮したスプレーと
 鉈(なた)をぶらさげてます。
 結局、最後の最後、
 生存率を高めるには、
 戦うしかないんです。
 抵抗するのが、一番生存率が高い。

 一昨年くらいまでは
 年間10回ほど出合ってました。
 いちばん近かったのは5メーター。
 好奇心が強い若熊だったので、
 匂いでこっちを認識しようとして、
 すーっと立って匂いを嗅いでるんです。 
 もう、こっちはドキドキしながら、
 「こんにちは」って(笑)。
 いや、話しかけるといいみたいです。
 「どうも、ご無沙汰してます」
 みたいな感じで。
 そしたらクマは視線をはずして
 すっといなくなりました。

 でもまあ、基本的には、鈴ですね。
 わあわあ騒いで近寄らせないのが
 いいみたいです」
===================

‥‥すごいお話でした。
ほんとうに、森をなめてはいけません。

ちなみに3枚目の写真は
釧路空港で撮った1枚です。


森なのに。  

いろいろな生物といえば。
こういう生物(生きてないけど‥‥)も
いましたよ。

ザリガニの手。
川が近いところには、
こういうものも、いた。
ということを、
お知らせしておきたいです。
森にも、こういうものは、いるんだよと。


ざくざくざく。  

きのこ隊の後方から、
とある人がちかづいてきました。

「人も通わぬ‥‥」と
おもっていたところに、
人です。




安井稜さん。  

森をふみわけて、
ひょっこり登場した人こそ、
「阿寒ネイチャーセンター」のスタッフ、
安井兄弟のうちの弟さん、
安井稜さんでした。

つまり、新井さんの同僚さんです。
この、豆腐やさんが履いているような
白い長靴のさりげなさが、
妙にプロっぽい気配です。

阿寒の森を自分の庭のようにして
仕事をされているから
当然なのかもしれないですが、
森の中で合流できるところに
ちょっとびっくりしました。

びっくり!

わたくし、最後尾を歩いていたのですが、
いきなりあんなに静かな森で、
後方に気配を感じて、
そりゃあもう、びっくりしました。
not 熊。
yes 仲間。

(仲間がふえたところで、
 来週の月曜日につづきまーす)
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2010-11-19-FRI
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN