どうせだったら、
広告の勉強もしてやれ!

まず、アートディレクターって、どういう人?

第13回 アートディレクターというパズル

広告について、アートディレクションについてなど、
ぼくは素人ですから、遠慮なくきいて連載しています。
副田さんはそういう質問に、
丁寧にまじめに、こたえてくれているのです。
副田さんの仕事とは何なのかを、
もう一度正面からきいてみました。

「普通は誰かに頼んで内容がいいっていうのになるけど、
 『それだとやっぱりちょっとつまんないしなあ』
 というのがあるんですよ。みんながそれをやるから。
 やっぱりちょっと違うことをやろうかな、と、
 それは広告として目立ったりすることだし、
 広告になったときに、
 『ちょっとしゃれた絵だね』
 『書体がちょっと違うんだよね」
 とか、見たひとの動機づけになるかもしれないし。

 ほんとにぼくの仕事内容は一言ではいえないし、
 例えば糸井さんから仕事が来ると
 糸井さんがイメージを持っている場合もあるし、
 そういうような、それぞれ違うものものだと思う。
 仕上げ的なアートディレクションだけをすれば
 いい場合もあるし、プランニングのところもあるし、
 もちろんテレビとCMと連動で企画する場合もある。
 今はむしろテレビの時代だから、
 CMが主になってくるよね。
 そうするとトータルで考えなきゃ
 いけなくなったりするわけですよね」
 
トータルのなかで、
アートディレクターは、どういうところを?

「でもやっぱりぼくはグラフィックだから、
 表現が違うんです。テレビでいい表現が
 必ずしもグラフィックでもいい表現とは限らないし、
 逆にグラフィックでなくちゃ
 なりたたないこともあるんでしょ?
 『一枚絵』というか、
 動く説明とかをできないぶんだけ
 それは象徴的に印象的な表現になるし、
 その仕事内容を言葉にするのは、むつかしいです。
 ある意味では即応的な仕事というか・・・。
 やっぱりパズルに近いんじゃないかな?」
 
来ましたね!パズル!
これ、きいた言葉のなかで特にきらきらしてる。

「いろいろなパズルをやってるから
 自分なりには飽きないし、
 正解できれば、パズル解ければうれしいし、
 評価されれば次の仕事につながるというのもある。
 こっちが正解だと思っても
 クライアントが正解だと思わなかったり、
 世の中的に受け入れられなければ、
 やはり広告マンとしては落第なんです。
 そういう意味ではすごくクールな世界だし、
 逆にある意味では正解がわかりづらい
 いいかげんなところもあるしね」
 
正解がどこにあるかわからないんですか・・・。

「やっぱり変な仕事だと思いますよ。説明しづらい。
 例えば『この広告つくってる』とは言えるんだけど、
 うちの親父なんかもう死にましたけど、
 たぶんわかっていなかったと思いますよ。
 新聞に載ったものを
 『これ俺がつくった』
 とか言っても、ぼくがどの部分をつくったのか、
 わかっていなかったと思いますね。

 ひとつひとつの仕事に関しての説明はできるんですよ。
 どうやってアイデア出したかは説明できるんですけど、
 そのときどきでほんとにケースバイケースだから、
 資料を探して一枚の写真が出てきて
 それをもとにしたときもあるし、
 誰かが言ったひとことがおもしろいと思ってやったり。
 ひとくちに言えないし、
 ただ自分の引き出しっていうのかなあ、
 自分のなかのいろんな好きなものだとかを
 絵にしても写真にしても、ぼく、
 ちょっと気になったものを
 スクラップしたりしてるんですよ。
 普通のひとがするように。
 なかなか生きない場合もあるんですよね。
 いいものを切り抜いたっていう場合もあれば、
 それが全然よくないときもある」

自分の引き出しかー。
ところで、仕事は、好きですか?

「好きだと思うよ、
 好きじゃないとやらないと思う。効率悪いもん(笑)。
 作家って印税とかギャランティとか、
 売れればあるじゃない、でもぼくらの仕事って
 一枚新聞広告をつくっちゃったら、
 そのあとその商品がいくら売れようと、関係ないの。
 いくら売れてもすごい手間ひまかけても関係ない

 アメリカでは売り上げに対しての契約をするみたい。
 そのくらいのほうがいいかもしれないと思います。
 ぼく自身としては、アートディレクターを、
 そういうすごい仕事だと思っているわけですから。
 だけどさっき木村さんが言われたみたいに、
 クリエイティブというものは軽視されている。
 それで、いいかげんでどうでもいいような
 クリエイティブで、代理店は大半が商売している。

 経済活動なんだから、うまくいけばぼくらも
 パーセンテージで決めたほうがいいのかもしれない。
 1個広告を当ててたら1年遊んで暮らせる、みたいな。
 それのほうが正しいのかもしれないけど、。
 アメリカは制作会社がエージェンシーも兼ねて、
 媒体もあつかっちゃうから、
 そのかわりに契約がしっかり交わされるというか。
 日本はそのへんで曖昧だから、
 失敗してもギャラをくれるみたいなところがある。
 そこがいいのかわるいのか、みたいなことですね」
 
クリエイティブと契約について、
これは広告やるひとにとって、大きな問題なんだろうなー。 
それに、実は、他の仕事に関わるひとにも、かも。

(つづく)

2000-03-28-TUE

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