どうせだったら、
広告の勉強もしてやれ!

まず、アートディレクターって、どういう人?

第12回 共同作業する相手は誰?

プロデューサーやディレクター、
そういった言葉でわかりにくいのは、
チームでものをつくるから、というのもあるよね。
広告にしても、誰がどうつくるのか?
というのが、普通のひとには見えにくい。

そのへんで、それこそ、
アートディレクターな副田さんなのだ。
一緒につくる相手を見つけるのも、仕事のうち。
それだから、ふだんからつながるものを
自主的に探しているのかなあー?
そのへんをきいてみました。

「アートディレクターというのは基本的に、
 いろいろな売りこみとかを受けるんです。
 ぼくのところにもしょっちゅう
 カメラマンとかイラストレーターが来るんですが、
 ぼくはあんまりそれは見ないんですよ。拒否する。

 自分のアンテナってある種自分独特のものでしょ?
 『ブエナビスタソシアルクラブ』
 に涙する自分がいるけど、
 すごい素晴らしいクラシックを持ってきたって、
 ぼくとしては感動しないと思うんですよ。
 こっち側のものさしにひっかかるものでなくて
 向こうからおしかけてくるものになってしまうと、
 こちらのものさしで選んでいないものだから、
 それはほとんど外れてるるケースがほとんど。

 だから、売りこみのひとに会っても空しい。
 そのひとにもわざわざ来てもらっちゃうわけだし、
 『副田さんに会ったら仕事が来るかも』
 という期待を与えちゃうのかもわからないし、
 だから会わないです。
 イラストレーターや写真家だったら、
 ハガキ一枚でもわかるじゃない?
 自分の感性と合うひとというのを。
 
 実際に会ったから使った、というのはないですね。
 そういう意味では雑誌見たり新聞読んだりとか、
 普通に生活してるでしょ? 街歩いたり。
 本屋さんでいい装丁を見たら写真家は誰かなとか。
 もちろん人間関係もありますよ。
 『これはいいよ』
 っていいひとが教えてくれる場合もあるし、
 それはそのひとによるんだよね。
 自分がいいなあと思うひとが
 『いいな』と思うものはたぶんいいけど、
 そいつ自体がろくでもないと
 こちらで求めているようなのを教えてくれたとしても、
 結局ろくでもないだろうなあと思うだけだし。
 だから、やっぱり人間の関係が大事なものなんですね」

なーるほど。
田中靖夫さんとは、どういうつながりで
こないだのビールの広告をつくったのですか?

「田中さんは、ぼくにとって大切なブレーンです。
 でも、モルツにしても、田中さんの絵の世界を
 ただ欲しかったわけじゃないんですよね。
 イラストレーションのいろいろな、
 骸骨描いたり針金やったり、
 もちろんあのひとボールペンで描いたりするし。
 でもそのまんまのあのひとの絵を欲しいんじゃなくて、
 今回モルツではそれはやりたくなかったの。
 『あるイラストレーターの世界』じゃなくて、
 やっぱり文字を主体にして、
 普通のひとが落書きしたような、
 でもよく見るとめちゃくちゃうまいんだけど、
 一見誰でも素人が描いて味のある、みたいな。
 例えば宇多田ヒカルの絵うまい。
 そういうのってけっこう魅力的でしょ?

 本当のプロが技術を持って描いたものよりも、
 ヘタウマにつながってくるのかもしれないし。
 それでそういうイメージというのをお願いするのは
 ある近しいひとじゃないとできないと思うし、
 最初は『失礼かなあ』とも思っていたの。
 自分の考えるイラストレーターのなかに
 そういうことのできるひとはいなかったんですよ。
 相当技術を持っていないとできないだろうし、
 普通作家は作家性があるんだから、
 『副田に言われたところでそんなの描きたくない』
 と言うかもしれない。
 だから田中さんにもおそるおそる
 『素人が漫画描くような、
  顔もマルだけで目鼻描かないような、
  そういうのが欲しいんだけど、どうですかねえ?』
 とききました。
 そういうことでもいろいろなことができるんですよ。
 それでいくつか描いてもらったり、
 やっぱり田中さんの骸骨みたいなものも出てきた。
 体を線だけで表現してたり。
 でも、それだとやっぱり作家性が出てきちゃう。
 もっと普通のひとが描くようなものを、と思った」
 
ふむふむ。ここで、
作家性ではないところで広告をやっている、と
副田さんがおっしゃっていたのと、つながりますね。

「今回は若いひとにふらないといけない、
 とぼくは考えました。。
 ビールの市場って戦争になっちゃってて、
 全員に向かって大声で喋ってるけど、
 ちょっとかっこいいとか、他のよりよく見えるとか、
 もしもイラストレーションが出てくるんだったら
 そういうことも反映されないといけないと思った。

 だからあの絵が白いTシャツにぽーんと載っていたら、
 若者がそれを着てくれるような絵を描いてほしい、
 そういうような話しかたをして、それで何回かやって、
 で、ぼくがちょっといじったり、線を省略したり、
 いっぱい描いてもらったなかからチョイスして、
 そういう作業ですよ」

副田さんの言う、そういう作業に、
ぼくは興味があるんです。

(つづく)

2000-03-27-TUE

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