どうせだったら、
広告の勉強もしてやれ!

まず、アートディレクターって、どういう人?

第10回 広告そのものについて

どうせだったら、広告の勉強もしてやれ!
というわけで、プロデュースとは何だ?
ここでアートディレクター副田高行さんの
いま考えて考えていることを、連載しています。
今回は、広告というものが
いまかかえていることについてなど、ききました。

「ぼくらが広告をやっていても
 自分というものはなかったりするんだけど、
 ただ、おもしろさっていうのは、ある。
 自分がやりたいビジョンなりイメージなりに関われる。
 企業があることを伝えたいというときに、
 1番力を発揮する表現は何なのか、
 コピーなのか、映像なのか、絵なのか、
 もっと何か他のアイデアなのか、それを考えるのが、
 やっぱりクリエイティブなんですよ。

 自分っていうのはないんだけど、
 与えられたテーマは、あります。
 それはやっぱりパズルに近くて、
 今度のパズルはむつかしかったりするし、
 あるときはぱっと思いついたりすることもあるし。
 話きいたときすぐにアイデアが来る場合も、
 やっぱりタレントの力をつかうしかないときもある。
 タレントものは、ぼくらの入る余地が少ないから、
 あんまり好きじゃないんだけど・・・」
 
広告で創造的なものをつくるのは、
企業からの制約をずいぶん受けそうですが。

「広告をつくるのにはいろんなやっかいな事や、
 もちろん苦労もあるし、
 企業は自分たちのやりたいことを
 全部そのままはうけいれてくれないし、
 だからいろいろ説得したり、です。

 今ひとつ広告をやろうとしているところが
 思いどおりに行かないので、
 社長に会わせてくださいって言いました。
 会わせてもらったら、思ってた以上に
 こちら(広告制作者)の意見に賛同してもらいました。
 けっこう大きな企業だから、
 普通社長なんて会えないんですよ。
 ぼくが会うのは宣伝部長とかまでなの。
 でも、結局最終決裁をするのは社長だよね。

 ぼくらは自己表現してるわけじゃないけど、
 企業から与えられたテーマを、広告のなかで
 1番強く発揮させようと思っているから、
 ある意味ではすごく純粋な気持ちでやるんです。
 だから、トップだったらわかってくれると思う。
 むしろ途中にいるひとの、顔色うかがって、
 「そんなこと言ったら嫌われて将来昇進できない」
 とか言うような、もう、
 そんな連中には関わってられないっていうか、
 トップはそんなことないんじゃないかと思うわけ」

だから、トップに直接話したんですね。

「トップと話して受け入れられなかったら
 ぼくがそこの宣伝に関わるのをやめればいい。
 宣伝部長はその会社をやめるわけにはいかないから、
 トップに対して強くは言えないですよね。
 こっちはその仕事だけでやってるわけじゃないし、
 『ある意味で純粋にあなたの会社のためになるんだ』
 と言えばいいんじゃないかなと思っています」

なるほどー。それは仮に自分が
社長になったと想像すると、すぐわかりますね。
最高責任者だったら、無難なだけじゃなくなるかも。

「技術者は、一生懸命にいい製品をつくるんですよ。
 もしそこでぼくが悪い広告をつくってしまったら、
 その製品に失礼だと思うんです。
 基本的に資本主義の原則というかさ、
 ぼくは、前提として、
 いいものを供給するべきだと思うんです。
 企業はいい製品をつくって
 それで市民の生活が快適になる・・・
 ぼくは基本的に性善説をとっているんです。
 そのうえでぼくらのやれることは、それを流すこと。

 だから本当にいいクライアントに出会いたいし、
 要らないものは要らないし、
 だめなものは、
 いくらいい広告をやってもだめだと思う。
 目立てば目立つほど駄目さも目立つから、
 だめなものは逆に暴露されちゃうんです。
 ある意味で広告はリトマス試験紙だと思うんですね」

広告さえよければいいというわけではないのかー。

「だから、まったく完全に責任をとる必要はないし、
 ある意味では多少の出来不出来もあるんだけど、
 自分がベストだと思う表現をしてやれば、
 おのずとそれは市民というか生活者が選ぶわけで、
 いい製品だったら伝わっていくし、
 1回広告でだませたとしても、
 みんながだめだと思えば
 それはちゃんとそういう結果になるし」

(つづく)

2000-03-25-SAT

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