どうせだったら、
広告の勉強もしてやれ!

まず、アートディレクターって、どういう人?

第4回 いよいよ仕事の内容に

広告のことを勉強したいー。
そこでまず具体的にアートディレクターの
副田高行さんに、いきなり話をうかがいに行きました。
ついに、副田さんの口から、仕事が語られてゆきます。

「グラフィックデザイン、って言っても
 知らないひとはよくわからないと思うけど、
 グラフィックデザインっていうものがあります。
 広い意味なんだけど、広告のデザインというかね、
 ポスター1枚でも、広告のポスターと、
 例えば催しの万国博覧会のポスターとかとは、
 ちょっと目的が違うじゃない?
 ものを売るということと、お知らせをするという差で。
 グラフィックデザインっていうのは、
 先生方がいっぱいいるのね。
 田中一光さんとか亀倉雄策さんとか。
 ああいうかたはもう作家だから、
 公の催しとかをやる文化人というか、
 文化勲章とかをもらうような。

 でもぼくらがやってるグラフィックは
 グラフィックデザインではあるけれども、
 やっぱりアドバタイジングだから、
 いわゆる企業が広告する、それを扱っているわけです。
 グラフィックとアドバタイジングは、
 非常に似てて違うっていうか、
 作家性ではないわけですよ。
 サントリーでもサントリーモルツの広告やるときと
 オールドをやるときとでは、やはり違う。
 商品も違うんだから、
 グラフィックの顔つきも違ってくるわけです。

 このときはこのタレントを使おう、とか、
 こっちはタレントをやめて文字だけ使おうとか、
 そういう仕事なんですよ。
 だから、おのれがあってないような、というか。
 ぼくは、カメレオンのようなものだ、
 と思っているんですよね、自分をね。
 やっぱり作家とかつくるひとって、
 マンネリもあって、自分の世界って
 たぶん、追求していくとどんどん狭くなっていく。
 それを続けていく作業って、たいへんだと思うんです。

 だからぼくはアーチストって、
 すごい意思の強いひとだと思うんです。
 売れてるひとでも売れてないひとでもね。
 売れてなければ売れてないで、
 自分に自信があると思っていないとやっていけないし、
 売れていたら売れていたで、
 『おんなじことやってていいのだろうか?』
 『路線を変えたら売れなくなるのではないか?』
 という思いとの戦いだし、そういう意味では
 作家というのはすごく強いひとだと思います。

 ぼくは弱いひとだから、そういうものはない。
 ただ何となく、まっ白な感じで、いつも待っている。
 仕事が来ると、どういう色にしたらいいだとか、
 どういう景色だとか、全体のビジョンというか、
 アートディレクターというのは、
 イメージを形成するひとっていうか、
 ビジョンを作る人だと思うんですよ。
 そこがぼくはおもしろいと思うし、
 逆に自分自身がまったくマンネリにならないというか、
 ぜんぜんちがう例えばサントリーの仕事と
 シャープで液晶テレビの広告をしたとすると、
 ぜんぜんちがうでしょ? 
 電化製品とアルコールとか、
 アルコールでもビールとウイスキーは違うし、
 だから別に、ぼくは特にひとつの世界を持っていて
 おもしろい、というひとではないんですよ」

自分自身については「おもしろくない」、
でも、だからこそ仕事は「おもしろい」と
副田さんが言うわけが、わかりかけた気がしました。


(つづく)

2000-03-19-SUN

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