どうせだったら、
広告の勉強もしてやれ!

まず、アートディレクターって、どういう人?

第2回 副田さんに会っちゃった

例えば本屋にでかけると、
「売るための戦略ノウハウ本」が、
それこそ、やまのようにありますよね。
ダイヤモンド社や日経BP社に代表される本。
「ブランド」「価値」「説得」などの文字が、おどる。

最近、そんな「マーケ系」の本を、
いくつかランダムに読んでもみたんですよ。
全然縁のない分野でしたが、思ったよりおもしろい!
特に、自分で動いて会社をたたき上げたひとには、
変な話ですが、迫力とか執念を感じられて、うれしい。

広告をいろんな角度で見るために、
おだやかな午後にコーヒー片手に本を読む、
資料を読みこむ、しかも、似あわないのに
株式市場をチェックする(Qさん的影響)
・・・ディーセントなアプローチですよね。
そういうのが、ぼくはいいと思っていたんです。
むしろ、そんなのをやりたかったんです。

だけど、体は正直でして、
「どうせだったら、広告の勉強もしてやれ!」
そう思ったら、もう、副田さんに電話をしてしまってた。
ありゃ。とほほ。これは木村のサガですね・・・。
頭より先に、体が動いてしまう。
寝袋移動生活が身にしみているのよ。

そんな突発的な依頼にも
「ぼくでよかったら、どうぞ」
とこころよくこたえてくださった
ナイスガイであろう副田さんのデザイン事務所に、
ぼくはさっそく、自転車で向かっちゃいました。

前にセイヒローさんに
「何度も死んでそうだね」
と言われたややあぶないライディングで乗りつけ、
アーティスティックな建物の玄関のベルを鳴らす。
すると、なかからやわらかい秘書のかたの声がきこえ、
ぼくは、はじめて、副田さんというひとに会えました。

「こんにちは。来るの、すごく楽しみでした」

そうぼくが言うと、リラックスしてる副田さんは、

「いやー、ぼくは、おもしろくないひとですよ。
 もしかしたら、ぼくをおもしろいかと思って
 ここに来たのかもしれないんだけど、
 実はおもしろくないんじゃないかと思うんですよ。
 ぼくは広告をつくってるだけです」

とおっしゃった。
え?と思って、さらにきいてみた。

「糸井さんももともとは広告マンだし、
 コピーライターだったから、
 そこの部分には理解のあるひとだと思いますけど、
 広告って純粋表現じゃなくて、
 アーチストではないわけですよね。
 だから、おのれからみずから何か
 こういう表現をしたいと思うことは、
 基本的にゼロなんですよ。
 まあ広告制作というかたちで、
 最終的に表現行為には近いことをするけど、
 自分のやりたいことを表現すものではないです。
 クライアントがあるわけですよね。
 要するに「待ち」の仕事。
 基本的にはオーダーが来なければできない仕事です。
 画家にしてもミュージシャンにしても、
 そんなのなくたって、自分の作りたい曲なり
 描きたい絵があるから、それは表現行為になるけど、
 ぼくの場合は個人の表現としてはゼロですよ。
 自分がないから」
 
自分が、ない? 

「自分に表現したいことがあれば
 アーチストになるかもしれないけど、ないんですよ。
 クライアントがどんな仕事を
 持ってくるかによって反応していくっていう。
 ただ、ぼくは『だからこそ』おもしろいと思ってるんです」
 
その仕事について、ぼくは知りたいと思った。
そのためにここにきたんだろうなあ、と感じていました。


(つづく)

2000-03-17-FRI

BACK
戻る