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最新の記事 2007/02/21
 
 
標高3820m、真夏といっても−50℃という場所で
基地を立ち上げた斎藤さんをはじめとする
南極観測隊の一行。
この基地では深さ3000メートルまで
氷を掘っていくというのです。
昨日の話とあわせてぜひ太古の世界と遭遇する
大仕事の話をお楽しみください。


南極大陸の上にある基地(後編)

南極氷床(ひょうしょう)は現代から過去に向って
地球環境をさかのぼることができるタイムカプセルです。
でも海に浮かんでいる氷山を調べても
なかなかその年代はわかりにくく、
大切なことは大陸上の氷を表面から
連続したサンプルとして採りだすこと。
すべて繋がった氷はそのまま地球の歴史を物語ります。


ドームふじ基地の全景。
中心より右側が氷をサンプリングする場所。
左側は食堂や寝床がある居住区画ですが、すべて雪の下。


日本の氷床掘削は第13次南極観測隊が
1971年みずほ基地で掘削したことに始まります。
このときの掘削深は140m、
続いて24次隊が700.63m。
こうした成果からドーム深層掘削計画が始まり
37次隊はドームふじ基地で
約2,500mの掘削に成功、
そして43次隊からより深い氷を目指そうと
第二期ドーム計画が始まりました。

2006年12月、
ほぼ十ヶ月ぶりに人を迎え入れたドームふじ基地。
暖房や電気、水道も整い、
いよいよ氷床から氷のサンプリングです。
前年1月に採った氷は、
解析の結果72万年前とわかり、
今回はもう間もなくと見込まれる
大陸の岩盤を目指しました。

さてどのようにサンプリングするか?
氷を掘るドリルは
長さ12m、直径12cmほどの金属製の筒が
二重構造になった特殊な構造です。

これを、ドリルへ電力を送り、
またドリルから
情報を得るための線が入ったワイヤーで吊り下げ、
大きなウィンチで上げ下げします。
ドリルを載せるところがマスト、
この上でサンプルを取り出し、次の掘削の準備をします。
まるでイメージは釣り針。
釣り針のところにドリル、釣り糸はワイヤー、
ワイヤーを巻き取るウィンチがリールです。
もっとも釣り上げることはできませんね。


ドリルをマストごと立てて、いよいよ掘削開始。

ドリル本体を見てみましょう。
上部がコンピュータ、
中間ほどに氷を掘ったときに出る
削りくずを貯めるところ、
そしてその下に掘った氷が入ってきます。

実際に掘るときは外側の筒が穴の壁を支え、
先端に刃のついた内側の筒が回転し
氷床を円柱状にくりぬきます。


掘削孔。
青いフタをあけると3000mの底に繋がっています。


一回の掘削で得られるサンプルは最長3.84m。
かかる時間は深さによりますが、
深さ3000mにもなりますと
底まで1時間半、
上げるのに1時間半くらいかかり、
掘っている時間とサンプルの処理をあわせると
おおよそ4時間が1サイクルになります。

3000mの深さは2シーズンかけて掘りました。
さて3シーズン目となった今年の成果は?
報道などでご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、
3035.22mに達し、
そして最後のサンプルの氷の中には
数粒の砂粒が混じっていました。
掘削に取り組んできた研究者が
長年、待ち望んだ結果です。

ドームふじ基地で掘削した氷は
これまで雪氷学者が中心となって解析を進めていました。
今回の掘削で採られたほんの僅かな砂粒は
南極内陸の基盤地質の解明の一端となり、
さらに研究分野の枠を超えた
新たな展開に発展していくことになるでしょう。


下ろし始めて約3時間後、
掘削が終わりドリルを横にしているところです。


2007年2月8日
しらせに乗艦しました。
まだ昭和基地近辺で観測することがあって、
出航はまだ先ですが、ひとまず帰路につきました。

第47次日本南極地域観測隊
斎藤 健

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深さ3035.22mから見つかった数粒の砂粒!
斎藤さんのメールからは
いつも南極観測隊のスケールの大きさと、
そこにたどり着くまでの地道な積み重ねを
教えてもらえます。

約1年半の任務を終えて、
日本に向かう船「しらせ」で、
斎藤さんはどのようなことを考え、
どのようなことに思いをはせるのでしょうか。
「しらせ」でもメールを読むことができるそうなので、
質問や応援、激励、感想は
「南極観測隊斎藤さんへ」として
postman@1101.comまでお寄せくださいね。

南極観測について、
さらに知りたいという方は
こちらの「極地研究所」のホームページ
ぜひご覧ください。
 
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