アートとマーケの幸福な結婚。
ポストペットの八谷さんと、
彼の船出。

第29回 誰のためにやってるんだろう?



コストを取るのか?よりよいデザインなどを取るか?
これは、どんなものをつくるにもついて離れない問題。
八谷さんたちのポケットポストペットは、
そういったところを、どう処理しているのだろう?
ついにこの座談会も、佳境に入って参りました

八谷 執念深さっていうのは絶対要ると思います。
ACアダプタあるんですけど、
最初はもっとでかかったんですよ。
真鍋 ポケットボードのサイズがこれだから、
もっと小さいかと思っていたんですけど、
思ったよりも大きくて、本体の半分くらいので。
八谷 ちっちゃくならないかな、
とはずいぶん言ったんだけど、
コストが・・・とカシオさんに
言われて最終的にあきらめちゃった。
でも、最後の最後で増田さんが
「これではだめです」
ってばーんって言って、
だから小さいアダプタに変わって。
糸井 増田さんそうやってたまに入れ墨みせちゃうんだ。
増田 コストでだめですと言われて
半分はあきらめたんですけど、
ただ、わたしもずっと開発してきて
ものをつくるのはおもしろいと思っていたのに、
ちょっとやっぱり妥協しすぎるように
なってきていたんです。
糸井 なっていきますよね。
何でなるんだっていうのは
また別のテーマだと思うけど。
増田 立ち回りがうまくなってしまって、
そんなに労力をかけても意味がないって
先に知っちゃって。ACアダプタは、
ほんとにそういうときの問題でした。
そこで若い子に言われたんですよ。
「だめですよ。そんなので妥協するんですか」
って言われて。
糸井 知らないうちに「昔のわたし」が育ってたんだね。
増田 はい。
それで、やっぱりこういうのって
技術を知らないとたたかえないので、
ACに詳しいひとのところに行って、
ACってどういうふうにできていて、
どのくらいの価格が妥当なのかというのを
いろいろとだいたい教えてもらって。
こういうふうに交渉するんだよ、
というシナリオも教えてもらって。
で、カシオに行って
「秋葉原に行けばこういうのが
 500円で売っているのに、なんで」
と説得をしていたんです。
八谷 ぼくらは別売も辞さず、だったんですけど、
もちろん最初からちっちゃくてかわいいのが
入っていたほうがいいわけです。
旅行に持っていくというのが考えられるから。
真鍋 じゃあ、その代わり
絶対別売りで出してくださいよ、
って言っていたんです。
糸井 そうなるよね、着地がそこになっちゃうと、
もう喧嘩にはならないよね。
真鍋 そしたらそのあとで、
「ACが小さくなるんで、
 パッケージのサイズが小さくなるので、
 もう一度チェックしてください」
ときて、あ、増田さんやってくれた、と。
八谷 そういうのって、極端にやってしまうと
みんなが気をつかいあって、
やっぱり安いほうがいいや、とかいうふうに
なってしまって、見失ってしまうんですよね、
誰のためにやっているのか、とかを。
糸井 かっこいい話だねー!
増田 どちらかというと大きな社内だから、
メーカーさんみんながうまくいくように、
それがコーディネーターとしての役目だから。
八谷 Win=Winモデルは重要で。
糸井 今は冗談じゃなく例が出てきているから
言えるけど、昔はそれがありえなかったですよね。
つまり、みんながWinだったという
ケーススタディがなかったんですよ。
もしそうなら、お客さんがLoseしてるとか。
でも最近、商品が情報化してくることで
はじめて、コストの削減はどこでできるかを、
原料費なしでできるようになったりしてるんじゃないですか。
おかげで言えるようになったんですよ。
増田 ひとつのものをつくりあげる点では、
ポケットボードはどこで妥協をするかという
妥協の産物だと思います。
「妥協」って、言い方は悪いけど、
ベストよりベターという感じで。
かたちを出さないと次に進めないという。
一歩出したら一歩退くみたいな。
そういうパズルみたいにして
できあがっていくもので、
ここでカシオさん守ってあげるよと言わないと
カシオさんは本音で接してくれないだろうなあ、
という場面もありますし。

(つづく)

2000-05-06-SAT

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