アートとマーケの幸福な結婚。
ポストペットの八谷さんと、
彼の船出。

第24回 売れないときの努力など


ポケットボード制作中の話を、
ふりかえってきいております。
ポケットボードは、実は最初には
あまり売れていなかったんですね。びっくり。
そのときに増田さんがどうやって売ろうとしたのか、
「アートとマーケの幸福な結婚」という題で言うと、
今回は、マーケなところをしゃべってくれます。

増田 ただ、販売店のひとの
反響がよかったんですよ。
おじさんとかから。
糸井 俺みたいなやつが?
増田 「きみー、きみつくったのー?
 これ、ぼくでもわかるからねー」
とか言ってくださって。
実はけっこう使いにくいところが
いっぱいあって、それはもともと
ポケベルを呼ぶためだけの機械だから、
受信する理念がまったくなかったところに
無理やり割りこませているので、
メールを保存しなかったり、
ごちゃごちゃにしてつくっちゃったんで
すごい使いにくいんですよー。

だけど、それこそほんとに使ってるうちに
私もいとおしくなってきちゃって、
「この使いにくいところがいい!」
とか、かわいくなってきて、
ユーザーのひとたちからも、
それこそ今までつくったモバイルツールだと、
「ここが使いにくいんだよ」
「ここがだめなんだよ」
とかってみんな言うのに、そういうんじゃなくて、
このスペースにシールを貼ると、かわいいんです〜、
とか、ユーザーさんのほうが気づいてくれて、
それが支えになって、
「何とか売らなきゃ」って思って、
いろいろなところに話を持っていったりして。
私が営業して歩いていたんだけど。
糸井 おもしろいよ、いちいち。
増田 雑誌の記者のひとに
「こんなのつくったんですけど」と言ったら、
「えー。売れないんじゃないの?」って。
糸井 言うよねー。
増田 「こんなにメールを
 いつでも受けたいなんてひとはさー、
 そうだなー、
 宗教関係か結婚相談所ぐらいなんじゃないの?」
って言われて、うーおいおい、と思いながら、
糸井 またちょっと泣きそうになるわけ?
増田 わたしすぐ泣きそうになるんです。
泣き虫なんです。うー、っと思ったら、
「・・・ちょっと待てよ、結婚相談所、いいな!」
と思って。
糸井 (笑)泣いても、力落ちない。
増田 さすがに宗教団体に私も行く勇気はないけれど、
結婚相談所くらい行けるんじゃないかなあと。
技術系のひとも多そうなところだし、
これはぜひおもしろいと思って、
結婚相談所の知り合いがいたら教えて欲しい、
といろいろな代理店の知り合いにあたって、
結婚相談所の偉いひとに会うことになったんです。
「ぜひメールでのコミュニケーション手段に
 使って欲しい」とお願いをしに。
糸井 大量発注を望んでいたわけだ。
増田 販売計画表というのをつくってて。
糸井 ちなみにその結婚相談所で
いくらからいくつぐらいまで売ろうとしてたの?
増田 3000台くらい。
糸井 多いね!
増田 5万台のうちわけを
書けって言われたんですよ。
糸井 やっぱ努力目標が見えないとね。
増田 結婚相談所のかたも、
「おもしろいと思うので、会員向けに」
とは言ってくださったんですけど。
糸井 売れたは売れたんだ。
増田 でも、売れたのは200台くらい。

(つづく)

2000-05-01-MON

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