アートとマーケの幸福な結婚。
ポストペットの八谷さんと、
彼の船出。

第14回 有識者の文句について



このコーナーは、
ポケットポストペット制作話をきこう、
という特別対談になっております。
今はポストペットをつくる最中の話をきいてるよ。
つくりはじめてからが速かったというのが、
前回のポスペスタッフのかたにうかがったところ。
今回は、そのとき考えていたことや、
どういうことが気になっていたのか、
などなどが、テーマになっております。

幸喜 8月、9月、10月とやって、3か月くらいで
プレスリリースして・・・これ、異常ですよね。
ものができていないのにやってたんだ、
とかって、今思ったんだけど。
糸井 最初はちっちゃなものだったんですか?
幸喜 最初はちっちゃくですよ。
真鍋 フロッピー1枚に入るようにしたいと。
八谷 尋常じゃないですよね。
真鍋 どうかしてた。
八谷 でもすごいプロジェクトって今思うのは、
全員が「はい、やります」
って手を挙げて参加しているから、
モチベーションが異様に高いというか、
何か、嫌々参加しているひとが誰もいない。

北村さんも、ずっとそうだから、
深夜までぼくらとつきあって、
深夜タクシーで笑いながら夢を語りあったりね。
「『こち亀』にいつか載れば」
とかそう言う(*実際に載った)。
糸井 夢って言ったら
「こち亀」に載るのだったんだ。あとは? 
あっちこっちにくまが氾濫してるイメージとか。
そういうのはない?
幸喜 すごくたくさんひろがるとか
そういうのは全然なかった。
単に、純粋に伝えたいことを・・・。
真鍋 すごい些細だよね。
ネットの古株にしいたげられなければいいなあとか。
邪魔な添付書類つけやがって、って
言われなけりゃいいなあ、とか。
幸喜 あの頃って、今でもそうですけど、
インターネットって、
まだ農耕文明に入らない時期というか、
巫女みたいなやつがいて、聖職者がいるんですよ。
そいつらがいて、
お前らこういうことはしてはならん、
というような制約があった時代がやっぱあって、
縄文時代みたいなもんですよね。
そこにぼくらががーっと行ったときに、
添付を積極的に活用するメーラーというのを
やっていいのかという不安がすごくあって。
そういう聖職者のひとたちに
怒られなければいいなあと。
糸井 それって、どういうひとなの?聖職者って。
幸喜 ネットを立ち上げたひとだとか、
JUNETとか、なんとか、あるじゃないですか。
糸井 それは専門の職業としてそうなんだ?
幸喜 学校でネットワークの研究しているひとたちが、
そういうひとたちがやっぱり・・・
インターネットってどこでも言われているけど、
学術研究からはじまったもので、
そういうひとたちのコミュニティっていうのが
あるじゃないですか。
当然、そういうひとたちが論評するだろうし。
そういうひとたちに何か言われないかなあとか
そういうのがあったんですけど。
糸井 それは気になるくらい大きな存在だったんだ。
幸喜 それは、ありましたよ。
八谷 相対的に。
真鍋 だって、ミスしたらしかられるっていう。
インターネットでミスしたら、有識者にしかられる。
半角文字でも使おうものなら・・・。
幸喜 そういうものは、ありましたね。
今はそういうのはスケールが
ぐっとちっちゃくなって、
メーリングリストになったと思うんですよ。
メーリングリスト単位で存在していると。
糸井 ぼくはそういうひとたちの存在を
知らなかったくらいだから、
時代が変わってるっていうことだよね。
そんなやつはどこにいるんだろうって。
幸喜 ああいうひとたちは1番偉くて、
その文化に、宗教に従っている、
こう、小さいひとたちがいるじゃないですか。
そういうひとたちがインターネット仕切ってて、
そういうひとたちに絶対文句言われるだろうなと
思っていたんですけど。
真鍋 でもしかられなかったんだよね。
幸喜 しかられなかったからまあいいのかなあと。
真鍋 何かのときに、異業種交流会みたいな勉強会に
呼ばれて行ったときに、どっかのプロバイダがいて、
まさにそういうお小言を言う
システム管理者みたいなひとがいて。
糸井 それってラーメン王決定戦の団体みたいだな。
すごく太った人か痩せたひとしかいないんだって。
なんつーか、本気度が、桁外れになってるんだろうね。
真鍋 じゃあもう胃がやられちゃってるひとか、
脂肪にまわってるひとか。
糸井 俺らが、例えばラーメンのことを書いたとしたら
「こいつら、誰に断ってラーメンを書いてるんだ」
って言う人もいるんだろうと思うよ。
だって向こうはそれに命をかけてるんだからね。
真鍋 異業種交流会みたいなのに行って
「こういうのつくってるんですよ」
と言ったら、ちょっと嫌な顔をされて、
「あ、ここにいたか」
と思った。
「困るんですね、そういうことは」
って言われて。
糸井 どういう文句を?
真鍋 「無駄なテキストが」とか。
糸井 「みんなの管を、
 そんなことに使わないでくれ」って?
真鍋 「もっと有用なことに」と。
最初の頃のインターネットって、
7ビットしか通らなかったときが
その昔にはあって・・・。
今はもう全然そんなの関係ないですけど、
インターネットに8ビットの
文字コードを流すのはけしからんとか。
そういうのがありましたね。
「サブジェクトに日本語を入れない」とか。
糸井 あーなるほど。そのなごりがあるよね今。
幸喜 すごいがんがん言われてたんですよ。
たぶんそういう「こうしろ」という
インターネットの使われ方というのは、
プログラマーから見ると、
彼ら自分たちでラクしようとするために
その流儀を押し付けるわけですよ。
それでやりつづけるほうが楽なんですよ。
ぜんぶUNIX流でしちまえというような。
糸井 逆に彼らから見ると、
俺たちが1くわ1くわ耕して
あまりいいものを食わずにやってきたものを、
折角キャベツが出来たら、
ばくっと食ってるやつがいる(笑)。
キャベツを畑どうしで投げている。
落っことしたらどうするか、みたいな。
幸喜 その考え方は間違っているんです。
それあんたたちは間違ってるよ、っていうのも、
やっぱわからせたいというのがあって。
真鍋 私ちょっとだけ言ってこないかな、
と思ってたことあったよ。喧嘩できるのに、って。
糸井 火の国の女のようだ。
でも、インターネットに関してのそんな話、
ここで出てくるとは思いもしなかった。
八谷 黎明期でしたから。
糸井 んな文句、ちょっとでも来たら
俺はやってなかっただろうな。
「るっせーなー、やめてやるよ」だよ。
幸喜 それで、次のタマとかは考えていましたよ。
添付でやるのが駄目だったら、
テキストで本文でやると。
それも考えていたんすよ。
それも用意してベータ版をやって、
で、文句言われなかったからそのままで。
糸井 じゃあ、それ用意するだけでも
ある意味で無駄なコストをかけてるよね。

(つづく)

2000-04-21-FRI

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