アートとマーケの幸福な結婚。
ポストペットの八谷さんと、
彼の船出。

第7回 ポスペをつくる前に、夢をみた。

「じゃあ、つくるひとになればいいんだ」
とアーティストでやってゆこうと思った八谷さんの
その後について、今回はきいてゆきます。
いよいよ、ポストペットの誕生まぎわのときです。



100人で100日間、同時に日記をつけてみる。
メガ日記はたくさんの人たちの日常生活をネットの
内外に公開していく交換日記プロジェクト。
100日間の間、見ず知らずの人たちが共通の
ネット上の掲示板に書き込みを続けていく。
すでに4回実施されている。「他人」ってなんなのか、
「自分」とはなんなのか考えるための作品。
写真は第2回目のメガ日記:ICCのもの

これは今回触れられる
八谷さんの企画「メガ日記」です。
写真と紹介文は
八谷さんのホームページ
http://www.petworks.co.jp/~hachiya/
から抜き書きさせていただきました。

八谷 で、ちょうどそのワールドシステムを終えた頃に、
ポストペットの原型になる夢を見るんですけど。
糸井 それもまた啓示なの?
八谷 そうですね。啓示というか、夢で見て・・・。
ぼく、いろんな問題の解決に夢をつかう(笑)。
とりあえず行き詰まったら、とりあえず寝るんですよ。
そうすると次の日の朝に、
「あ、こうすればいいんじゃん」って。
糸井 そう言えば、寝てから「起きること」って
けっこうあるなー。
八谷 寝て、覚める頃に
すごいいい解決を思いついたりとか。

で、やっぱり95年の頃に
インターネットを使いはじめて、
はじめてメールとか使いはじめて、
年末にワールドシステムで
すごい忙しかったこともあって、
年賀状とかも当然準備していないから、
みんなメールをつかっていれば、
メールで年賀状を出せるのに、とか思ってて。

年賀状って、つくるのけっこう
めんどくさいじゃないですか。
印刷するの、めんどくさいなあ、
どうやったらグリーティングのメールになるかなあ、
と思っていて、で、寝てたら、
ある女の子なんですけど、
知り合いの女の子からの
メールをテディベアが運んできて、
うちにもテディベアがいて、
そこんちのテディベアとうちのテディベアが
メールのお使いをしているうちに
恋愛して、どうも子供ができたみたいだ、
どうしよう、みたいな夢を見たんですよ。
それを見たのが実は人の家に泊まっているときで、
実際にはメールの送り主と別の女の子の家
だったりするんですけど。
糸井 やっぱちょっと自分のなかに
不安感があったときのほうが、
アイデア出るのかもね。
落ち着いてないじゃん、その場所って。
どう考えても。
八谷 そうかもしれないですね。
落ち着いてないんですね。
「どんな夢を見たの?」
「テディベアがメールを運んできて・・・」
君じゃない女の子とは言えない。
でも、見た夢としてはおもしろかったから。
ワールドシステムをやっているときに
もう一個別の作品もつくっていたんです。

メガ日記というプロジェクトなんですけど、
日記を1か所にたくさん集めてみるというもので、
100人で100日間でしてたんですけど、
その掲示板のなかでは
日記しか書いちゃいけないという
ルールにしてたので、
ひとと談話するときは別の、
ニフティの掲示板とかでしてたんですけど。
その夢の話をそこでしていたら
いろいろなひとがけっこうおもしろいと
言ってくれたので。
糸井 そのときには世の中ではメールソフトというのは
機能してたのですか?ユードラとかあったの?
八谷 ユードラはありました。
マックだとユードラくらいしかなかったですから。
糸井 じゃあメールをつかっている数も
日本中でそんなに大勢はいなかったんですか。
八谷 ニフティサーブでやってて
メール使っている人は多かったと思いますが、
インターネットでのメールは
ほとんどまだきかなかったような。
糸井 ほー。
幸喜 「ニフティからインターネットに
 メールが送れるようになりました」
って言うか言わないかくらいの。
糸井 ああ、よくわかる、それリアリティある、俺。
八谷 それではじめてユードラを使って。
一応機械と芸術の学校にいたし、
マックもぼくその時点で7〜8年使っていたから、
それなりに自信はあったんですよ。
でもユードラが全然設定できなかったり。
「でもメールって誰しもが
 使っていなかったら、本来駄目じゃん」
みたいな気持ちだったと思うんですけど。
ちょうどそのときに、こんな夢を見たという話に
いろんなひとたちが反応してきてくれて。
糸井 それは96年くらいですか。
八谷 そうですね。95年末か96年頭。
おもしろいというひとが多かったから、
これは何か与太話で終わらせるのはもったいないなあ、
と思って、真鍋さんを。
真鍋 日記に、夢を見た、という掲示板を私も見てて。
糸井 それは、偶然?
真鍋 いえ。
私もメガ日記というものに投稿してやっていたので、
そのまわりで、メガ日記のことを語る掲示板に
私が行ったんです。
糸井 そのときもう既に日本には、
そういう広場のようなものが、空中にあったんだね。
ごく少ないなかに。

(つづく)

2000-04-10-MON

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