アートとマーケの幸福な結婚。
ポストペットの八谷さんと、
彼の船出。

第5回 視聴覚交換マシン

まずは ポストペット制作以前の
八谷さんのアートワークスについてうかがってます。
現在もつづけてエアボード(↓)など
おおお!となってしまうような作品をつくってる
このひとの原点、視聴覚交換マシンについて、
更にくわしくきいてみましょー!!


空気に乗るためのスケートボード
空気にのるためのボード。
ジェットエンジンのついた彫刻作品。
ボードに模型用ターボジェットエンジン
(米国Turbomin社製)を2発搭載し、
地上から数センチホバーリングしながら滑走し、
操作は体重移動でのみ行う。
Air Boardは、極めて20世紀的な作品は
今世紀中に作っておきたい、という
シンプルな動機でスタートしたため、
1997年のプロジェクト開始より、
順次新たなバージョンの制作が予定されている。
AirBoard-α-は試作機。
ジェットエンジンの性能のテスト、
機体のみでの安定した垂直浮上を
おこなうことがこのバージョンの最終目的。
制作開始は1997年末。
現在まで3回ほど浮上実験が行われている。
(福井ビエンナーレ出品作品)
●βバージョンは実験機(写真)。
実際に作家(体重51kg)を乗せて一定時間
浮上することを目的とする。1999年9月発表。
●最終のAirBoardは体重制限の上、
選ばれた観客を乗せる予定。
こちらは2000年の発表を予定している。
(撮影:牧原利明)
↑こちらのお写真、文章は、
八谷和彦さんのホームページ
http://www.petworks.co.jp/~hachiya/
から抜き書きさせていただきました。

八谷 視聴覚交換マシンのなかの仕組みは、
結局、SMTVでやっていた機械がほとんど入ってて、
糸井 ああ、つまりトランスミッターがおたがいについてて。
八谷 テレビの受信機がここについてて。
SMTVでやっていたことを
すっごいコンパクトにして、
「自分」というものを見せようとしました。
「自分が映ると、ひとは見ずにいられない」
というのが、あったりするじゃないですか。

あとは視聴覚交換マシンを思いついたのは、
もともと最初からこれを作ろうと
考えていたわけじゃなくて、
展覧会が決まって、
何つくろうかなあと考えたときに、
当時、グランブルーとかが流行って、
ぼくもちょっとイルカ好きになってて、
江ノ島の水族館で勝手に
イルカに命令出してたりとかしてたんですけど。

脱線しますけど、水族館に行って
トレーナーと同じ動きをすると
観客がやっても、イルカはちゃんと芸をやってくれるんです。
だから、誰もいないのを見計らって餌もあげずに芸を
させたりしてた。

でも、飼われているイルカじゃなくて、
野生のイルカと泳ぎたいというのがあって、
小笠原に行ったんですよ。
あそこに行くのってけっこうお金もかかるし、
1週間ぐらいになるから、
イルカの生態を勉強してから行こうと。
海でおぼれたり、つつかれたりするのも、いやだから。

で、イルカってエコロケーションというのを
やってものを見ているんですよね。
音波を出して、その反射で。

で、小笠原に行ってみたらイルカって
割と群れで行動しているんですよ。
そういうとき、はたと思いあたったのは、
一匹が音波を出して「見て」いるということは、
ほかのやつも同じ音波を聞いて「見れる」わけですよね。

あと、イルカって群れで行動しているときに
すごい意思が疎通している感じがするんですよ。
コンビネーションで魚とったり。

それで仮説として「イルカは視点を共有しているのでは」
と思っていて、もし間違っていたとしても
それを人間に適用すると面白いかも、と思ったんです。

で、「ひとの視点でものがみえるというのを、
SMTVをやっていた仕組みでできるんじゃないかなあ」
と思って、片目にカメラとテレビをつけといて、
お互いに人のカメラの映像も見えると。
糸井 じゃあ、最初は2眼だったんだ。
八谷 最初は2眼だったんですけど、
でも、作品としてつくるのに、
「視点を共有」ってことよりも
「ひとの視点でしか見れない」
というほうが強いなあと思って。
だから、結果的に自分の視覚をふさいじゃって。
糸井 簡単に言うけど、なかなか思いつきにくないよね。
原型に近いとさえ言えるよね。
八谷 「いける」とか思ったときに、
「あ、じゃあこれでセックスとかしたらどうなるのかな」
とか想像して。
糸井 ぼくもすぐにそれを八谷さんにききましたよね。
「あんまりよくないですよ」とか。
八谷 実験の結果、あんまりよくはなかったですね。
でも、キスは良かったんで、
これつけたお客にはキスをしてもらおう、とか。
糸井 手をつないでもらうだけでもびっくりしたもん。
お互いに会うのだけでびっくりした。
八谷 それは、そうなるだろうと思って
つくったわけじゃなくて、
単純にどんなことが人間の身に起きるかなあ、と
いう好奇心からとしてやってみたかったんですね。
だから、実験道具なんですよ。
糸井 それはぼくの好きなパターンで、
自分が何を考えているかを知るというのが
ぼくの興味なんですよ、いつでも。
何かこう、人工的に事件を起こして、
それに急に対処する自分を知って、
「あ、俺はこうなのか」
と思う、それが好きなんですよ。
八谷さんの言ってることって
割にそういうのが多いんで、
とっても通じるんですよね。
今の視覚交換マシンだって、
典型的にそうですよね。
八谷 道具としてつくっておけば、
自分だけじゃなくて、
他のひとたちがやっているところを
自分が別のところから、
見ることもできるし。
糸井 そこがコマーシャルにつながる要素が
あったとさえ言えるな。
八谷 はじめて自分が身につけたときには、
やっぱり全然予想していない、
ことがたくさんおきて、
「うわ、何だこれ、こんなに大変なんだ、
まずいもんつくっちゃった-」
というのがけっこうあったんで。
糸井 悪魔の機械じゃー。
八谷 極端に言うとそういう悪魔のような機械。
で、なかなかこれはいけるってことになって。
ワンナイトだから、ほんとに一晩だけのために、
そのとき持っていたボーナスのうち60万ぐらいを
視聴覚交換マシンにつかって。
でも、松尾さんはあのライトデプスに120万くらい
つかっていたんで、もっと大変でしたが。
まあ逆に、両方とも会社に勤めていたから
できたというのもあって。
それが最初の展覧会で。

ただ、美術の世界には
そういうのをやっているひとがあまりいなかったので
割とお声がかかるようになってきて、
次の年の展覧会にもまた参加することになったりして、
そういうのをやっているうちに、
賞を受賞したりしたもんで。
糸井 視聴覚交換マシンがですか?
八谷 いえ、それじゃない、
視聴覚交換マシンの発展形の
ワールドシステムというのをつくったんです。
成功作ではないんですけど、
ちょっといろいろ思い出が。

(つづく)

2000-04-08-SAT

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