ピーコを、チェック。
杉浦克昭自伝的対談。

第28回 「さびしそうな人」を見ちゃうわね。


糸井 いまの、おすぎさんと
ピーコさんの見ているものの違いだけでも
おもしろいんだよね。
日常生活を共にしている人たちとは、
「同じものを見ている」
と、無意識に想定しているわけだけど、
でもほんとうは、違うわけじゃない?

たとえば、話をしている時だって、
それぞれの人が相手に見ているものって、
かなり違っているわけで・・・。
ぼく個人のことで言うと、
ぼくはあんまり、人と話している時に、
人の顔を見ないんですよ。
ピーコ いつも寝てるみたいよね。
糸井 (笑)まあ、そうだね。

・・・実はかなり恥ずかしがり屋を
克服してきたつもりですから、
最近ようやく人の顔を見られるようになったの。
ピーコ あら?
糸井 だから、昔会ってた人に
「おう!ひさしぶり!」と言われても、
覚えてなかったりするんです、これほんとに。
ピーコ ふーん。
糸井 もともと、その人の顔を見てないの。
「・・・じゃあ、俺は何を見てるの?」
と思いはじめると、他の人が
何を見ているのかも、気になって。
ピーコ じゃあ、若い頃、
あんたは人の何を見てたの?
足もと?
糸井 おしり、かな・・・。
ピーコ おしりに欲情するの?
糸井 (笑)違う違う。
「欲情」じゃないんですよ。

正面の姿を見ているのは恥ずかしいから、
「うしろすがた」ばっかり
見ていたような気がするんです。
ピーコ それはちょっと、つまんない人生ねー。
糸井 (笑)・・・そういう人なんだもん。
何せ、「下働き」の似あう男ですから。
ピーコ (笑)ウフフフ!
あ、笑っちゃった。
いけない。ごめんなさい?
・・・(あらためて)そうですよねぇ。
糸井 テレビの場合は、いいんですよ。
いくらこっちが見ても、向こうから
「何見てんねん!」って言われないから。
ピーコ わたしはね・・・どうしても、
「さびしそうな人」を見ちゃうの。
このごろ、特に。

気がつくと、どこか
さびしそうな人を見ちゃう。
「ほんとはこの場にいちゃいけないのかな」
みたいな人を、見ちゃう。
糸井 それは、小さい時から?
ピーコ 小さい時は何見てたのかなぁ。
あ、思えば、おとなばかり見てたわね。
同年代の子なんか、見てなかったわ。
糸井 なるほど。
ピーコさんの心のアルバムには、
おとなの姿と、さびしそうな人の姿が、
映っているんだね、きっと。
ピーコ ま、仮にそういうアルバムがあればね?
でも、心象風景をアルバムにしてみたら、
断面がたくさんある人もいるけど、
ぜんぜんない人も、いるじゃない?
アルバムに全然写真が入ってない人とか。

あなたのアルバムには、
小さい頃からおしりが並んでいるから、
どのおしりがいいとか悪いとか、
あ、これは何年生の時のおしりだとか、
わかるだろうけどねぇ。
糸井 (笑)・・・そういうことじゃないよぉ。
でも、さびしそうな人に
ピーコさんが興味を持つのは、いつから?
ピーコ いつからか、わからないけど、
けっこう長くそうかもしれない。
糸井 スーパースターみたいな人、
かがやいている人を、
いいなあ、と思ったりしないの?
ピーコ わたし、そんな人きらいだもん。
だって、つまんないじゃない?
糸井 (笑)そう?
ピーコ だって、世の中でわたしが
いちばんキライな人って、長嶋茂雄よ。

だから、いまの若い人で
スポーツをやっているような人を見て
わたしが、そんなに惹かれないのは、
明るすぎるからなのよ。

わたしは、「さびしげ」な人を好きなの。
糸井 (笑)複雑だなぁ。
でもおもしろいね、その見方。
ピーコさん独自のものだから。

2001-11-25-SUN

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