ピーコを、チェック。
杉浦克昭自伝的対談。

第27回 『赤い靴』、こわかったよ。


糸井 ぼくは、おすぎさんとピーコさんが
見ている景色が違うというところで、
すごく「あ、おもしろい」と思ったよ。
ピーコ まあ、もともと、
「メガネが変わってる」というのが、
オカマのいけないところかも
しれないんだけどねぇ。

あの人はあの人の心象映像で
ものを覚えているから。
よくあるのよ、あの人・・・。
「わたしは、3歳の時に
 連れられてった映画がわかるのよ?
 父親に抱かれて、見てた」
って言うけれども、
わたしは抱かれた覚えは、ないわ。
糸井 (笑)
ピーコ わたしが覚えてるのは、
『キングコング』を肩車を見たことよ。
糸井 (「俺に振って」という動作)
ピーコ (笑)あなたも聞いてほしいのね?
・・・あなたは最初に何を見た?
糸井 わたしは、『赤い靴』よ。
(※おすぎさんのマネで)
ピーコ ああ、わかるわ。
糸井 靴をはいたら、
踊りがとまらなくなって・・・。
あれ、こわかったぁ!
ピーコ ・・・ねぇ、おすぎのマネやめて(笑)。
糸井 (笑)
ピーコ 重里のナマの声でしゃべってくれないと。
糸井 (笑)はい。
いやぁ、でもあの『赤い靴』は、
ほんと、こわかったっす。
・・・・キチガイ映画じゃないですか、あれ。
ピーコ 言葉選んでください。
糸井 異様な世界に連れられていく映画だったよ。
ピーコ いくつの時に見た?
あれは、1953年ぐらいの映画よ。
糸井 じゃあ、5歳かな。
ピーコ そうですね。
わたしは8歳だった。
糸井 あれ、父親に連れられていったけど、
退屈だとか退屈じゃないとか
そういう次元の前に、こわかったですよ。
ピーコ でも、あの踊りかたって、
靴が動いてパタパタパタパタッて
(ここで、ピーコさん席を立って踊る)
クーッて落ちていくみたいなことだけ
覚えてる。
糸井 (踊る様子を見て)わはははは。
・・・ぼくはね、そんなに細かいところを
覚えていなくって、ただ
「こわかった」ことだけ覚えてたよ。
ピーコ (踊りおわって)
・・・ハーつかれた。
ハァハァ。やっぱ、年ねぇ!(笑)
糸井 (笑)ふふふ。
ピーコ 動くとこんなんなっちゃうわ。
糸井 (笑)それで、ぼくがピーコさんに
聞きたかったことは、何を最初に見たとか、
生まれてから今まで、何をどう見てきたかとか、
そういうことだったんです。

「あなたは、いつも、何を見ているの?」
ということって、聞いてみたいんです。

自分のことで言うと、
生まれてはじめて見た映画は、
その『赤い靴』で、
生まれてはじめての記憶って、
「縁側」なんですね。
網膜にはじめてうつった記憶って。

まあ、三島由紀夫は
産湯のタライだったとか言うけど、
ぼくは、縁側なんです。

で、ピーコさんはどうなのかなあ?
と思って。
ピーコ わたし、小さい時に
はじめて見たものっていうのは、
それはぜんぜん、覚えてない。
そこはおすぎとは違うのね。

わたしはもっとこう、
くだらないことを覚えてる。
ちっちゃな時の、くだらない記憶だったり。
あとは、におい。
コンデンスミルクのにおいだったり、
そんなことは、よーく覚えているわね。

あんまりかいでいると、
かいでいるうちに
具合が悪くなっちゃうようなにおい、
覚えているわね。
糸井 (笑)「具合が悪くなっちゃう」。
ピーコ ケミカルなにおいも、わかるわね。
初期の頃の塩化ビニルの
すぐ切れちゃうような素材の
あのにおいとか。
糸井 へぇ〜。

2001-11-22-THU

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