ピーコを、チェック。
杉浦克昭自伝的対談。

第25回 あんた、自分でそういう本を書きなさい!


ピーコ 40歳過ぎて、ひとり暮らしをしてからなのよ?
わたしが、自分の過ごしたいような
生活をしはじめたのって。
糸井 へぇ。
ひとり暮らし、40歳過ぎてからなんだ?
ピーコ そうよ。
わたしはオカマだから、好みがあるじゃない?
たとえば、007の「ロシアより愛をこめて」を
若い時に見たんだけど、あそこで、
ショーンコネリーが女とやる時に、
毛皮の毛布をかけるのね。

それで、シャンパンをあける。
ひとりになるまでは
そういう生活はしなかったけど、
いまは、そういうことをしているわね。

「グラスはぜんぶバカラでそろえたい」とか。
お料理を載せるものは、伊万里にしたい・・・
そういう考えが、ずっとあったんだけど、
ようやく、叶うようになってきたわね。

糸井 「こうしたかったな」
っていう時のバランスの取り方もいいけど、
ぼくは、ピーコさんの話を長く聞いていて、
「あ、こういうふうになったのって、
 ちっちゃい頃の親のおかげだなぁ」
っていうしつけ糸が、
常に見えていたような気がしたんです。
ピーコ それは、そうね。
呪縛から離れられない、っていうことも
あったのかもしれないけれども。
食べ物の好みにしても、
本の読み方にしても、それはあるけど。
糸井 ピーコさんの言っていることって、
「オカマの言ってること」というよりは
ある意味、おじいさんやおばあさんの
言っていることに近いようなところがあって。
それって、親がずうっと、
「この子には、ここのところだけは、
 絶対に守ってほしい」と思いつづけて、
はりつけたものが、はがれないで
残っていたんじゃないでしょうか。

ぼくは、だから読んでほしいところって、
そうやって一生懸命はりつけたものの
コスト、みたいな・・・。
ピーコ もちろん、そういう親はいて、
ありがたいことに、
「オカマの言葉を直しなさい」
と言われたことも一度もないし、
きっと男を好きなことを
しってたと思うけど、そのことも
別に叱らずにいてくれた。

女の子みたいだと
母は近所に言われただろうけど、
そのままでいてくれたし、
父親もこわい人だったけど
わたしたちが何をしようが
だまっていてくれた。

「何の仕事につきなさい」とか
「はやくきちんとしなさい」とも
言われなかったし。
糸井 父親は、絵はがきをくれるんですよね?
出張先から、小さい頃のピーコさんに。
「こういうのを見たよ」という
風景の絵はがきが、一枚一枚たまっていって、
それを見ながら、小さいきたないオカマだった
ピーコさんが育っていったのは、
聞いていてじーんとしましたよ。
ピーコ あんた!
・・・その頃のわたしは
「きたないオカマ」じゃなかったわよぉ。
ちいさかったんだから、きたなくないわ。

糸井 はい(笑)。
じゃあ、「自称かわいいオカマ」だった
ピーコさんが、その絵はがきを受け取ると。
たった一枚は、20円30円の、
それほど高くはないものですよ。
でも、ものの高価さよりも
そこに書いてくれる父の気持ちに
何かを思って見ていたというところが、
いまのピーコさんのおおもとだと、
ぼくには見えているんです。
ピーコ 親はそういうつもりで
はがきを出したんでしょうね。
お金の価値というよりは、
どこかに行ったなら、その体験の上で
話してくれる話ってのが、あるじゃない?

そういう親にあえたことは、しあわせだけど。
糸井 出張先から毎回絵はがきを送るほうが、
値段でわかるものよりもコストが高くて、
手間と心が入っているんだよ。
それは、並じゃないと思う。
ピーコ まあ、でも、当時は
お金もなかったんだけどね。
その行為をつづけてくれた父がいたことは、
ありがたいと思うんだけど。
何てったって、最近じゃあ
子どものような親が多いから。

そういう当たり前のことを
やってくれたんだよね。
糸井 時間と手間のかかる
当たり前のことって、
なかなかできないんですよ。

ぼくのことで言うと、
「香港でサンタクロースを見た」
っていう手紙を子どもに書いたりして、
ちょっとずつウソを積み重ねていって、
「あれはサンタクロースだったのかなぁ」
なんて悩みながら、子どもに
「それはパパ、サンタクロースだよ!」
って言わせるところまで持っていったりとか、
時間のかかる遊びを散々してたんだけど。
ピーコ (笑)・・・あんた!
もう、自分でそういう本書きなさい!
糸井 でも、子どもを相手にするのって、
すごい時間もかかるし手間もかかるし。
・・・「たいへんだ」と思うと
できないことなんだけど。

ただ、ピーコさんの話を聞いていると、
両親が、大切な着物をぬうように、
育てたんだなあと思って。
ピーコ まあ、子どもだと扱われたことはないわね。
わかりやすい本をもらったこともなくて、
いつでもおとなの本を読んでいたし。

2001-11-21-WED

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