ピーコを、チェック。
杉浦克昭自伝的対談。

第10回 なんで、自分が助かったのか?




ピーコ 好きになった子と付き合ってると、
あまり年上って思われないみたい。
糸井 それは、ちょっとわかるわ。
ピーコさん、そうだもん。
ピーコ でもね、56歳の人と話してれば
56どうしの話になるし、
無理に年下の人に合わせることもないよ。
糸井 みんながそういうふうになったらいいよね。
ピーコ どうなんだろう、
おもしろくないんじゃないの?
糸井 いやあ、そうなったら、ラクだと思うよ。
ピーコ 何で?
わたし、大変よ。
ラクじゃないのよ、いま、こうやっていても。
それは大変なんだから。
・・・人に大変だと思わせないことが、大変なのよ。
糸井 ピーコさん、大変?
ピーコ 大変よ、お金もかかるし。
糸井 そりゃそうかあ。
ピーコ いい人でいなきゃいけないし、
ウソも・・・いい人であるためのウソも付くし。
糸井 いま喋っていても、そこまでの本音を、
ピーコさんなら言えちゃうじゃん。
そのラクな感じは、あるよ。
ピーコ そういう意味では、
わたしははじめから
「オカマよ―っ!」
って言っているから、ラク。
隠していないから。

これは隠してる人は大変だと思う。
それも男が好きだっていうのを
隠してるだけじゃなくって、たいがい
セックスも男としたいっていう欲望も
隠してるわけだから。
そこがわたしはないわけだから、
ちょっとラクだとは、思う。
糸井 おかまを隠してるっていうのは
わかり易い例だけど、
違うところでは、
みんな何かを隠してるじゃない?
ピーコ でも、隠してない人なんか、
つまんないじゃない。
糸井 ああ、なるほどねえ。
そりゃそうだ。
いやあ、おもしろいです、やっぱり。
ピーコ これ、座りにくい椅子ねえ。
糸井 (笑)ごめんね。俺も思ってた。
ピーコ あ、大丈夫、大丈夫。
はいそれで、今日はどうすればいいわけ?
糸井 今日はこんな話が
きっと1冊にまとまるんだなあっていう、
予告編みたいなもんをやろうと思ってて。
ピーコ こんな話って、今みたいな話でいいの。
糸井 すごくいいじゃん!
ピーコ 全然、わたしはいつも、
わたしの人生には
波乱万丈はございません、って言うけど、
誰も信じないの。
「さぞ、波乱万丈がおありでしょう」とか。
糸井 いや、わかるよ?
ピーコさんって、波乱万丈がなくったって、
なんかおもしろいじゃない。
何がおもしろくさせてるのかな?
ピーコ 顔?
糸井 いや、顔って、
長いことおもしろがれるわけじゃないし。
何だろう・・・?
やっぱり、クールだからなんじゃないの?
自分への視線が、もうひとつあるっていうか。
ピーコ それはね、努力したの。
糸井 身につけていったって感じですか?
ピーコ それは訓練です。
もう、目を取ってから
12年なんだけど・・・。
糸井 あ、そんなになる?
ピーコ 早く言えば、
目を取るっていうことより、
悪性のガンというのが軸になってて。
ものすごく悪性で、脳と体全体の骨と、
それから内臓全部と
ありとあらゆるところに転移する
そういうガンの一種だったから、
まずなるたけ日に焼けないとか、
あと、ほくろがすごくたくさんあるのは
体質なんだろうけど、
ほくろが活性化してきたらどうとか。
そういうことを考える必要があって。

30万人に1人しか発生しないガンだったし、
ちょうどお医者さんもそれをみたことがないから、
だいたい見過ごされちゃうことがあるんだけど、
・・・まして目の中に
皮膚ガンができるっていうのはつくづく珍しい。

うちのホームドクターが連れてってくれた先生は、
たまたまわたしと同じ病気を
前に診たことがあった人なので、すぐにわかったの。
幸運があるでしょ?
30万人に1人しか出ないガンの時に、
ちょうど私と同じ時期に、
ちょっと私より上の人で、同じ病気で、
先生のところにかかった人がいたの。
その人は、確実に2年で死んじゃったけど・・・。
糸井 そっか。
ピーコ ということは、確率から言ったって
死んじゃうほうが強いのに、
まあ2分の1みたいにして助かったわけね。

・・・そういうふうに考えると、
「なんで自分が助かったのか?」とか、
「何のために生きてるのか?」とか、
そういうことってすごく・・・。
糸井 考えるようになるわけか。
なるほどなあ。
でも、それまでも、
けっこう、考えてる素地はあったでしょ?
ピーコ 私ね、霊感が強いこともあったし、
霊をたくさん見ちゃったり、
聞こえないものが聞こえたりっていう人だったの。
今でもそうだけど。
変わってる人でね、匂いでも分かる。
何がいるじゃなくって、変な悪いものがあるって。
それから、音はね、
金属音で教えてくれたりする。
耳鳴りみたいに。
糸井 感じちゃうわけ?
ピーコ それから目はね、
感じて見えちゃうこともある。
糸井 おいおい?
それはもう、昔から?
ピーコ 普通は子どものうちにあって、
だいたい高校生くらいになると
なくなるんですって。
でもそれが、わたしの場合は、
高校卒業してから強くなって、
目を取る前はすごく強かったわね。
糸井 12年前から、そこは弱くなったんだ。
ピーコ いえいえ、
今日は、ああ、とか、
場所だとか、人も、わかる。
糸井 ふーん、巫女なんだね。
ピーコ やっぱり、寄ってこないもん。
私がだめって思う人は。
まあ、人に恨まれることはあるけど。
糸井 きっと、生き抜く力が強いんだね。


(つづく)

2001-04-30-MON

BACK
戻る