ピーコを、チェック。
杉浦克昭自伝的対談。

第5回 「かわいがられる」ことの天才だね。


ピーコ よく考えたら、好きになって、
その人とお話をしたい時に、
何の話をするのが
いちばんうまくスムーズにしゃべれるか、
特に口が重い人と話すためには、っていうと、
その人が一番好きなものを
まず自分が知らなければ覚えることでしょ?
糸井 うん、そりゃそうだ。
ピーコ だけど、釣りとかそういうのは
ちょっと嫌
だけど。
糸井 (笑)ああ、それはねえ。
俺は別にそういう関係じゃないから、
別にピーコが釣り好きじゃなくても、いいけど。
ピーコ 釣りとかそういう
実践的なのはダメなんだけど。
糸井 ふーん。
でもともかく、その姿勢は、
今の仕事になることができるように、
もう昔から、運命が向いてたね。
ピーコ どうだろう?
だってこの仕事になってからは、
好きな人って、できないから。
糸井 そういうふうなかたちで、
世界を共有したいなっていう気持ちは、
その後に、ないの?
ピーコ 若いお友だちは、いるけれど。
昔もそうだけど、どうしても
女の人を好きな男の人が好きだから。
糸井 はあ・・・。ふられる運命なんだ。
ピーコ ふられるっていうか、わたしのほうも、
できれば変な感じにはならないで、
お友だちでいたいって思うわけだから。
糸井 あ、そのへん、難しいところだね。
ピーコ そういうところ、男の人って面白くて、
本当に女が好きで、男が好きじゃなくっても
こっちが「好きだ」って言っていると、
人の見てないところでは手をつないでくれたり、
腕組んでくれたりは、するのよ。

まあ、もう35年も前にそうだったわけだから、
私なんか「変なもの」みたいなものだったわけでしょ?
その当時は。
・・・ま、今でも変なものとして
面白がられているけど、ある意味では。

例えば、そういう感じでは、
わたしの好きだった木場で材木問屋の
次男坊さんのおうちのお母様は、
すごくかわいがってくださった。

そこのお家に行けば私のごはんもあるし、
お布団まで敷いてあるし、
妹さんとお友だちになって、
お姉さんと2人で
洋服を作る時の
お客さんになってくれたり、
っていうのをしてくれたから・・・。
今でも何かあれば、連絡をとってます。
糸井 「かわいがられること」の天才なんだよね。
ピーコ かわいいかどうかは、わからないわよ?
糸井 まあ、いわゆるかわいいかどうかは別としても。
ピーコ いやな感じ。
こんな感じのインタビューが
長く続くとは思わない(笑)。
糸井 (笑)まあ、正直にやりましょうよ。
ピーコ (笑)正直にやってるわよ。
糸井 いわゆる「かわいい」っていうのと、
「かわいがられる」っていうのは別で、
でも「かわいがられる」って、あるじゃないですか。

この子とは、もっといたい、とか、
そばにいたらいいだろうなあ、と、
ピーコはいつも、
思ってもらえるわけじゃないですか。
ピーコ わたしは自分が
その場所にいたいからいるんで、
いたくないところだったら
さっさといなくなっちゃう人だから。
糸井 そうか、相手にしてみれば、
ピーコさん側に選ばれているわけですよね、
逆に言えばね。
ピーコ そう、私のほうが
選んでるってことになるんだけど、
ただ、お金目当ての「じじい転がし」
みたいなことは、しない。
どうしてこんなに嫌われるのかと思うくらい、
いわゆる、ただ金持ちなだけのじじいとは、
縁がないわね。そういう金目の話はない。
糸井 金持ちの人って、
もっと、ほめて欲しいわけでしょ?
ピーコさんに。
ピーコ わたしは、そういう人を、ほめないもの。
そうか。お金持ちのおじいさんは、
限りなくほめることのできる人がいいのね。
糸井 たぶん、力のある人って、
「お前もおれを好きなのか?
じゃあおれもお前を好きになってやろう」
っていうタイプなんじゃないの?
ピーコ わたしはその反対なのよ。
こっちが好きって言ってるのに
向こうはあんまり好きじゃないっていう
態度をしてる人を、ずーっと追っかけていたいの。
糸井 (笑)むつかしい人だなあ。
ピーコ こう、振り返ってもらっちゃったら、
わたしは、さっさと逃げていくというか。
ずーっとわたしを好きじゃないっていうか、
どこか冷たい人が好きなの。
なんかすごく「好き好き好き」って、
一人で言っていたいの。
糸井 でも、その気持ちは、
誰にもちょっとあるのかもね。
ピーコ そう?
好きって言われていたい人も、いるでしょ。
でもわたしは、好きって言われると、嫌。
だって、面倒臭くなるんだもん。
それだったら、
自分は何もしなくてよくなるじゃない?

わたしは、その逆で
「好き好き好き」って言いながら、
いろんなものを買ってあげたりするのが、
好きです。
糸井 親と子の関係なんかもそうかもしれないね。
親は子どもを好きじゃないですか。
でも子どもは離れていくじゃない。
ピーコさん、もしかしたら、
「お母さん」なんじゃないの?
ピーコ ・・・うちには、そういうのがなかったけど。
うち、離れていくとこがなかった。
離れたときは死別だからさ。
父親はどうでもいいんだけど、
母親のことは、すごく好きだった。

マザコンじゃなくて・・・
どう言えばいいんだろう?

(つづく)

2001-04-12-THU

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