OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.165
- MANUALE D'AMORE


やっぱり、男と女のものがたり‥‥
──『イタリア的、恋愛マニュアル』



©2005 Filmauro S.r.l.
シネスイッチ銀座、川崎チネチッタほか全国順次ロードショー


□イタリア女優、
 ジャスミン・トリンカさんに会いました。


『イタリア的、恋愛マニュアル』は、
4つのエピソードが、
少しずつ絶妙にリンクしながら、
素敵なハーモニーを奏でているオムニバスです。

第一章「めぐり逢って」
第二章「すれ違って」
第三章「よそ見して」
第四章「棄てられて」

恋が芽生え、育ち、熟し、終りを迎え、
そしてまた始まる‥‥、
それぞれの段階を、
それぞれ違うカップルが演じています。
好きな女のコに当たってくだけてばかりの青年、
夫婦倦怠期でなにもかもが噛み合ない夫婦、
夫の浮気にイライラしつつ、妻もじつは‥‥、
妻が家を出てしまい、独り残された夫は‥‥、
というぐあいです。

イタリア人は恋愛上手、なんてイメージがあるけど、
でも、「そうか〜、アモーレの国でも、
やっぱり恋には苦労しているのか‥‥」と、
思わずマニュアルに頼ってしまう彼らの
不器用さ、必死さになんだかホッとしてしまう。
もどかしくて、だからこそドキドキするし、
やっぱり人生になくてはならない恋‥‥。
笑いながらもしみじみとした人生讃歌が温かいです。

そんなわけで、
第一章の初々しい出逢いのエピソードのなかで、
ジュリアを演じるジャスミン・トリンカさんに
インタビューをしました。

ジュリアの輝くような美しさに一目惚れした
ニートなイタリアのダメ男、
トンマーゾ(シルヴィオ・ムッチーノ)くんの、
恋の猛烈アタックをかわしながらも、
トンマーゾの内面に触れるうちに、
だんだん心が動いていくという役どころです。

ナンニ・モレッティ監督の
『息子の部屋』でデビューし、
マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督の大作
『輝ける青春』で重要な役を演じて評価され、
「シリアスな作品に出る女優」とイタリアで
思われていたジャスミンさんが、今回、
ジョヴァンニ・ヴェネロージ監督の
コメディに初挑戦しました。

考古学者を目指していたというジャスミンさん、
どうして女優になったのでしょう?
それに1作目の『息子の部屋』以来、
しばらく女優の仕事を断っていたというのは‥‥?
などなど、伺ってみました。

なおこのインタビューの全容は、
劇場用パンフレットに
寄稿していますので、
そちらもぜひ! 合わせてお読みください。

銀座のホテルの一室でお会いすると、
時差ボケ、ハードスケジュールで
「ちょっと疲れてる」と言いながらも、
笑顔がめちゃくちゃかわいい26歳。
いったん話しはじめると、才女らしく、
言葉ひとつひとつに聡明さが光ります。
撮影でみせる大人っぽい表情にドキっとし、
30分間一緒にいただけで、完全に、
ジャスミンの魅力にノックアウトでした(笑)。

では、みなさんも一気にジャスミン色に‥‥。



──── ローマ大学では考古学を勉強されたのですね。

ジャスミン そうです。理論ももちろんですが、
      実際に手を汚して遺跡を掘ったり、
      実践的な勉強をしました。
      実践と結びつけられた歴史、ですね。


──── 考古学者になろうと思ってましたか。

ジャスミン 以前は考古学者になりたかったのですが、
      いまは、女優をやって、
      考古学者になりたいかどうかは
      わからなくなったんです。
      でも、女優をやりながらでもほかのいろんな
      ことをやることは、いいことだと思います。
      考古学やほかの勉強もやりながら、
      女優をやるのは楽しいのではないかと
      思います。


──── 女優になったきっかけは?

ジャスミン 女優になる気はまったくなかったのですが、
      ナンニ・モレッティ監督が、
      私の通ってた高校にオーディションに来て、
      プロの役者を探しているのではなく、
      若い普通の子を探してて。
      モレッティを知りたくて、会いたくて。
      彼に会ったことからすべてはじまりました。


      

──── そのあと、女優としての仕事を
     いくつか断っていたというのは?


ジャスミン やはりまったく女優になる気がなかったから、
      はじめは断ってました。
      『息子の部屋』に関しては、自分にとって
      大事な映画だったし、大事な経験だったので、
      そこで終りにするべきだと思ったんです。
      ナンニ・モレッティ監督と一緒に
      仕事が出来たし、
      自分としても満足していたから、
      終りにすべきだと思ったんです。
      そのあといろいろオファーがあったのですが、
      台本すら読まずに断ってたわけです。
      その2年後に、
      マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督から
      話が来て、それはすばらしい話
      だったので(『輝ける青春』)、
      「ノー」って言い続けるのも
      よくないんじゃないかと思って、
      それは受けました。


──── 今回ヴェネロージ監督と、初めての
     コメディは、いかがでしたか。


ジャスミン なによりも、この映画というのは
      自分にとって「ゲーム」だったと思うんです。
      イタリアの場合、役者のカテゴリーがあって、
      私は基本的に“若くてシリアスな作家監督の
      映画に出る女優”というカテゴリーに入ってた
      わけですけど、だから、コメディをやると
      決まったときは、みんなびっくりして、
      「本当にいいのか」という感じだったんです。
      でも自分としては、
      いままでとまったく違うものを
      やることに関して、うれしかったんです。
      そういう意味では、
      新しいものに挑戦するという
      大きなゲームだったわけです。


──── 演じた“ジュリア”について、
     ストーカーっぽい男の子に対して
     「ノー」と、拒絶してたんですけど、
     でもだんだん気持ちが変わったのは、
     なにがよかったのかな、って
     私も考えたんですけど‥‥。
     海のレストランのシーンで、
     彼女の気持ちがフッと変わる瞬間が
     あったと思うんです。
     ジュリアを演じたジャスミンさんとしては、
     そのあたりどうだったのでしょうか。


ジャスミン 海のレストランで、彼がウソをついて、
      彼女が怒るわけですよね。
      だけど、そこで、
      彼は若くてシャイで失敗をするんだけど、
      姪っ子に接するところとかに、
      じつはやさしいってところが出て、
      「弱さ」を感じたときに、
      彼女に恋愛感情が生まれてくるわけです。

      恋愛ってそんなふうに、
      失敗とか間違いとかが起きたときに、
      偶然生まれてくるものだと思うんです。
      それ以前に、彼女を追いかけまわして
      チヤホヤしてるときはそうはならなくて、
      間違いが起きて、弱さが現れたときに、
      気持ちが変わったわけです。


      
      (他取材のリクエストにポーズをとるジャスミンさん)

映画のなかの恋人、
トンマーゾくんについて、またトンマーゾを演じた
シルヴィオ・ムッチーノくんについても、
「どちらかというと母親的に接してる」と、
しっかりした彼女らしい、
オトナの見解を聞いてしまいました。
パンフレットのインタビューを読んでくださいね。

今年のカンヌ国際映画祭では、
「ある視点」部門の審査員にも選ばれ、
大役を果たしたジャスミンさん。
「好きな監督はたくさんいるけれども」
と言いながら、
デヴィッド・リンチ、ダルデンヌ兄弟、
フェルナンド・メイレレスと、
なかなかシブい監督を挙げています。

イタリア映画祭で上映された、
ナンニ・モレッティ監督の新作『カイマーノ』では、
映画監督志望の女性を演じているのですが、
ジャスミンさん自身も、
将来、監督業をやることにも、
「チャンスがあればやってみたい」と意欲的。
世界中の映画に興味があるようで、
その多彩な才能が開花していくのが
これからますます楽しみなのです。

『イタリア的、恋愛マニュアル』


©2005 Filmauro S.r.l.

*お知らせ*

今回予定していました、
諏訪敦彦監督の第3回は、
都合により少しあとの掲載になる予定です。
どうかご了承ください。

*ジャスミン・トリンカ写真*
メイクアップ/田中里佳
ヘア・スタイリスト/石塚千絵子(シグノ)
撮影/まーしゃ


Special thanks to director Jasmine Trinca,
and Happinet. All rights reserved.
Written by(福嶋真砂代)

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postman@1101.comに送ってください。

2007-07-29-SUN

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