OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.159
- campaign 3 -


日本の選挙はおもしろい‥‥
──『選挙』その3



シアター・イメージフォーラムほか、全国順次公開中

想田和弘監督の最終回です。

『選挙』は照明さんも、音声さんも無く、
想田監督が1人でカメラを回し、結局、
60時間の撮影素材になったそうです。
それに自費制作ということで、
すべてにおいて自由だからこそ撮れる
贅沢なほど貴重な瞬間の連続です。

監督はプレス資料に、
「撮影の現場は、予期した以上に
 スリルに溢れ、“目から鱗”の連続で、
 僕は途中でやめるどころか、水を得た魚のように
 撮影を最後まで楽しんだ」
と書いています。
その監督自身の楽しさが十分伝わってきます。

“選挙”を撮りながら、
じつはその向こうに見えたものが
あると話してくれたのですが、
それは何だったのでしょうか‥‥。
まだまだおもしろい話がつづきます。

□じつは日本人論でもある‥‥。

── 60時間の素材を編集するとき、
   監督の視点はどこにいちばん
   フォーカスしたのでしょうか。


想田 プロセスとしては、
   撮ってるときは無我夢中で撮ってるので、
   どんな映画になるのかわかってないんです。
   わかったのは、
   編集を始めた何ヵ月もあとでした。

   どんな映画になるか皆目わからない状態で、
   興味惹かれるシーンをどんどん繋いで、
   つまんないのは落とし、おもしろいのは残し。
   そうしたときに、残ったもので、
   どういう構造があるかが、だんだん、
   見えてくるんですね。
   それを並べ替えたりしているうちに、
   なんだ、この選挙ってこういうふうに
   運営されているのかってことが、
   だんだんわかってきたんです。

   ひとつは、選挙がどのように運営されるのか、
   システムとして自民党にはどのような
   勝利の方程式があるのか、
   ってことですよね。
   それがまずわかるようにしました。
   自分がわかりたかったし、
   観てる人にわかるように、
   手がかりを与えたいとうのがひとつありました。

   二つ目は、選挙という題材なんだけど、
   選挙を撮っているうちに、
   僕のいちばんの関心っていうのは、
   選挙のやり方っていうものを規定しているもの
   というか、日本の社会そのもの、
   に移っていったんですね。
   もしかしたら、選挙を題材にしてるけど、
   ほんとの主人公っていうのは、
   日本人なんじゃないか、
   日本社会なんじゃないかっていうふうに
   思いはじめた、というか、
   編集しながらそういうふうに思ってきて、
   それは1本の柱になるだろうなって
   思ったんです。

   ああいう組織の中でのコミュニケーションの在り方
   って、ある意味、自民党だけじゃなくて、
   企業、地域、学校とか、野球チームに至るまで、
   あらゆるところで貫徹されている組織の論理
   ですよね。
   すごく日本的な、そういうところにどんどん、
   関心が移っていって、そこまで、
   きちっと描きたいなと思いました。

   三つ目は、「山さんの40歳の挑戦」っていう
   それまで切手コイン商をやってたのに、
   いきなりの転身ですよね。
   それこそ清水の舞台から飛び降りるようなことを
   軽々とやってるんだけど、
   その挑戦の行方というのも、
   ひとつの焦点だろうと思いました。


── NYに住んで日本を撮るというのは、
   日本に住んでいて撮るのと違いはありますか。


想田 僕も14年間、NYに住んでいるので、
   帰国すると、ほとんど外国を旅行している
   ような気分というか、
   見るものがけっこうおもしろくて、
   日本人のちょっとしたしぐさとか、
   おじぎの仕方とか、歩き方とか、
   そんなのにも「おっ!」と思うんです。
   すごく新鮮で、目に留まるんです。
   誰かが『選挙』はおじさん文化に光を当てたって
   おっしゃってましたけど、
   おじさん文化もおばちゃん文化も、
   きっと外から来たからこそ目につく
   というのがあるんですね。
   僕がほんとに外国人だったら、単に目につく
   だけで、それがなんであるか理解しなかったかも
   しれないんだけど、僕は日本で育っているから、
   目につくと同時に、よく理解できちゃうというか、
   距離を置いて、観察して、それを描く、
   という意味では、いい立ち位置にいると
   思いました。


   

── チラシを折っているときなんか、
   だれもカメラと視線が合わなかったのが
   ちょっと不思議でした。


想田 僕の理想的なやり方は、
   水か空気のようになることなんです。
   ドキュメンタリーによっては、
   カメラを武器にして乗り込んで行って、
   こじ開けるというやり方もあるでしょう。
   でも僕はそういうタイプじゃないんです。
   むしろ距離をとって、自然に起こってることを
   ナチュラルに観察するというのを目指してるから、
   僕にとっては、水か空気のようになることが
   ベストなんです。

   そのために工夫していることがいろいろあって、
   たとえば、1人で撮るということ、
   もちろん予算の問題とかあるんですけど、
   ドキュメンタリーは
   基本的に少人数がいいと思ってて。
   やれるんだったら、やれるほどいいと思ってて。
   今回カメラを自分で回して、音声さんも、
   照明さんも、アシスタントもいなくて、
   しかも小さいカメラを回していました。
   そういうことによって、ある種、
   僕の存在感を消すのは比較的容易というか、
   4、5人のスタッフでやるときよりも、
   ずっと簡単だったんです。

   それプラス、僕は質問してないでしょ。
   だんだん彼らの意識から薄れていくというか、
   撮られている意識が無いというか、
   そういうのはありました。
   あとは僕のバイブだと思います。
   なるべくその場に溶け込むバイブを出してるから、
   それはけっこう自然に出来ることなんです。
   僕にとっては。


── 忍者みたいですねえ。

想田 そうです。“忍法、観察映画の術!”(笑)

── 観察映画は、シリーズ化するんですか。

想田 します。次は精神障害者のドキュメンタリーです。
   僕は撮りにくいものに目が行く習性があるんです。
   いっぱいアイディアがあるので、
   どれが先になるかわからないですけどね。


   おわり。

前にも書いたけど、この映画を観てからは、
選挙運動をしている人に興味が湧きました。
たとえばウグイス嬢も、
プロとしておもしろい仕事ですよね。
私もこんど観察してみようと思ったりして‥‥。

以前連載した『ビッグ・リバー』の舩橋淳監督
想田監督は、東大の先輩・後輩だそうです。
NYに日本の才能が行ってしまってる?
いやいや、また日本のおもしろさをエグって下さい。
観察映画シリーズ、とても楽しみです。

『選挙』

次回は、『図鑑に載ってない虫』の
ふせえりさん、岩松了さんが登場。
さてどんだけ笑わせてくれるでしょう〜?
お楽しみに。


Special thanks to director Kazuhiro Soda and Astaire.
All rights reserved.
Written by(福嶋真砂代)

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2007-06-24-SUN

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