OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.147
- SUNSHINE 1-


太陽が消滅する可能性は‥‥?
──『サンシャイン 2057』その1



© 2007 Twentieth Century Fox.
4/14〜有楽町スバル座、他全国ロードショー


「このところの地球温暖化ってどうなの」
と、すごくすごく気になっています。

単純に「今年の冬は暖冬でした。」
というだけでもなにか不気味な感じです。
なにをすれば温暖化が止まるのか。
いや、本当に止まるのだろうか‥‥?
アル・ゴアさん、教えてください。
まあ、もう私はいないとは思うけど(笑)、
いったい50年後はどうなっているのだろう。
年々日射しが強くなる気がするけど、
太陽の状態はどうなっているんだろう、
温暖化になんらかの影響があるのか‥‥。

ジュネーブにあるCERN(セルンまたはサーン、
欧州原子核研究機構:ウェブ発祥の地!)の
物理学者、Dr. Brian Coxによると、

 太陽は地球の100万倍の大きさの熱核融合リアクター。
 毎秒6億トンの水素を燃焼し、エネルギーに変換される。
 計算すると、太陽にはあと50億年分のエネルギーがある
 ことになる。だが太陽も宇宙に存在する1つの星として、
 いつか何かが突発的に起こらないとも限らない。

          (プレス資料より抜粋、要約まーしゃ)

まさか50年後ということは無いだろうとは言うものの、
可能性としては完全にゼロではないらしいんだ。
なんだか「太陽も人の子」と言ってるみたいな‥‥、
(いや、違うけど‥‥)。

ちなみにここにコックス博士のサイトがあります。
写真はいまいちだけど(笑)、
動画を観るとめちゃめちゃかっこいいです!!
物理学者で、ミュージシャンでもあり。
しかもキリアン・マーフィに似てるんですよね。
ドクター・ブライアン・コックス。

このコックス博士をアドバイザーに迎えて作られた、
イギリスのダニー・ボイル監督と、
イギリスのアレックス・ガーランド脚本による
『サンシャイン 2057』は設定が驚きです。
それは「50年後に太陽が消滅する」というもの。

観たときにいい知れぬ恐怖を感じたのだけど、
それはもちろん、このSF映画の作りが
リアリティに溢れているせいでもあるけど、
それ以上に、毎日少しずつながらも、
身体や感覚に変化を感じずにはいられない、
“平年”とは違う桜の開花時期や、気温、雨量、
日差しの強さなどなどを肌で実感しているから
なのだと思う。絵空事じゃないのではないかと。
ブルブルブル‥‥。

50年後、太陽の死滅しつつあるとき、
暗黒になってしまった地球を救うために、
宇宙船「イカロス2号」に乗り込んだ
地球精鋭の8人のメンバーたち。
彼らのミッションは、太陽に接近し、
太陽に核装置を投入し、
太陽を蘇らせるという、命懸けの任務。
うわぁお〜。


© 2007 Twentieth Century Fox.

真田広之さんのキャプテン(カネダ)、
アイルランド生まれのキリアン・マーフィ(キャパ)、
マレーシア生まれのミシェル・ヨー(コラゾン)、
ボストン生まれのクリス・エヴァンス(メイス)、
シドニー生まれのローズ・バーン(キャシー)
など、じつに多国籍なメンバー構成。
この多国籍さこそ未来の姿って感じがします。

さて、ダニー・ボイル監督と言えば、
いろいろ傑作がありますが、私にとっては、
最強のイギリス(スコットランド)映画、
『トレインスポッティング』(1996)の監督。
バイブルのように何度も劇場で観て、
とくに音楽にはハマってました。

今回お会いしたキリアン・マーフィさんも
ダニー・ボイル監督の大ファンでいらして、
『28日後...』以来2回目の出演。
今回は、太陽に投下する核装置“ペイロード”の
専門家、物理学者キャパを演じています。
人間関係よりもミッションを遂行することを
優先する、いままでのキリアンさんよりも、
なかなかクールな役どころ。
これまで線の細い中性的な役が多いけど、
これは過酷な状況で太陽と闘う、
キリアンさんの勇壮な姿は新鮮な迫力です!

最近で言えば、ケン・ローチ監督の
アイルランドを舞台に独立運動を描いた
『麦の穂をゆらす風』のシリアスドラマの、
シリアスダミアン役が印象深いですよね。
もちろん『バッドマン ビギンズ』の
悪役スケアクロウも個性的だったです。
でもでも、私がもっとも好きなキリアンさんは、
『プルートで朝食を』のキトゥンちゃん。
あの孤独なゲイの青年の可愛らしさには、
彼の天才ぶりが存分に発揮されてますよね。

というわけで、前置き長くてすみません。
ハードスケジュールでちょっとお疲れだったけど、
そのアンニュイな雰囲気がまた素敵。
気品と知性をたたえた佇まいに惹き込まれ、
通訳の戸田奈津子さんを交えて、楽しいひととき。
クールなキリアンさんもときに大笑いしながら、
気取らずに興味深い話をしてくれました。
(翻訳はまーしゃです。)



□僕は物理学とかそういうことについては、
 “空っぽの器(empty vessel)”だったんです。


──── 『サンシャイン 2057』のアドバイザーだった
     ブライアン・コックス博士なんですが、
     CERNの物理学者というから
     もっとなんか年配の人かと思ってたら、
     若くてほんとにキリアンさんにそっくりで、
     びっくりしました。
     年も近いし、いろんなお話をしたのでしょうか。
     影響を受けたこととか、ありますか。


キリアン 僕は物理学とかそういうことについては、
     “空っぽの器(empty vessel)”だったんです。

     (さすが舞台俳優! シェークスピアの引用で始まったぁ‥‥)
     だからもちろん、物理学についての
     本物の理解なんてできないわけで。
     なのでものすごくくだらない質問を
     いっぱいぶつけてましたね。
     ブライアンは、彼が仕事をしている
     ジュネーブのCERNにも連れて行ってくれて、
     従事しているプロジェクトも見せてくれました。
     彼の同僚の研究者たちとも
     いろんな話をしました。

     でも何が大事かと言うと、
     問題の“核心”を捕まえることが
     重要なことなんだよね。
     そういう大きな大きな問題に取り組むとき、
     それが人間性にどういう影響を与えるのか
     ということとかね。

     そうそう、あなたが言うように、博士は、
     いわゆる学者学者としたタイプの人じゃなくて、
     若いし、音楽もやってるし、おもしろい人で、
     大好きになりましたね。だから、
     いまでもずっと友達づきあいしてますよ。


──── じゃあキリアンさんは、
     いまは太陽については少し詳しい‥‥?


キリアン でも撮影は18ヵ月も前のことだし、
     いろんな知識が消えちゃいました。
     でも、繰り返すけど、
     キャパはその時代において有能な物理学者で、
     そういう研究をやり続けることが、
     人間性にどんな影響を与えるかということが、
     やっぱり大事だと思うんだよね。
     数字や知識ということ以上に、
     それが僕にはおもしろいと感じてました。


──── キャパのキャラクターは、
     チームの中でそれほどフレンドリーじゃなくて、
     仲間よりも一歩離れたところにいるような
     ナイーブな人だったと思うんだけど、
     お会いになったコックス博士はどうもとても
     フレンドリーな人みたいだし、
     対してキャパは大人しい。
     どうやってキャラクターを作り上げたのですか。


キリアン キャパは人生のすべての時間を
     爆弾作りに捧げているような人で、
     さらに、人類を救うということをやっている。
     だからその問題に対してすごく集中していて、
     ゴールに向って邁進している人だったんだね。
     人間関係にはあまり興味がなくて、
     人とはうまくやれないのだけど、
     わりとセンチメンタルな人でもあったと思う。
     僕はそういうタイプじゃないから難しかったし、
     僕にとってはけっこうチャレンジでしたね。


──── ‥‥ということはキリアンさんは、
     普段はフレンドリーなわけですね‥‥。

     (注:ハードスケジュールが重なり、
      いくぶん堅い表情のキリアンに、
      ついつい口をついて‥‥、すいません。
      でもキリアンの表情が一気にほぐれました。)

キリアン そうだね、そう願ってるよ(笑)。

──── 家族を地球に置いて、独りで、
     ミッションとして太陽に向って行く
     という心境について、
     キリアンさん自身だったらどう感じますか。


キリアン 僕だったら出来ないと思う。

──── 難しい‥‥?

キリアン そりゃあ。
     でもキャパには身近な家族というのは居なくて、
     彼の姉の家族だったかが居るくらいで。
     彼はなんかそういうタイプじゃないんだよね。
     すごくユニークな人で、
     自分の人生を進んで犠牲にするタイプだからね。


──── そうですね。
     でも誰かがやらなきゃならない
     ミッションだったですね。


キリアン そうそう。客観的にみても、
     若くて、もっとも有能で、
     ミッションにいちばん適していた人ですね。


──── キャプテン“カネダ”は、
     XXXXなことになるのですが、

     (ネタバレです、すみません)
     日本人の観客としては「オーノー」っていう。

キリアン そうなんだよね、悲しかった〜。
     
(楽しそうに思い出して笑うキリアン)

──── 撮影のときも、そんな感じでした?

キリアン そう、そんな感じだった。
     僕らも悲しい〜みたいなね(笑)。


──── ではカネダが去ってしまって、
     撮影の雰囲気も変わりました?


キリアン ものすごくユニークな撮影だったからね。
     最初は、ビッググループで始まって、
     で、撮影が済んだ人は、
     どんどん居なくなるでしょう‥‥。
     最後なんか、僕とクルーだけ、みたいなね。


──── そうですよね、キャパと太陽、みたいな。

キリアン そうそう。

     つづく。

青い瞳のクールなキリアンさん。
ほんの短時間一緒にいただけで、
“キリアン病”になりそうなくらいの、
まさに太陽の光みたいに強烈な
魅力(魔力)を浴びてしまいました‥‥(笑)。
話しているうちにしだいに体温も上昇。
キリアンさんもだんだん口調もほぐれ、
テンポのよい話になってきました。

8人のキャストは、撮影前の2週間、学生寮で、
まさに学生に戻ったみたいな共同生活をして、
苦楽を共にしている宇宙船の乗組員が醸し出す、
独特の“空気”を作りだしたのだそうです。
そのとき、船長役の真田広之さんは、やっぱり
リーダーとして頼られる存在だったということで、
記者会見で

「誰かが作らないと食にありつけないという状況でした。
 みんなに聞いてみたら誰も作れないとのことだったので、
 私が作るようになったんです。
 “船長”と言うより“コック長”でした(笑)。」
 (公式ホームページより)

とユーモアを交えて語る真田さん。
なんというか、世界で活躍する俳優さんの
人間性の大きさが垣間見えましたねえ〜。
でしゃばらずに威厳があるというか、なんとも素敵。
そんなところをボイル監督は見抜いていたようです。


記者会見での真田さんとキリアンさん

次回は、
私も大好きなダニー・ボイル監督について。
知性豊かにキリアンさんが語ってくれましたので、
どうぞお楽しみに!

『サンシャイン 2057』


Special thanks to Cillian Murphy and
Twentieth Century Fox. All rights reserved.
Written by(福嶋真砂代)

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2007-04-20-FRI

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