OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。


vol.82
- short shorts talk 2-


「ショートショートフィルムフェスティバル」
について別所哲也さんにうかがっております。
第2回目です。
今日はハリウッド、 「エジプシャンシアター」で行われた
「ショートショートフィルムフェスティバル」
キックオフスクリーニングの話と、
日本のショート作品について聞きましょう。
日本の作品の外国での評価とか、
なぜそうなのか、とかすごい深くておもしろいです。

映画祭の詳細はこちらにあります。
http://www.shortshorts.org

(インタビュアー「」はわたくしめです。)

SSF2003mainvisual
    
日本で生まれた映画祭です!
「エジプシャンシアター」のお話を聞かせてください。今回は別所さんだけいらっしゃったそうすね。

別所さん 今回はそうなんですよ。ウチの開催の時期と重なったこともあって、僕だけとりあえず現地のスタッフと合流して、出席してきたんですけど。

4月29日に現地でパーティがあって、4月30日と5月1日の2日間、映画祭を。

映画祭と言っても、僕らの映画祭は日本生まれなので。よく日本の人にも言われるので、ぜひこれは話したいのですが、「ショートショート」はアメリカで生まれた映画祭をパッケージで輸入しているわけではなくて。

こちらで僕らがデザインして、生みだしたものなんです。それを逆に日本からアメリカへ、あるいは世界に。コンセプトを含めて出していこうっていう思いがあって。それの一つの企画として数年前、これは僕らのサイトのヒストリーにも出てるんですけど、シンガポール行ったりとか、いろいろやってきて、ま、僕自身がショートフィルムがおもしろいと思ったきっかけが、ロサンゼルスで観たスクリーニングだったということもあって、やっぱり映画の本場じゃないですか。

 

はい。
別所さん 映像王国ハリウッドなんで、そのお膝元で、僕らが考えたコンセプトのショートフィルムの映画祭をやりたいっていう夢があって、2年前からいろいろ企画をして、ロサンゼルスに持っていたんですよ。

現地の国際交流基金(ジャパンファンデーション)と、ロサンゼルスの総領事とか、そういう方々にご協力していただいて。あとは、現地の日本のコミュニティの人も協力してくれながら、実際にハリウッドでやって、ミラマックスとかソニーとか、ワーナーとか、そういうメジャーなスタジオの人たちもいっぱい来て、で、今年も開催が終わったんですけれども。

コンセプトとしては、すべてのプログラムを流すというのではなく、キックオフスクリーニングという言い方をしているんですけど、2日間、全体のオフィシャルプログラムの中の一部を持って行って、紹介するのと同時に、日本とかアジアのクリエイターの作品もそこで見せるということがコンセプトなんです。

今年も日本のクリエイターの作品を数本持って行って、クリエイターも一緒に行って、現地でQ&Aをやったりとか、現地の映像関係者に紹介したりとかしたんですね。

去年、「あずみ」を監督している北村龍平監督をロサンゼルスへお連れして、いろんな方に紹介したり。ちょうど「ジャムフィルムズ」という作品を作ったりしてたので、紹介したりしたんです。

 
今年はどなたを?
別所さん 今年は、「太陽企画」というコマーシャルの大手の制作会社があるんですけど、そこが作って僕たちに応募してきた作品を持って行って、監督とか制作者5人ぐらいと現地で合流して、紹介をしました。
感触はいかがでしたか?
別所さん 今年はやっぱりアカデミーショーで「千と千尋(の神隠し)」がオスカー取ったりとか、ショートフィルムでも「頭山(あたまやま)」っていう「マウントヘッド」という名前の日本のアニメーションがショートフィルムのカテゴリーに入ったんですよ。

で、その方の作品も流したりしたので、すごいやっぱり反響ありましたよね。

あー、観ました「あたまやま」。なるほどねえ。
世界における日本のショートフィルムは‥
別所さん 日本がアニメ大国だっていうことは知れ渡っているのだけど、現地の人が感じていることっていうのは、アニメという技術もすごいんだけど、アニメーションということよりも、何を評価しているかっていうと、作品構成力というか、ストーリー構築力なんですよ。

だから、日本の人が時々勘違いしちゃうのは、アニメーションがすごいからアニメ大国日本というような取り上げ方をよくメディアもするんだけど、実は本質的にヨーロッパや、あのベルリンがね、「千と千尋」にグランプリをあげたように、何を評価してるかっていうと、その向こう側にあるストーリーの構築力とか、それを構成して見せていく力っていうのは、すごい独特で。なんていうんだろう。次世代のストーリーテリングのポテンシャルを日本人っていうのは持っているのに、なんでそれをアニメーションという手法だけでしか表現しないんだっていうのが、クエスチョンなんですよ。

だから彼らは、ハリウッドでのリメイク権をとろうとしたり、もっとストーリーを構築する人がいっぱいいるんだから、そういう頭脳をひっぱりこもうとしたり、そういう手法を理解するディレクターをハリウッドに技術移転じゃないけど、ノウハウ、クリエイティブ移転させようという発想があるんですよ。

へえー、そうなんだあ。日本の文化について、今までの誤解や、ちょっとした偏見も、ほんとにいいものを送り込むことによって、「あーこんないいものを持っていたのか」と驚きとか新鮮な発見とか、だんだん増えていくといいなと思います。
別所さん 実際は、これは悲しいんですけど、世界中のショートフィルムのフェスティバルとか調べると、日本の作品、ほとんど出てないんですよ。当然作っている人も少ないというのと、5年前まであんまり日の当たる世界じゃなかったし(笑)。

あとは、日本はフィルムスクールっていうのが無いじゃないですか。例えば大学の機関に、東京芸術大学でもそういうところはないし、あるのは日本大学の芸術学部の映画学科ぐらいで。今早稲田(大学)の中でそれを作ろうとか、慶応(義塾大学)も動き出したりとか。ようやく大学院レベルの、要するに、メディカルスクールとかロースクールみたいな発想で、映像ビジュアルをきっちりと情報発信のツールとして理解して、ストーリー構築とか、映画映像ということにこだわる、卑俗なものとしないで、やっていこうということを、今頃ようやくなんですけど、気づいたんですね。

それが無いのも一つの原因なんだけど、作る人がいない。作る人は、CMディレクターとかプランナーとか、漫画家とか、ゲーム業界の人とか、そういう人たちが作るとか、それを抜かすと大学レベルの映画研究会の16mmで撮りました、というものになっちゃうんですよ。

そうですかー。まだまだ成熟というには遠いみたいですねえ。

つづきます。
marsha,
Special thanks to Tetsuya Bessho, Hiroshi Saito (Pacific Voice)
and Jun Kusumoto (Sunny Side Up)
Photos by Harumi Matsunaga

2003-06-11-TUE

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